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労務費 — 支払った額と働いた分、直接作業と共通作業の講義・例題

労務費 — 支払った額と働いた分、直接作業と共通作業をオリジナル解説・例題・演習で学ぶ。日商簿記2級・工業簿記、2026年度範囲。

日商簿記2級・工業簿記 / 2026年度範囲(2027年3月31日まで) / オリジナル教材

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この章でつかむ二つの区別

材料の次は、人が働いた分を原価として集めます。労務費(ろうむひ)は、製品を作るために使った労働に対応する原価です。材料と同じように、払った日と、使った月と、製品への行き先を分けることが大切です。

この章は正常な工場作業の実際賃金だけを扱います。予定賃率や賃率差異、標準原価、異常な休業、賞与引当金、退職給付などはこの章では扱いません。この1章で労務費計算の全範囲を学び終えたとはしません。

直接工の賃金が、全部直接費とは限らない

注文Aを加工した時間が記録されていれば、その時間に対応する賃金を注文Aへ直接集計できます。一方、同じ人が工場全体の清掃をする時間は、この章の会社では共通作業として間接費へ集めます。

「誰が働いたか」だけでなく「何をした時間か」を見ます。直接工の直接作業分は直接労務費、直接工の間接作業分や間接工の賃金は間接労務費という区別が基本です。設問が特別な集計条件を示している場合は、その条件を確認します。営業担当者の給料は製造原価へ入れません。

出勤簿と作業日報は、知りたいことが違う

出勤簿は出退勤と休憩、作業日報はどの注文や共通作業へ時間を使ったか、賃金台帳は支払総額と控除・差引額を示します。銀行の振込記録が示すのは、実際に送金した額です。

出勤簿の8時間を、根拠なく注文Aへ全部振り分けてはいけません。作業日報と突き合わせ、時間の抜けや重複がないか確認します。単位にも注意しましょう。1時間30分は1.3時間ではなく、90分=1.5時間です。

当月消費額は、当月に働いた分

賃金の締日と月末が違うと、その月に支払った額の中に前月分が入ったり、今月働いた分が翌月払いになったりします。当月の原価にしたいのは、支払日で切った額ではなく、当月の労働に対応する額です。

前月末未払を当月に全額決済し、前払い・訂正などがない場合、当月消費賃金=当月支払総額−前月末未払+当月末未払です。月初の前月分を外し、月末の当月分を加える、と意味からたどりましょう。

未払の増減からも検算できる

同じ関係を、月初未払+当月消費=当月支払+月末未払、と並べ替えられます。先月からの支払義務に今月働いた分を足し、支払った分と月末に残る分へ分ける式です。

未払額が増えた月は、ほかの増減がなければ消費額が支払総額より多くなります。逆算問題で迷ったら、この左右のつり合いへ戻ります。前払いなどがある問題では、この単純な式をそのまま使わず、追加条件を整理する必要があります。

控除前の総額と、本人に渡す額を分ける

支払総額から、本人が負担する所得税や社会保険料などの確定額を控除すると、差引支払額になります。控除額は会社が預かる金額であり、それだけ労働の原価が減ったという意味ではありません。

この章では控除額を問題で与え、税率・保険料率・給与計算の法律判断は扱いません。会社負担の法定福利費も別論点です。総額240,000円から30,000円を預かれば、本人への支払は210,000円ですが、賃金総額は240,000円です。

実際の時間と賃率で、原価の行き先を求める

賃率(ちんりつ)は、この章では1時間当たりの賃金額です。実際賃率が1,600円で注文Aを100時間加工したなら、注文Aに集める直接賃金は160,000円です。共通作業24時間なら、間接賃金は38,400円になります。

実際賃率を逆算するときは、同じ人の範囲・同じ月・同じ賃金の範囲に対応する時間を分母にします。この章では必要な全時間を明示し、割増や手当などの別計算はありません。製品がまだ完成していなくても、当月の労働は仕掛品などの原価に集めます。

賃金勘定に集めてから、仕掛品と製造間接費へ

この章の仕訳は、支払総額をいったん賃金勘定に集める方法です。支払時は借方 賃金/貸方 普通預金・預り金。直接労務費の振替は借方 仕掛品/貸方 賃金、間接労務費の振替は借方 製造間接費/貸方 賃金です。

直接分と間接分を一つの仕訳でまとめるなら、貸方の賃金は合計額の1行にします。原価への振替で、現金や預金をもう一度減らしてはいけません。製造間接費に集めた額を製品へ配賦する処理は、後続の章で扱います。

月末の未払と、翌月初の再振替

月末に未計上の当月分があれば、借方 賃金/貸方 未払賃金で記帳します。これで当月消費額を正しく賃金勘定へ集められます。その後、直接・間接の消費額を原価へ振り替えます。

翌月も支払総額を賃金に計上する方法では、月初に借方 未払賃金/貸方 賃金と再振替します。前月の原価を消す処理ではなく、翌月の支払総額に含まれる前月分を翌月原価へ二重計上しないための調整です。再振替の有無は、設問で指定した記帳方法に従います。

二つの勘定を、別々に確かめる

賃金勘定は、支払・月初調整・月末調整で当月消費額を集め、原価への振替が済めば、この章の条件では残高がゼロになります。一方、未払賃金勘定には、翌月に支払うべき月末未払額が残ります。

「賃金勘定がゼロだから未払いもない」は間違いです。金額のつり合いだけでなく、どの勘定が原価の集計用で、どの勘定が未払の義務を表すのかまで説明できるようにしましょう。

例題

支払った前月分を引き、当月の未払分を足す

当月賃金支払総額310,000円。前月末未払25,000円は当月中に全額支払済み。当月末未払35,000円。前払い・訂正・その他の増減はない。

解き方と答え
  1. 支払総額のうち当月分は310,000−25,000=285,000円。
  2. 当月に働いてまだ支払っていない35,000円を足す。
  3. 当月消費額320,000円。25,000+320,000=310,000+35,000で検算。

当月消費賃金は320,000円。

出勤時間から休憩を除き、作業日報とつなぐ

9時から18時まで在社し、休憩は60分。残りはすべて正常な作業。日報には注文A 180分、注文B 240分、共通作業60分と記録されている。

解き方と答え
  1. 在社9時間=540分から休憩60分を除き、就業480分。
  2. 直接作業180+240=420分。共通60分と合わせて480分。

就業480分=直接420分+間接60分。

実際賃率で二つの注文と共通作業へ分ける

当月実際賃率1,800円。注文Aの直接作業50時間、注文Bの直接作業30時間、工場共通作業20時間。他の対象時間・賃金はない。

解き方と答え
  1. 注文A 50×1,800=90,000円、注文B 30×1,800=54,000円。
  2. 共通作業20×1,800=36,000円。合計180,000円。

直接144,000円は仕掛品、間接36,000円は製造間接費へ集める。

預かった分は消えた賃金ではない

賃金支払総額280,000円、従業員から控除して預かる確定額28,000円。差引額を普通預金から支払う。支払総額をいったん賃金に集計する。

解き方と答え
  1. 本人への振込は280,000−28,000=252,000円。
  2. 借方 賃金280,000/貸方 普通預金252,000・預り金28,000。

賃金総額280,000円を、本人への支払と預り金に分ける。

月末と翌月初は反対の仕訳になる

月末に未計上の当月賃金18,000円があり、翌月初に再振替する方法を採用している。

解き方と答え
  1. 月末:借方 賃金18,000/貸方 未払賃金18,000。
  2. 翌月初:借方 未払賃金18,000/貸方 賃金18,000。
  3. 翌月の支払時は総額を賃金へ計上するので、月初の貸方が前月分を取り除く役目になる。

月末は当月分を加え、翌月初は二重計上を防ぐ調整。どちらも現金の支払ではない。

賃金勘定がゼロでも、未払は残る

当月支払総額200,000円、前月末未払10,000円、当月末未払20,000円。前月末分は当月に支払済み。追加要因はない。月初再振替・当月支払・月末計上の後、実際消費分をすべて原価へ振り替える。

解き方と答え
  1. 当月消費200,000−10,000+20,000=210,000円。
  2. 賃金の借方200,000+20,000=220,000円、貸方10,000+振替210,000=220,000円。
  3. 未払賃金には月末の20,000円が残る。

賃金勘定残高0円と、未払賃金残高20,000円を区別する。

間違えやすいところ

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採点と記録にはJavaScriptを使います。配点はこの教材独自のものです。