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カノン(パッヘルベルのカノン)
低音の同じ進行を繰り返し、3つの声が同じ旋律を追いかけて重なっていく、バロックの代表的なカノンです。追いかける声を一つずつ聴くと、同じ低音の上に広がる変化がいっそう面白く感じられます。
作曲の経緯
作曲の年も事情も記録がなく、1680年ごろから1706年までさまざまな説があります。シュルツェは、1694年に行われたJ.S.バッハの兄ヨハン・クリストフの結婚式のために書かれたと推測したが、パッヘルベル研究者のウェルターはこれを憶測と退けています。ビーバーの曲集(1696年刊)への応答とする説もあります。原曲は3本のヴァイオリンと通奏低音のための作品で、ジーグと対で伝わります。現存最古の写本は1838〜42年頃のもので、カノンだけが1919年にベックマンにより出版されました。広く知られるようになったのは、1968年のパイヤール室内管弦楽団による録音(パイヤール自身の補筆つき編曲)以降です。
出版・初演
カノン単独は1919年にG.ベックマンの論文で初めて出版されました。1929年にザイフェルトが編曲版(Organum叢書)を刊行しました。
題名・通称の由来
正式名は「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ」です。一般には「パッヘルベルのカノン」「Canon in D」と呼ばれます。
構成分析
- カノン 同じ旋律を2小節ずらして3つのヴァイオリンが追います。低音は8つの和音(D-A-Bm-F#m-G-D-G-A)を繰り返します。
- 変奏 低音の28回の反復の上で、4分音符、8分音符、16分音符と音価が細かくなり、付点やシンコペーションも現れます。
- ジーグ 12/8拍子、各10小節の2部分です。カノンと違い固定低音はなく、模倣的な書法で進みます。
音楽的特徴
ほぼ同じ低音進行を繰り返し、その上に3声が同じ旋律を時間差で重ねます。厳格な模倣であるカノンと、低音が固定された変奏曲(シャコンヌ的)の二つの形式が一曲に重なる点が特色です。和声進行はロマネスカ型とされ、のちのポップスにも多く転用されました。上声が少しずつ細かく動いて曲が盛り上がるので、同じ和音の繰り返しでも飽きずに聴けます。
演奏のポイント
低音の4分音符を一定に保ち、上声の音価が細かくなっても速さを変えないことが大切です。声部の入りは均等に、先に入った声部を邪魔せず歌い継ぎます。ピアノ編曲では各声部の受け渡しを聴き分けて弾きます。
この音源について(収録エピソード)
パイヤール室内管による1968年の録音は、ロマン的で遅めのテンポと、パイヤール自身が書いたオブリガート声部を持つ編曲版でした。同年6月にEratoからフランスでLP発売され、同年にMusical Heritage Societyからも頒布されました。1970年代に米国で人気が広がり、1977年にRCAが再発しました。1980年の映画『普通の人々』でも使われました。
音源の投稿元(The Musical Heritage Society=原盤頒布元のレーベル系チャンネル)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- パイヤール室内管弦楽団(指揮:ジャン=フランソワ・パイヤール)(1968)
ロマン的で遅めのテンポです。この曲が広く知られるきっかけとなった録音です(英語版Wikipedia)。 - ヘルマン・ディーナーと彼の音楽大学(1938)
最初の録音とされます。 - クリストファー・ホグウッド指揮 エンシェント室内管弦楽団(年未確認)
1982年にBillboard古典アルバム首位をパイヤール盤から奪った盤に収録されています(英語版Wikipedia)。
映画・ドラマ・アニメ
- 普通の人々 (Ordinary People)(1980)
サウンドトラックでパイヤール版が目立って使われました(場面は未確認)。 - Cosmos: A Personal Voyage(TVシリーズ)(1980)
サウンドトラックに採用されています(場面は未確認)。
CM
- Woolmark(Pure New Wool)英国TV広告
1975年頃から
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- パッヘルベル「Musikalische Ergötzung」
- ビーバー「Harmonia artificioso-ariosa」第3番
- ジョージ・ウィンストン「Variations on the Kanon」
- Aphrodite's Child「Rain and Tears」
- G線上のアリア(同じバロックの人気編曲曲)
トリビア
- 1981年のThe New Yorker誌に、館内放送でこの曲が流れ続ける囚人を描いた風刺漫画「Prisoner of Pachelbel」が載りました。
- 1968年、Aphrodite's Childの「Rain and Tears」とPop-Topsの「Oh Lord, Why Lord」が、いずれもこの曲を土台にしたヒットとなりました。
- 2012年の英国の葬儀調査(約3万件)で、クラシック部門の2位でした(1位はエルガー「ニムロッド」)。