商品売買 — 代金の記録と、商品の原価を分けるの講義・例題
商品売買 — 代金の記録と、商品の原価を分けるをオリジナル解説・例題・演習で学ぶ。日商簿記3級、2026年度範囲。
日商簿記3級 / 2026年度範囲(2027年3月31日まで) / オリジナル教材
三分法の三つの科目
三分法では、仕入れた商品を仕入、販売による収益を売上、繰り越した商品の原価を繰越商品という科目で扱います。販売時の仕訳で毎回商品の原価を減らす方法ではありません。販売価額と原価は別の数字で、商品有高帳では原価を追います。
期中の販売は借方 現金・売掛金など/貸方 売上、仕入れは借方 仕入/貸方 現金・買掛金などです。この章では消費税は考慮せず、引渡し・受取りが完了している通常の売買を扱います。決算で仕入勘定を売上原価へ整理する具体的な振替は後の決算章へ残し、ここでは原価の数量・金額のつながりを学びます。
仕入れに直接必要な運賃は商品の取得原価
仕入先から商品を運ぶために当社が負担した引取運賃など、仕入れに直接必要な費用は商品の取得原価へ含め、三分法では仕入へ加えます。一方、販売した商品を顧客へ届けるため当社が負担する運賃は、この章では発送費として商品の原価と区別します。
同じ運賃でも、誰の負担か・仕入れのためか販売のためかを先に読みます。先方負担分を立て替えた処理など別条件は、この章の問題には含めません。単一商品の運賃を個数で配分する場合は「取得原価の合計÷仕入数量」で1個の原価を求めます。
返品は元の取引と決済状況をたどる
品違いなどで仕入れた商品を返すと、仕入を元の記録と反対の貸方へ置きます。代金が未払いなら買掛金が減り、既に払って返金を受けたなら現金・預金が増えます。売上返品では売上を借方へ置き、未回収なら売掛金を減らし、返金したなら現金・預金を減らします。
返品時に今の価格で計算し直すのではなく、取り消す元の取引額を使います。帳簿の返品記録と現物の戻りが同じ商品・数量を指すか確認しましょう。この章の問題では値引き・割戻し等を混ぜず、返品の元取引と決済方法を明示します。
仕入帳・売上帳は現金取引も掛け取引も記録する
仕入帳は商品仕入れを、売上帳は商品販売を詳しく記録する補助簿です。現金決済も掛けも含みます。単なる買掛金の支払いや売掛金の回収は、新しい仕入や売上ではないので再び記入しません。備品の購入など、商品の仕入れでない取引も仕入帳へ含めません。
返品を元の総額から区別して集計すると、総仕入高−仕入返品高=純仕入高、総売上高−売上返品高=純売上高になります。返品の表示方式は帳簿の様式に従い、本教材では総額・返品額を正数で別欄に示します。総額を先に純額へ直したうえでもう一度返品を引く誤りに注意してください。
商品有高帳は数量と原価を追う
商品有高帳は商品ごとに、受入・払出・残高の数量、単価、金額を管理します。販売のために払い出す商品も原価で記録し、販売価額で在庫を減らす帳簿ではありません。売上帳は売価、商品有高帳は原価という役割の違いがあります。
数量では「期首数量+受入数量−払出数量=期末数量」。金額でも「期首原価+正味受入原価=正味払出原価+期末原価」が成立します。三分法で販売時に総勘定元帳の原価振替をしなくても、この補助簿では原価の動きを管理できます。
先入先出法では古い原価の層から払い出す
先入先出法(FIFO)は、先に受け入れた商品の原価から順に払出原価へ使う方法です。実物のどれを出したかをそのまま特定する方法ではなく、原価を割り当てるルールです。古い層の数量が足りなければ、次の層へ進みます。
例えば5個を1個100円、続いて4個を1個130円で受け入れ、6個払い出すなら、原価は5×100+1×130=630円。残りは3個×130=390円です。古い単価と新しい単価を平均しません。
移動平均法では仕入れの都度、残りと合わせ直す
移動平均法は、商品を仕入れる都度、その直前の残高金額と新しい取得金額を合算して、合計数量で割り、新しい平均単価を求める方法です。次の仕入れまでの払出しにはその単価を使います。通常の払出しだけでは平均単価は変わりません。
計算式は「新平均単価=(仕入直前の残高金額+今回取得原価)÷(仕入直前の残高数量+今回仕入数量)」。期間末に全仕入れをまとめて平均する別の方法と混同せず、日付順に計算します。本稿では端数処理の指示がなくても整数で求まる問題に限定します。
返品した商品は、元に使った原価を戻す
仕入返品は、その返品がどの仕入れから生じたかを指定された条件で判定し、元の取得原価を取り除きます。商品を販売した後の売上返品は、売価の取消しと商品の原価の戻しを分けます。戻った商品が再販売可能なら、指定された元の払出原価で商品有高帳へ戻します。
例えば売価400円の商品でも、その商品の元の払出原価が250円なら、売上を取り消す金額は400円、在庫へ戻す原価は250円です。返品時の最新仕入単価で勝手に在庫を増やしません。本稿のFIFO返品問題は元の層を特定し、その後の払出順に曖昧さが出ない条件です。
原価と粗利益をつなぎ、欠けた記録を検算する
正味売上高から売上原価を引いた差が売上総利益(粗利益)です。売上原価は「期首商品原価+純仕入原価−期末商品原価」で照合できます。発送費など他の費用まで引いた当期純利益とは別です。
商品有高帳の一部が欠けていても、数量と金額それぞれの保存関係から復元できる場合があります。まず数量を求め、次に金額、最後に単価を求めます。残高の金額だけで判断せず、数量×単価にも一致するか確認してください。
例題
仕入代金と引取運賃を一つの取得原価にする
商品20個を1個700円で掛仕入れし、引取運賃600円を当社負担で現金払いした。消費税なし。
解き方と答え
- 商品代金は20×700=14,000。引取運賃600を加えて取得原価は14,600。
- 借方 仕入14,600/貸方 買掛金14,000・現金600。
- 商品有高帳へ記す1個の原価は14,600÷20=730。
仕入14,600円、1個の取得原価730円。
販売の運賃は取得原価へ加えない
商品18,000円を掛販売し、当社負担の発送費500円を現金で払った。販売と発送支出をまとめて示す。
解き方と答え
- 借方 売掛金18,000/貸方 売上18,000で販売を記録する。
- 当社負担の発送費は借方 発送費500/貸方 現金500。仕入の金額は変えない。
まとめた借方は売掛金18,000・発送費500、貸方は売上18,000・現金500。
返品の反対科目を代金の状態から決める
掛仕入れした商品2,400円分を支払い前に返品した。別の取引では、現金販売済みの商品3,600円分が返品され、その場で同額を現金返金した。
解き方と答え
- 仕入返品は借方 買掛金2,400/貸方 仕入2,400。未払の義務を減らす。
- 売上返品は借方 売上3,600/貸方 現金3,600。既に回収済みなので売掛金を減らす場面ではない。
元の売買を逆方向にし、未払なら買掛金取消し、現金返金なら現金減少。
帳簿は総額と返品を分けて集計
商品仕入れは現金10,000円・掛け20,000円、仕入返品2,000円。商品販売は現金18,000円・掛け25,000円、売上返品3,000円。別に買掛金5,000円を払った。
解き方と答え
- 仕入帳の総仕入は30,000、返品2,000、純仕入28,000。買掛金支払い5,000は新しい仕入ではない。
- 売上帳の総売上は43,000、返品3,000、純売上40,000。
純仕入28,000円、純売上40,000円。
同じ数量をFIFOで追う
期首5個×100円、仕入4個×130円、その後6個を1個200円で販売した。FIFO。消費税・運賃なし。
解き方と答え
- 商品有高帳の払出原価は古い5個×100+新しい1個×130=630。
- 在庫は3個×130=390。売上帳では売価6×200=1,200を記録する。
- 期首500+仕入520=払出630+残高390。
売上1,200円に対し払出原価630円、残り3個・390円。
仕入時に移動平均を更新する
期首6個×100円、仕入4個×150円、その後3個を販売。さらに5個×132円を仕入れて2個販売した。移動平均法。
解き方と答え
- 最初の仕入後は(600+600)÷10=120円。3個払出は360円、残り7個・840円。
- 追加仕入後は(840+660)÷12=125円。2個払出は250円、残り10個・1,250円。
- 払出合計610+期末1,250=期首600+仕入600+660=1,860。
平均単価は120円から125円へ更新。払出合計610円、期末10個・1,250円。
返品の数量と原価を別々に戻す
ケースA:期首3個×100円、仕入5個×140円、仕入分から1個を返品した後、FIFOで4個販売。ケースB:期首4個×100円、仕入6個×150円、FIFOで6個販売後、150円で払い出した1個が再販売可能な状態で戻った。売価は1個220円。両ケースは独立。
解き方と答え
- Aの仕入返品は元の140円を取り除く。払出は3×100+1×140=440、残り3個×140=420。
- Bは最初の払出が4×100+2×150=700、残り4個×150=600。返品で原価150を戻し、残り5個・750となる。
- Bの売上返品は売価220、原価の戻りは150で同じ数字ではない。
A期末420円。B期末750円、正味払出原価550円。
平均単価から欠けた仕入れを復元
移動平均法の商品有高帳で、仕入直前は4個・800円。仕入れ直後は10個・平均単価230円だった。この間に他の取引はない。
解き方と答え
- 仕入数量は10−4=6個。
- 仕入直後の金額は10×230=2,300。今回取得原価は2,300−800=1,500。
- 仕入単価は1,500÷6=250。
欠けた受入は6個・1,500円・単価250円。
引取運賃を配分して粗利益を計算
期首2個×300円。8個を1個400円で仕入れ、当社負担引取運賃400円を支払った。FIFOで5個を1個700円で販売した。返品・他の費用・消費税なし。
解き方と答え
- 仕入の取得原価は8×400+400=3,600、1個450円。
- 払出原価は期首2×300+今回3×450=1,950。期末は5×450=2,250。
- 純売上3,500−売上原価1,950=粗利益1,550。
期末2,250円、売上原価1,950円、粗利益1,550円。600+3,600=1,950+2,250。
間違えやすいところ
- 売価と原価を混ぜない。
- 当社負担の引取運賃と販売時の発送費を区別する。
- 移動平均を販売のたびに変えたり、月末に一括平均したりしない。
- FIFOで売った古い原価層を在庫に残さない。返品は元の原価で復元する。
- 粗利益を現金増加額や当期純利益と同じ意味にしない。
採点と記録にはJavaScriptを使います。配点はこの教材独自のものです。
