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交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」第1楽章
「ダダダダーン」の4音の動機を徹底的に展開した、ハ短調の緊迫したソナタ形式の楽章です。ベートーヴェンの代名詞ともいえる冒頭で知られています。あの4音だけで、どこまで音楽が広がるのでしょうか。
作曲の経緯
第5交響曲のスケッチは1804年、交響曲第3番の完成後に始まりました。ただし作業は順調に進まず、ベートーヴェンは歌劇『フィデリオ』の初稿、ピアノ・ソナタ「熱情」、ラズモフスキー弦楽四重奏曲、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第4番、交響曲第4番、ハ長調ミサなど、別の作品の作曲のたびに筆を止めています。第5番と第6番は1807〜08年に並行して仕上げられました。この頃のベートーヴェンは30代半ばで、難聴が進み、ナポレオン戦争でウィーンがフランス軍に占領される(1805年)という混乱の時代でもありました。曲はウィーンのパスクヮラティ・ハウスの住まいで書かれたとされます。1808年12月22日の初演は4時間を超える長大な演奏会の一部で、リハーサルは一度しかなく、会場も非常に寒かったと伝わります。
出版・初演
初演:1808年12月22日、ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場です。ベートーヴェン自身の指揮で、全曲ベートーヴェンの新作という4時間超の演奏会の中で第6番などと共に初演されました。初版は1809年4月です。
題名・通称の由来
「運命」はドイツ語の Schicksalssinfonie に由来する通称で、ベートーヴェン自身の題ではありません。冒頭の動機について「運命はこのように扉をたたく」と語ったとする話は、秘書シンドラーの証言に基づくが、シンドラーの証言の信頼性には疑問が多く、実際に語ったかは不確かです。第二次世界大戦後には「勝利の交響曲」と呼ばれたこともあります。
構成分析
- 提示部 「短・短・短・長」の4音の動機(ダダダダーン)で始まり、この動機が第1主題となります。ホルンの呼びかけを挟んで第2主題が現れます。
- 展開部 動機がさまざまな楽器間で受け渡され、調を変えながら緊張を高めていきます。
- 再現部 冒頭動機が再現され、途中でオーボエの短い独奏が入ります。
- コーダ 動機がさらに展開されたのち、力強い和音で楽章を結びます。
音楽的特徴
ごく短い動機を徹底的に展開して楽章全体を組み立てている点が最大の特徴です。全曲では、終楽章でピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンが加わります(第9番や第6番など他の交響曲でも使用)。第3楽章から第4楽章へは切れ目なく続きます。
演奏のポイント
まず注目したいのは、冒頭の4音の間(休符の長さ)と、動機を刻むリズムの鋭さです。再現部のオーボエ独奏の寂しさと、そのあとの急展開の対比にも耳を向けたいです。テンポ設定と、提示部の繰り返しを行うかどうかも演奏者による違いが出るところです。
この音源について(収録エピソード)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団名義で配信されている、交響曲第5番「運命」の第1楽章です。配信アルバムは『エクセレント・クラシック カラヤン名曲集』で、リリース日は2020年4月15日です。アルバム名にはカラヤンの名がありますが、このトラックの指揮者と録音年・会場は確認できていません。2020年は録音年ではなく、この配信版のリリース年です。
動画ページの曲名とBerliner Philharmonikerのアーティスト表示を確認しました。配信アルバムとリリース日は配信カタログとも照合しています。指揮者・録音年・録音場所は未確認です。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- カルロス・クライバー/ウィーン・フィル(1974)
ドイツ・グラモフォン。ウィーン楽友協会ホールで録音されました。発売以来、同曲の代表的録音のひとつとして評価されてきました。 - フリードリヒ・カルク/オデオン管弦楽団(1910)
Wikipediaによれば、この曲の最初の録音です。 - ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィル(1962)
カラヤンの最初のDGベートーヴェン全集に含まれる録音です。(全集の録音期間は1961年12月〜1962年11月)
映画・ドラマ・アニメ
- ファンタジア2000(1999)
映画の最初のセグメントで、第5番の第1楽章に合わせた抽象的なアニメーション(蝶やコウモリのような形が光と闇の世界を描く)が展開されます。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
- ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
- ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番「熱情」
- ラズモフスキー弦楽四重奏曲
- ブラームス 交響曲第1番
同じ作曲者の曲
トリビア
- 第二次世界大戦中、BBCはヨーロッパ各地の抵抗組織に向けた放送の冒頭に、この4音の動機をドラムで鳴らしました。ローマ数字の「V」が5を表し、連合国の「V for Victory」運動とも重なったためです。
- 指揮者トスカニーニは1943年のムッソリーニ失脚後に第1楽章だけを演奏し、残りはドイツが敗れたら演奏すると語ったとされ、全楽章の演奏を終えたのは1945年5月でした。
- ヴァイオリニスト兼指揮者ザロモンは、ロンドン・フィルハーモニック協会のリハーサルで当初この曲を「くず」と呼んだが、のちに撤回し、偉大な作品の一つと認めたといいます。