Amnesia

2009
地域 / シーン:Los Angeles
Bluが振り返る、Warnerへの構想とMySpaceでの発表のずれ。
同じ題名で、別のアルバムが生まれた。
傷ついたとき、Bluが頼ったのは自分のレコードだった。2012年8月17日掲載のQuality Controlの取材で『Her Favorite Colo(u)r』の背景を尋ねられた彼は、自分自身のつらい時期に音楽へ向かったこと、レコードが慰めになったことを話している。作品を自分にとってのブルースと捉えた、その回想から「Amnesia」へ入ってみたい。過去の音楽を選ぶことと、いまの感情を言葉にすることが、同じ人の手の中にある。
「Amnesia」は『Her Favorite Colo(u)r』の2曲目で、プロデュースもBlu本人。公式Bandcampは、アルバムの制作をBluとし、「Untitled (Loved U) 2」だけをExileの担当としている。Bluの名前からExileとの共作を思い浮かべても、この曲のビートまで彼に預けてはいけない。ラップの声を追うだけでなく、その声を置くためにBluが選んだ音へも視線を移すと、一人で担った仕事の広さが見えてくる。
素材を辿る手がかりは、Billie Holidayの「Am I Blue?」だ。2011年4月19日掲載のExclaim!で、Kevin Jonesはこの録音が「Amnesia」の土台になっていると指摘する。ここで古いレコードを、懐かしい雰囲気を添えるためのものとだけ考えるのは惜しい。レコードに支えられたというBluの話と並べると、以前からそこにあった声を、自分の感情を話すために迎え入れた制作として捉えられる。これは素材の選ばれ方への読み方であり、本人が個別のサンプル選定理由を語ったという意味ではない。
アルバムの入口には「Love」があり、その次に「Amnesia」、続いて「Since」が置かれる。Nature Soundsの紹介が説明するのは、恋愛を扱う映画の会話と、失意を語るラップが同居する作品だ。好きな一曲からアルバムへ戻るなら、まずこの三曲を順番に辿ってみるのもよさそうだ。Blu自身の言葉に入る前後で、ほかの人の声や既存の音楽がどんな役を引き受けるのか。曲目をただの住所録で終わらせない聴き方になる。
本人が語った傷心の経験は、アルバム全体についての回想であり、「Amnesia」が生まれた一日の記録ではない。それでも、この曲を作り手の側から聴くための大事な距離を教えてくれる。私生活の答え合わせを急ぐより、手元のレコードと言葉を使って一つの作品を作る、その行為に目を向けたい。曲名は記憶が遠のくことを示しているのに、掘り進める入口には、誰かの声を残したレコードがある。
2026年のPaul Thompsonの取材でBluは、Warnerとの契約交渉時、『Her Favorite Colo(u)r』をTa’Raach、Shafiq Husayn、Waajeedによる三部構成の作品にする予定だったと明かす。だが失恋後の二週間で別の曲群を作り、その題名を使ってMySpaceに公開したため、レーベル側は予定の作品が出たのかと驚いたという。「Amnesia」一曲の録音日ではなく、アルバムの成り立ちについての本人の回想だ。自分で音を組み立てた作品が、当初の事業計画とは別の必要から生まれたことを伝えている。
深掘り記事あり · サンプル資料 1 件
2009年の配信と、2011年の販売版
USCの学生ラジオKXSCは、2009年2月17日の記事で『Her Favorite Colo(u)r』がその週に届いた作品だと紹介している。2011年のPitchforkも、かつて無料で配信された2009年のミックステープが販売版になったと説明する。したがって初出年は2009年として読むのが適切だ。一方、掲載する正規YouTube音源は2011年4月19日のアルバム版として登録されている。Nature Soundsは初期MP3版の後にミックスとマスタリングが行われたことを説明しており、いま聴ける販売版をそのまま2009年の未加工マスターと呼ぶことはできない。曲の誕生と、手元の版の来歴を分けておきたい。
参考資料:KXSC Radio — My Favorite Colo(u)r is Blu / 2009-02-17 / Pitchfork — Nate Patrin / Her Favorite Colo(u)r / 2011-05-19 / Nature Sounds — Her Favorite Colo(u)r (CD) / Blu - Topic — Amnesia / BWSCD Inc提供
Original、Remind、インストを混ぜない
2011年2月14日の『Amnesia EP』には、約2分58秒の「Amnesia (Original)」とそのインストに加え、約1分27秒の「Amnesia (Remind)」、約1分28秒の「Amnesia (RewindInstrumental)」が別々に登録されている。タイトルが似ていても、同じ音源の別リンクとして扱わない方がいい。今回の掲載音源は『Her Favorite Colo(u)r』名義の約2分58秒の正規配信で、EPを辿る場合はOriginal表記の音源を入口にする。配信情報のnotExplicitという区分だけで、クリーン版だと決めることもできない。曲名の括弧や一分以上の長さの差は、見逃すには少し大きい。
参考資料:Apple Music — Amnesia EPの公式曲目・版名・長さ / Blu - Topic — Amnesia (Original) / Virgin Music Group提供 / Blu - Topic — Amnesia / BWSCD Inc提供
制作背景
ラップと制作を担うBlu
公式Bandcampと正規アルバム配信は、Amnesiaの制作をBlu本人と記載。Exile制作とする根拠はありません。
初出年と掲載版
作品は2009年に配信。掲載音源は2011年4月19日のHer Favorite Colo(u)r名義で配信される約2分58秒のアルバム版です。
配信情報と実再生の確認範囲
2026年10月21日05:24 UTCに確認した配信メタデータでは、日本が配信対象で埋め込み可能とされています。現在の日本国内からの実再生・埋め込み実再生は未確認です。2009年の初期配信マスターとの音声・波形比較も行っていません。
2011年版の日付表記
掲載音源とApple Musicのアルバム情報は2011年4月19日、現在の公式Bandcampは同年2月14日を記載しています。配信先による日付表記の違いを残し、原曲の初出年である2009年とは分けています。
サンプル元
Billie Holiday — Am I Blue?
Exclaim!の2011年レビューがAmnesiaの土台として挙げる録音。具体的な録音年・原盤・切り出し位置は未照合。
本人の回想と公式制作クレジット、2009年の初出と2011年の販売版を出典付きで紹介。実再生・埋め込み実再生と初期マスターとの音声比較は未確認です。
Billie Holiday「Am I Blue?」との関係を同時代レビューで確認。サンプルの正確な録音版・原盤年・公式再生先は未照合のため音源リンクは設けていません。全素材の網羅や本人によるサンプル選定理由の確認を意味しません。
出典
Blu / Nature Sounds Bandcamp — Her Favorite Colo(u)r
Nature Sounds — Her Favorite Colo(u)r (CD)
Quality Control — Blu interview / Doc Jota / 2012-08-17
Exclaim! — Kevin Jones / Her Favorite Colo(u)r / 2011-04-19
KXSC Radio — My Favorite Colo(u)r is Blu / 2009-02-17
Pitchfork — Nate Patrin / Her Favorite Colo(u)r / 2011-05-19
Blu - Topic — Amnesia / BWSCD Inc提供
Apple Music — Amnesia EPの公式曲目・版名・長さ
Blu - Topic — Amnesia (Original) / Virgin Music Group提供
Blu-Official — Amnesia (Original)
Apple Music — Her Favorite Colo(u)r