PRODUCTION STORIES
Detroitの輪の中から、次のグルーヴへ。
Conant Gardensから広がったラップとビートの共同作業。初期の3人、変わる編成、変わらないレコードへの好奇心をたどる。
Slum Villageを、J Dillaの参加したグループという一行だけで閉じてしまうのは惜しい。誰がビートを作り、誰が声を重ね、どんな場所でその曲が育ったのか。ここではその関係を、本人の証言とレーベル資料から読み直す。
DETROIT / CONANT GARDENS
活動の根は米国ミシガン州Detroit、Conant Gardens。Ne’Astra Musicの2013年の資料は、初期のメンバーをBaatin、T3、J Dillaと記し、同じ地域で育った3人がDetroitのアンダーグラウンドで活動を広げたことを伝えている。これは出生地だけでなく、音楽活動の地域としてのDetroitだ。
出典:Ne’Astra Music / Traffic Entertainment — Evolution(2013年・公式配給資料)
レコードが街に届くまで
T3は2024年の取材で、St. Andrew’sとHip Hop Shopを当時の集まる場所として挙げている。自分たちで作ったカセットをDJのHouse Shoesへ渡し、毎週プレイされることで曲が知られていったという。作品が街に届く道筋には、スタジオだけでなくDJと現場があった。
2000 / FANTASTIC VOL. 2
2000年作『Fantastic Vol. 2』は、このページから聴き進める大きな入口。日本盤のレーベル資料では、Conant Gardens、Fall in Love、Get Dis Money、Playersの収録を確認できる。日本盤発売日は2000年8月2日で、各曲の最初の発表時点と同一とは限らない。
なお、本サイトのFantasticは2005年作『Slum Village』に収録された曲。『Fantastic Vol. 2』の「Untitled / Fantastic」と、タイトルの似かよいだけでひとまとめにしない。
出典:Victor — Fantastic Vol.2 日本盤(2000年) / Apple Music — Slum Village(2005年・公式配信カタログ)
J-88という別名義、客演という別の接点
J-88はSlum Villageの別名義。『Best Kept Secret』に収録されたGet It Together (Madlib Remix)も、このグループをたどる作品として含める。別名義の同定にはQobuz掲載のTiVo解説を参照した。
一方、CommonのThelonius、DJ Jazzy JeffのAre U Ready?、DweleのA.N.G.E.L.は、主名義を置き換えず参加作品として並べる。下の切り替えで「本人・グループ名義」と「制作・参加作品」を分けて聴ける。
編成を変えて続くグループ
歴代の編成と、取材時点の編成は分けておきたい。2013年の『Evolution』のレーベル資料ではT3、Young RJ、Illa Jが記されている。2024年のThe FADERのインタビューはT3とYoung RJの2人を取材している。掲載写真だけから現在のメンバー構成や撮影時期を判断してはいない。
同取材でT3は、2人でレコードを聴き、ループを選び、Young RJが切り分けていく作業を説明する。『F.U.N.』(2024年)ではファンクやディスコへ向かった。昔の音を固定して守るだけでなく、レコードを探す方法を次の作品へ持ち込んでいる。
出典:Ne’Astra Music / Traffic Entertainment — Evolution(2013年・公式配給資料) / The FADER — T3・Young RJインタビュー(2024年5月15日) / Slum Village公式Bandcamp — F.U.N(2024年)
このページの聴き方
まず「Conant Gardens」から、同じアルバムの「Players」「Fall in Love」へ。次に2004年の「Reunion」、2005年の「Ez Up」や「Can I Be Me」、2010年の「Earl Flinn」へ進む。ここでの選曲順は編集上の提案であり、DJでの使用頻度の順位ではない。
声とビートを別々に採点するのではなく、どこで譲り合い、どこで前へ出るかに耳を置きたい。グループの名前はひとつでも、そこに残る時間と人の組み合わせはひとつではない。
沿革は出典の時点を明記し、歴代メンバーと現在の編成を混同しません。「このページの聴き方」はDJ Naoyamanによる編集上の視点です。個別曲の制作クレジット・発表年はリンク先の資料に基づきます。

