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弦楽のためのアダージョ 作品11
弦楽四重奏曲の緩徐楽章を弦楽合奏に編曲した、静かに高まっていく名曲です。1938年にトスカニーニが初演し、追悼の場でも多く演奏されてきました。
作曲の経緯
バーバーは1936年、パートナーのメノッティとヨーロッパで夏を過ごした時期に弦楽四重奏曲 作品11を書き、その第2楽章を同年に弦楽合奏用に編曲しました。ウェルギリウスの『農耕詩』に触発されたとされます。1938年1月に編曲版の総譜をトスカニーニに送ったところ、何のコメントもなく返却されたため、作曲者は気を悪くしました。のちにトスカニーニはメノッティを通じて、すでに暗譜していたので返しただけだと伝えてきたといいます。初演は1938年11月5日、ニューヨークのロックフェラー・センターNBCスタジオ8Hで、トスカニーニ指揮NBC交響楽団がラジオ放送の形で行いました。初演直後の批評は割れたが、オリン・ダウンズは高く評価しました。
出版・初演
1938年11月5日、トスカニーニ指揮NBC交響楽団がNBCスタジオ8Hから放送初演しました(録音も残されています)。トスカニーニは1940年の南米ツアーや欧州でも取り上げました。1942年4月にはオーマンディ指揮フィラデルフィア管がカーネギー・ホールで演奏しました。出版社はG.シルマーです(オルガン編曲版1949年ほか)。
題名・通称の由来
曲名は速度標語の「アダージョ(ゆるやかに)」に由来し、作曲者名をつけて「バーバーのアダージョ」とも呼ばれます。1967年には同じ音楽に典礼文を付した合唱曲『アニュス・デイ』も作られました。
構成分析
- 冒頭 第1ヴァイオリンが静かな変ロ音で始まり、2拍遅れて低弦が入ります。段をのぼるような旋律が始まります。
- 上昇部 旋律が重なり合いながら、ルネサンス風のポリフォニーを思わせる響きで高まっていきます。
- クライマックス 4つの力強い和音と長いフェルマータの沈黙です。
- 回帰と終結 冒頭の主題が戻り、解決しない属和音で消えるように終わります。
音楽的特徴
アーチ形の構成と、規則的な拍子に5/2・6/2・3/2の小節を挟んで脈拍を微妙に揺らす手法が特徴です。和声は素朴な三和音が基調で、聖歌のような旋律を持ちます。演奏時間は多くの録音で8分前後です。
演奏のポイント
静かな始まりから息の長いクレッシェンドで頂点へ向かうバランスと、頂点後の大きな休止の保ち方が聴きどころです。録音により演奏時間にかなり幅があり(例:ニューヨーク・フィルのバーンスタイン盤は9分54秒)、テンポ選択が表情を大きく左右します。
この音源について(収録エピソード)
この音源の収録経緯(セッション日や会場)は確認できませんでした。確認できた事実は次のとおりです。ニューヨーク・フィルとのバーンスタイン盤はSony Classicalから『Barber: Adagio for Strings & Copland』として1971年にリリースされ、本曲の演奏時間は9分54秒です。『グラモフォン』はバーンスタインのロサンゼルス・フィル盤(DG)について、テンポは非常に遅いが過度な思い入れは避けられ弦が洗練されていると評しています。また1981年のバーバー没後間もなく、バーンスタインはニューヨーク・フィルの4回連続の演奏会でこの曲を追悼として指揮しました。
音源の投稿元(Leonard Bernstein - Topic)はoEmbedで確認済みです。オーケストラ・録音盤は未確認です。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- トスカニーニ指揮NBC交響楽団(1938(放送初演))
2005年に米議会図書館の国家保存録音登録簿に選ばれました。 - オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団(年は未確認)
『グラモフォン』は、流れるようなテンポの演奏でフィラデルフィア管の壮麗さがよく出ていると評価しています(Sony Classical)。 - バーンスタイン指揮ロサンゼルス・フィルハーモニック(年は未確認)
『グラモフォン』は、非常に遅いテンポだが過度な思い入れは避けられ、弦が天使のように洗練されていると評価しています(DG)。 - スラットキン指揮セントルイス交響楽団(年は未確認)
『グラモフォン』が推奨盤として紹介しています(EMI/Warner Classics)。
映画・ドラマ・アニメ
- エレファント・マン(1980)
作品中で使用されています(具体的な場面は未確認です)。 - プラトーン(1986)
作品中で使用されています(具体的な場面は未確認です)。 - ローレンツォのオイル/命の詩(1992)
作品中で使用されています(具体的な場面は未確認です)。 - アメリ(2001)
軽妙・ユーモラスな使われ方として挙げられています(具体的な場面は未確認です)。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- 弦楽四重奏曲 Op.11(原曲)
- アニュス・デイ(バーバー自身による合唱編曲、1967)
- エルガー『エニグマ変奏曲』第9変奏「ニムロッド」(バーバーのアダージョの米国での位置づけと比較される)
- ティエストらによるダンス・リミックス
トリビア
- トスカニーニは最初の総譜を返却したが、あとで暗譜していたからだと伝えました。初演前日まで再び譜面を見なかったといいます。
- 1938年の初演録音は2005年に米議会図書館の国家保存録音登録簿へ登録されました。
- 2004年のBBCラジオ4『Today』番組の聴取者投票で「最も悲しいクラシック曲」に選ばれました。ケネディ大統領の葬儀後の放送などで流れ、「アメリカの準公式な追悼音楽」とも称されるが、バーバーは「いつもこの曲ばかり」とぼやいたといいます(1978年のインタビュー)。