IL MASTRO

経費 — 当月に使った額を、製品へつなぐの講義・例題

経費 — 当月に使った額を、製品へつなぐをオリジナル解説・例題・演習で学ぶ。日商簿記2級・工業簿記、2026年度範囲。

日商簿記2級・工業簿記 / 2026年度範囲(2027年3月31日まで) / オリジナル教材

講義一覧

経費は、材料費・労務費以外の製造原価要素

工業簿記の形態別分類では、材料の消費が材料費、労働の消費が労務費、それ以外の原価要素が経費です。この章では正常な製造活動の経費に絞ります。日常語の「会社の経費」や税務上の必要経費の判断とは分けてください。

工場の保険料・修繕料・電力料や、特定注文の加工だけを外部へ依頼した外注加工賃が例です。材料の取得原価に含めた引取運賃、通常の材料消費額、従業員の賃金を、同じ金額のままもう一度経費へ足しません。販売や本社管理だけの費用も製造経費とは別です。

計算の出発点が違っても、求めるのは当月分

支払経費は旅費精算書などの支払額から出発し、未払・前払があれば当月対応額へ調整します。測定経費は電力などの実際使用量を測り、月割経費は複数月分の保険料などを対象期間に分けます。

発生経費という分類名は、支払を伴わない正常減耗などの発生額を把握する場面で使います。ただし、この名前の経費だけが発生額を扱うのではありません。どの方法でも、当月の製造に対応する額を計算する点は共通です。

証ひょうから、期間・数量・対象製品を確認する

領収書と支払記録は何をいくら支払ったかを示します。契約書や請求明細で対象期間を、検針記録で月内使用量を、外注加工の検収記録で完了した数量と対象注文を確認します。発行日と使用期間は同じとは限りません。

集計表には費目、当月対応額、直接集計する注文または共通分の区別を残します。同じ請求書の再送、支払と発生、材料帳から引き継いだ額などを二重に加えないため、元資料と処理済みの範囲を照合します。

未払と前払は、支払月と消費月のずれ

同じ経費群について他の増減がなければ、当月発生額=当月支払額-月初未払額+月末未払額+月初前払額-月末前払額です。前月以前の未払精算は今月支払っても今月の費用ではなく、当月に受けたサービスの未払分は当月の費用です。

前払額のうち当月に対応する分は今月の費用となり、今月支払っても将来月に対応する分は前払として残します。前払・未払の残高が同じ費目群に対応し、資産購入や返金などが混じらない条件で式を使います。各設問の範囲を超えて現金の動き全体へ適用しません。

測定経費は、使用した量と実際の条件から

電力料などは、原価計算期間の開始・終了時の測定値の差から当月使用量を確かめ、設問で与えた実際の契約単価を掛けます。同じ月に対応する基本料金を別に与えた場合は、それも一度だけ加えます。

請求書の検針期間と工場の原価計算期間が異なれば、支払額だけでは当月分を求められません。本章は期間が一致し、メーター交換等のない単純な実際料金を扱います。予定単価・複雑な料金制度・税金は扱いません。

月割経費は、対象期間と経過月を追う

複数月にわたる保険を各月均等とする条件なら、保険料総額÷対象月数で1か月分を求めます。支払時に前払保険料とした場合、経過月の分だけ取り崩し、未経過分を残します。暦年の12か月で割るとは限らず、契約の対象期間を読みます。

減価償却費も月割り計算の例ですが、本章では償却方法、耐用年数、法定率や税法上の扱いを学習範囲としません。年額が与えられても、その額を決める法的判断まで検証したことにはなりません。

支払がなくても、正常な発生額がある

正常な材料保管減耗が数量と実際原価から確定していれば、その発生額を計算できます。本章では正常な間接経費として処理することを設問で指定し、通常の材料消費額にはその減耗を含めていない前提を置きます。新たな現金支払が0でも原価は0とは限りません。

帳簿と実地の差を見ただけでは、正常減耗・異常損失・記録誤りのどれかは分かりません。原因調査や正常/異常の判断、引当金、仕損品の複雑な処理は扱わず、正常減耗と確定済みの資料だけで計算します。

直接と間接を分け、記帳方法に合わせて検算する

特定注文に直接把握する外注加工賃などは直接経費として仕掛品へ、製品別に直接把握しない共用設備の経費などは製造間接費へ集計します。間接経費も製造原価の一部です。ここでは集計までとし、製造間接費の製品への配賦・予定配賦・差異分析は行いません。

費目を経費勘定に集めてから振り替える設問では、借方 仕掛品・製造間接費/貸方 経費とします。直接製造間接費へ記帳する設問では、発生時の相手科目を未払費用や前払保険料などの条件から読みます。どちらの方法かを設問に明示し、同じ発生を両方法で二度計上しません。

直接経費+間接経費=製造に関する経費合計を確かめます。さらに、支払・未払・前払や支払を伴わない発生額からも当月額へつながるかを確認します。材料費・労務費の合計を、経費合計と混同しないことが最後の検算です。

例題

費目と追跡可能性を分ける

注文Uだけの外注加工賃12,500円、工場共用設備の修繕料7,800円が当月発生した。外注加工賃には当社の材料原価を含まない。これと別に材料取得原価に含めて記帳済みの引取運賃1,800円がある。いずれも正常な取引で、税金は考慮しない。

解き方と答え
  1. 外注加工賃12,500は特定注文へ直接把握する直接経費。修繕料7,800は間接経費。
  2. 経費合計は12,500+7,800=20,300。材料原価に含め済みの運賃1,800をもう一度加えない。

直接経費12,500円、間接経費7,800円、経費合計20,300円。

未払・前払を一つずつ調整する

同一の工場点検料群について、当月支払88,000円、月初未払9,000円、月末未払14,000円、月初前払6,000円、月末前払10,000円。他の増減はなく、すべて正しく期間対応した残高である。税金は考慮しない。

解き方と答え
  1. 支払から前月分9,000を除き、当月未払14,000を加える。88,000-9,000+14,000=93,000。
  2. 月初前払6,000を加え、月末前払10,000を除く。93,000+6,000-10,000=89,000。
  3. 88,000+6,000+14,000=89,000+9,000+10,000=108,000。

当月発生額89,000円。支払額88,000円とは1,000円異なる。

測定と月割りを同じ月へそろえる

工場電力の当月メーターは4,600kWhから5,500kWhへ進んだ。実際料金は1kWh18円と月額基本料2,800円。別に工場保険72,000円が当月からの6か月を均等に保障する。両方とも工場共通分で、他の料金・税金はない。

解き方と答え
  1. 実際使用量5,500-4,600=900kWh。電力料900×18+2,800=19,000。
  2. 当月保険料72,000÷6=12,000。未経過5か月分は60,000。
  3. 当月の二つの間接経費は19,000+12,000=31,000。支払時期が同じでも計算の出発点は異なる。

測定による電力料19,000円、月割りによる保険料12,000円、当月計31,000円。

正常減耗を一度だけ認識して振り替える

通常の材料消費を記録後、材料帳50個に対して実地48個。差は当月の正常保管減耗と確定し、実際単価500円、未記帳で通常材料費にも含めていない。正常な間接経費として処理する。ほかに当月直接経費20,000円、工場共通の当月賃借料18,000円がある。全額を経費勘定へ正しく集計してから月末振替する方式で、税金は考慮しない。

解き方と答え
  1. 正常減耗2個×500=1,000を一度だけ間接経費に含める。材料の減少を伴うが、新たな現金支払はない。
  2. 間接経費1,000+18,000=19,000。直接経費20,000と合わせた経費勘定集計額は39,000。
  3. 集計済みの経費の振替は、借方 仕掛品20,000・製造間接費19,000/貸方 経費39,000。ここで材料や預金を再度減らさない。

直接経費20,000円、間接経費19,000円。集計済み経費39,000円を振り替える。

間違えやすいところ

この講義の問題を解く →

採点と記録にはJavaScriptを使います。配点はこの教材独自のものです。