貸倒引当金 — 将来の見積りと、実際の貸倒れを分けるの講義・例題
貸倒引当金 — 将来の見積りと、実際の貸倒れを分けるをオリジナル解説・例題・演習で学ぶ。日商簿記3級、2026年度範囲。
日商簿記3級 / 2026年度範囲(2027年3月31日まで) / オリジナル教材
まだ回収不能でない債権にも見積りが必要
売掛金などの債権には、将来回収できない部分が生じる可能性があります。貸倒引当金は、その見積額を資産の評価から差し引くための勘定です。支払い義務を表す負債ではなく、現金を別口座に積み立てる処理でもありません。
ここでは実績法として、問題で与えられた貸倒実績率を指定された期末債権残高へ掛け、必要な貸倒引当金残高を見積もります。遅れているというだけで特定の顧客の債権を消すのではなく、見積りと実際に回収不能が確定した処理を分けます。
必要残高と今回の繰入額は違う
必要な期末引当金=指定された期末債権の合計×指定実績率です。差額補充法では、この必要残高と決算整理前の引当金残高を比較し、足りない額だけを追加します。必要額が8,000円でも既に3,000円残っていれば、今回の繰入額は5,000円です。
不足を補充する仕訳は借方 貸倒引当金繰入/貸方 貸倒引当金。貸倒引当金繰入は当期の費用、貸倒引当金は期末に残す評価勘定です。見積りを設定するだけでは売掛金・受取手形を直接減らしません。
決算整理前の残高は、当期中に実際の貸倒れへ使った後の残高を読みます。期首残高をそのまま比較するのではなく、途中の取崩しがあれば先に差し引きます。
過剰なら戻し、同額なら仕訳しない
必要額より決算整理前の貸方残高が多い場合は、超過分を借方 貸倒引当金/貸方 貸倒引当金戻入で減らします。本教材ではこの戻入科目を明示して使います。必要額4,000円、既存残高6,500円なら戻すのは2,500円です。
必要残高と既存残高が同じなら調整仕訳は不要です。引当金がゼロになるのではなく、既に必要な額だけある状態です。金額0の架空の仕訳を作らず、仕訳不要という判断と、残る引当金残高を区別しましょう。
前期以前の債権が実際に貸し倒れたとき
前期以前に発生した債権について回収不能が確定したら、利用できる貸倒引当金の残高を先に取り崩します。例えば引当金12,000円があり、前期売掛金7,000円が貸し倒れたなら、借方 貸倒引当金7,000/貸方 売掛金7,000です。引当金は5,000円残り、この処理で新たな貸倒損失は生じません。
前期債権の貸倒額が18,000円で、利用できる引当金が12,000円だけなら、借方 貸倒引当金12,000・貸倒損失6,000/貸方 売掛金18,000とします。引当金を不足分までマイナスにするのでなく、超過分を当期の損失にします。
当期に発生した債権の貸倒れは当期の損失
本稿の基本問題では、期首の貸倒引当金は前期末の債権について設定されたものです。当期に新しく発生した売掛金が当期中に貸し倒れた場合は、その金額を借方 貸倒損失/貸方 売掛金で処理します。前期末に見積もった引当金が残っているだけを理由に、当期発生分へ使うわけではありません。
貸倒れた日だけでなく、債権がいつ発生したかを読みます。「当期に貸し倒れた」というだけでは前期債権か当期債権かは決まらないため、各問題では発生期を明示します。過年度に既に償却した債権が後日回収できた場合は、この章で扱わず収益・費用の章へ残します。
貸倒処理後の債権と、評価後の金額を照合する
実際の貸倒れでは売掛金・受取手形そのものを減らします。その後に残っている対象債権へ実績率を掛け、必要な引当金を求めます。問題の期末残高が「貸倒処理後」と指定されていれば、そこから貸倒額を再び引いてはいけません。
貸借対照表上の正味債権額は、債権の総額から期末の貸倒引当金を引いた額です。引当金を控除して表示しても、各顧客へ請求する帳簿上の債権総額を見積額だけ消したという意味ではありません。当期費用は当期の貸倒損失と当期の繰入額などを区別して集計します。
例題
必要残高を既存残高と比べる
期末の対象売掛金180,000円、受取手形120,000円。実績率2%。決算整理前の貸倒引当金は貸方4,500円。別の比較ケースとして、既存残高が6,800円の場合と6,000円の場合も考える。全て当期中の貸倒処理後の数字。
解き方と答え
- 対象合計300,000×2%=必要残高6,000。既存4,500なら繰入1,500。借方 貸倒引当金繰入1,500/貸方 貸倒引当金1,500。
- 既存6,800なら800過剰。借方 貸倒引当金800/貸方 貸倒引当金戻入800。
- 既存6,000なら必要額と同じなので仕訳不要。いずれも期末引当金は6,000。
必要残高6,000円は共通だが、調整額は繰入1,500円、戻入800円、調整0円と異なる。
前期債権の貸倒れと残高限度
独立の2ケース。どちらも前期末に設定した貸倒引当金の利用可能残高は9,000円。Aは前期売掛金6,000円、Bは前期売掛金13,000円の回収不能が確定した。
解き方と答え
- Aは借方 貸倒引当金6,000/貸方 売掛金6,000。引当金は3,000残る。
- Bは借方 貸倒引当金9,000・貸倒損失4,000/貸方 売掛金13,000。引当金を使い切り、足りない4,000だけ損失。
Aの新たな貸倒損失0円、Bの貸倒損失4,000円。
当期に発生した債権は期首引当金と分ける
前期末に設定した貸倒引当金8,000円が残っている。当期の販売で生じた売掛金2,500円について、当期中に回収不能が確定した。
解き方と答え
- 債権の発生期は当期なので、借方 貸倒損失2,500/貸方 売掛金2,500。
- 期首の引当金8,000はこの貸倒れでは取り崩さず、残る。
貸倒損失2,500円、貸倒引当金は8,000円のまま。
貸倒れ、差額補充、正味債権を順に計算する
期首引当金7,000円。当期中に前期債権3,000円を引当金で、当期発生債権1,000円を貸倒損失で処理した。両方処理済みの期末対象債権は250,000円、実績率2%。他の変動なし。
解き方と答え
- 決算整理前の引当金は7,000−3,000=4,000。当期発生債権の貸倒れ1,000は引当金を減らさない。
- 必要残高250,000×2%=5,000、繰入は5,000−4,000=1,000。
- 期末引当金5,000、正味債権250,000−5,000=245,000。当期関連費用は貸倒損失1,000+繰入1,000=2,000。
7,000−3,000+1,000=期末引当金5,000。正味債権245,000円。
間違えやすいところ
- 必要な引当金残高と、今回記録する繰入・戻入額を同一視しない。
- 当期に貸し倒れた日と、債権が発生した期を混同しない。
- 処理後残高から貸倒額を二重に引かない。
採点と記録にはJavaScriptを使います。配点はこの教材独自のものです。
