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G線上のアリア
バッハの管弦楽組曲の緩徐楽章を、ウィルヘルミがG線だけで弾けるよう編曲した、静かに歌う名旋律です。原曲の歩む低音と、編曲版の低い独奏という、同じ作品から生まれた響きの違いにも惹かれます。
作曲の経緯
原曲はバッハの管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068の第2曲「エア」です。現存する演奏資料には1730年頃のものがありますが、原形をケーテン時代などにさかのぼらせる説もあり、作曲時期・作曲地は確定していません。組曲の他の楽章がトランペットやティンパニを含む中、この楽章だけが弦楽と通奏低音で演奏されます。1871年、ヴァイオリニストのアウグスト・ウィルヘルミが、ヴァイオリン独奏と弦楽(またはピアノ、オルガン)のために編曲しました。ハ長調に移調し、第1ヴァイオリンの旋律をさらに1オクターブ下げて、G線だけで弾けるようにしました。譜面に「auf der G-Saite(G線で)」と書き込んだことが通称の由来で、他の声部は弱音で控えめにされました。
出版・初演
ウィルヘルミ編曲版は1871年です(出版社・詳細は未確認)。IMSLPに掲載されています。
題名・通称の由来
ウィルヘルミが譜面に「G線で」と書いたことに由来します。のちに「原曲からG線だけで弾く曲だった」という誤った話も流れました。
構成分析
- 旋律 高音弦の絡み合う旋律が、ゆったりとした長い息で歌われます。
- 低音 原曲では低音が規則的に歩み、曲に推進力を与えます。
- ウィルヘルミ版 旋律をG線の低音域に移し、伴奏は弱音器や弱いピツィカートに抑えます。
音楽的特徴
原曲は、重なり合う高音の旋律線と、歩むように進む低音との対比が魅力です。ウィルヘルミ版は旋律を低音域の独奏に任せ、他を弱くしたため、原曲の対位法的な織り込みや低音の推進力は薄れ、よりロマン派的な甘く暗い響きになりました。ヨアヒムは「バッハ作品の恥知らずな改竄」と批判し、トーヴィーも原曲のニ長調で演奏すべきだとしました。それでも編曲の名は、さまざまな楽器の版で通称として定着しています。
演奏のポイント
長い旋律を途切れさせず、弓の流れを一定に保ちます。ウィルヘルミ版は低い音域で音量が出にくいので、伴奏は弱く抑えて独奏を支えます。ピアノ編曲では旋律の歌わせ方と低音の歩みを分けて弾きます。
この音源について(収録エピソード)
この録音の収録事情は出典で確認できませんでした。編曲そのものは、1871年にアウグスト・ウィルヘルミが管弦楽組曲第3番BWV1068のアリアを、ハ長調に移してヴァイオリンのG線だけで弾けるように編んだものです(Wikipedia)。
音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- フリッツ・クライスラー(1904)
最初期のウィルヘルミ版録音の一つです(英語版Wikipedia)。 - ミッシャ・エルマン(ピアノ:パーシー・B・カーン)(1911)
「Air for G string」の題での録音です。 - ヘンリー・ウッド指揮 ブリティッシュ交響楽団(1932)
G線のパートを多数のヴァイオリンが弾く管弦楽版です。 - ブロニスワフ・フーベルマン(ピアノ:ジークフリート・シュルツェ)(1930)
Columbia WAX5007です。
映画・ドラマ・アニメ
- セブン (Se7en)(1995)
ミルズとサマセット刑事が犯罪現場の写真を調べる場面です。 - 007 私を愛したスパイ(1977)
悪役ストロンバーグが部下をサメに与える場面です。 - 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997)
前半の終わり近くです。
CM
- Hamlet(英国の葉巻)TV広告(ジャズ編曲)
1966〜1991
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- バッハ 管弦楽組曲第3番 BWV1068
- 主よ人の望みの喜びよ(同じバッハの人気曲)
- Procol Harum「A Whiter Shade of Pale」
- Ekseption「Air」
同じ作曲者の曲
トリビア
- 1905年から約30年にわたり、ヘンリー・ウッドがロンドンのプロムスでウィルヘルミ版を取り上げ続けました。
- 1967年の「A Whiter Shade of Pale」は、作者ゲイリー・ブルッカーによれば、この曲の1〜2小節が出発点でした。
- ウィルヘルミ版の録音は1900年代初頭から残っており、1902年のレオポルト・ハルトマンなどが早い例です。