# SUBURBIA CLASSICA — 全曲データ(Markdown) > 各曲のページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/曲ID.html > 現収録74曲にはピアノ以外の編成も含みます。今後の選曲方針、音源の確認範囲、Impressive/Realismと着想の扱いは https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/about.html を参照してください。 # エリーゼのために - 英題: Für Elise — Bagatelle No.25 in A minor, WoO 59 - 作曲者: ベートーヴェン(古典派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1810年(草稿)/1867年出版 - 作品番号: WoO 59(バガテル第25番) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/fur-elise.html 約3分のロンド形式の小品です。冒頭の半音の揺れが、一度聴けば忘れられない主題を作っています。 ## 作曲の経緯 ベートーヴェンが39歳だった1810年4月27日付とされる小品です。主旋律の原型は1808年ごろ、交響曲第6番のスケッチ帳に16小節の旋律として書き留められており、後の形とは少し違っていました。1810年春には全曲の草稿(ボンのベートーヴェン・ハウス所蔵、BH 116)が書かれ、同じ紙に『エグモント』や行進曲WoO 19のスケッチがあることから時期が絞られます。1822年にはこの草稿に手直しが入り「12番」の番号が振られたため、バガテル集の最終曲にする構想があったらしいが、完成しませんでした。生前は出版されず、自筆譜は失われています。世に出たのは没後40年の1867年で、ルートヴィヒ・ノールが書簡集の中で紹介しました。ノールの説明では、楽譜はもともとテレーゼ・マルファッティの遺品で、のちにミュンヘンのバベッテ・ブレードルが持っていました。 ## 出版・初演 生前は未出版です。1867年、ルートヴィヒ・ノール編『ベートーヴェン新書簡集』(シュトゥットガルト、コッタ社)に掲載されたのが最初です。初演の記録は未確認です。1822年稿は伴奏が大きく異なり、左手アルペジオが16分音符分ずれます。 ## 題名・通称の由来 ノールが伝えた自筆譜の献辞「Für Elise(エリーゼのために)」によります。ただし原本は現存せず、Therese→Eliseの書き間違い説や、献辞を後の所有者が書き加えたとする説もあります。 ## 構成分析 - A(Poco moto、イ短調、3/8): EとD#が揺れ動く有名な主題です。アルペッジョの伴奏とともに、問いと答えの形の8小節を作ります。9小節目から平行調をかすめ、属音Eを引き延ばして主題に戻ります。 - B(23小節〜、ヘ長調): 下属調側のヘ長調で始まり、主題の音形を少し装飾して示します。属調ハ長調へ転じ、32分音符の走句で終止を繰り返します。 - A(再現): 冒頭部がそのまま戻ります。 - C(59小節〜、主調): 主音の保続低音の上で、和音を激しく連打します。ナポリ和音をかすめ、76小節で完全に静止します。 - A(最終)と結び: イ短調の上行アルペッジョと2オクターブの半音階下降を経て、A部が最後に回帰し、後奏なしで終わります。 ## 音楽的特徴 ABACA型の5部ロンド、イ短調、3/8拍子です。冒頭の半音揺れ(E-D#)の音形で曲が識別でき、8小節ずつの対称構造は反復にも向きます。B・C両エピソードの旋律も冒頭の音高輪郭(上方隣接音から下降音階)を使い、全体に統一感があります。トリル、分散和音、オクターブ、トレモロ、連打音、3度・6度の重音、半音階など技法は多彩で、小品ながら練習曲的でもあります。版により7小節目の2つめの音がEかDかが異なります(ノール版はE、草稿に近い読みはD)。 ## 演奏のポイント ピアノ学習5年目前後の中級入門曲として知られます。旋律にオクターブの広がりがあり、小学校高学年程度の手の大きさが目安です。難所はBの32分音符走句とCの高速な上行アルペッジョです。冒頭の弱音の保ち方と、A部を毎回同じに聴かせない工夫が聴かせどころです。 ## この音源について - 演奏: ラン・ラン(ピアノ) - アルバム: Piano Book - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認(2019年3月29日発売と検索結果にある) - 録音場所: 未確認 2019年発売のアルバムです。Gramophone誌によれば、腱炎の療養を経たランランの録音復帰作で、少年期に親しみ演奏家への情熱を育んだ小品を集めた内容です。楽譜付き商品として企画され、ランラン・ピアノ・アカデミーの教育企画の一環でもあります。『エリーゼのために』にはランラン自筆の演奏アドバイス入り楽譜が付くと紹介されています。同誌の評は、誇張とペダルの多用を指摘しています。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 不滅の恋人 (Immortal Beloved)(1995): ベートーヴェンが甥カールに初見で弾かせ、続いて自分でも弾き始める場面です。 https://www.tunefind.com/movie/immortal-beloved-1995 ## CM - 日産スカイライン(7代目R31型クーペ)のCM。テクノ調アレンジ: 1985〜1990年の販売期間内(放映年は未確認) https://ja.wikipedia.org/wiki/エリーゼのために ## トリビア - ドイツ語の音名で「E-L-I-S-E」の文字を読むと、冒頭3音(E-D#-E)と対応するという指摘があります(Kopitz紹介の説)。 - 台湾ではごみ収集車の接近を知らせる曲として使われ、日本でも収集車や駅の接近メロディなどで耳にします。 - ノールが見たという自筆譜は現存せず、そもそも存在しなかった可能性まで論じる研究者もいます(反論もあります)。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/エリーゼのために - https://en.wikipedia.org/wiki/Für_Elise - https://imslp.org/wiki/Für_Elise,_WoO_59_(Beethoven,_Ludwig_van) - https://www.tunefind.com/movie/immortal-beloved-1995 --- # ピアノソナタ第14番「月光」第1楽章 - 英題: Piano Sonata No.14 “Moonlight” Op.27-2, 1st movement - 作曲者: ベートーヴェン(古典派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1801年 - 作品番号: Op.27-2 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/moonlight.html 途切れない三連符の伴奏の上で、低い旋律がゆっくり語られる緩徐楽章です。ソナタの一般的な配置を逆にし、緩い楽章から始まります。静かな曲にも、こんなに絶え間ない動きがあるのが面白いです。 ## 作曲の経緯 1801年、ベートーヴェンが30歳のころに完成した作品で、委嘱を受けた証拠はありません。作品27の2曲(第13番と第14番)には、どちらも「幻想曲風ソナタ」という題が付けられました。伝統的な「急−緩−急」を避け、緩やかな楽章から始めて速度を段階的に上げ、重心を終楽章に置いた配置になっています。献呈相手のジュリエッタ・グイチャルディは、1801年11月にヴェーゲラーへ宛てた手紙で恋心をほのめかした弟子ですが、この献呈は当初からの意図ではなく、本来グイチャルディに捧げる予定だったロンドOp.51-2をリヒノフスキー家の令嬢に贈ることになったため、代わりにこのソナタが充てられたとされます。 ## 出版・初演 初版はウィーンのカッピ社から1802年に出版されました。日付は資料により異なり、日本語版Wikipediaは「1802年3月」、英語版Wikipediaは初版タイトルページに「2 August 1802」とあるとします。このため月日は断定しません。タイトルページには「チェンバロまたはピアノフォルテのための」とあり、当時の出版社の販売上の慣行とされます。初演の記録は未確認です。 ## 題名・通称の由来 ベートーヴェン自身の命名ではありません。詩人ルートヴィヒ・レルシュタープが、第1楽章の効果を「月明かりに揺れる湖」のような情景にたとえたことに由来します(命名時期は英語版が1824年、日本語版が1832年で食い違う)。「ルツェルン湖の舟」という有名な表現は、1852年にヴィルヘルム・フォン・レンツが付け加えたものらしいです。チェルニーは先んじて「夜景。遠くから悲しげな亡霊の声が聞こえる」と評しました。ベートーヴェンはこの人気を快く思っていなかったとされます。 ## 構成分析 - 冒頭指示(Adagio sostenuto): 「全曲を極めて繊細に、ダンパーなしで演奏すること」という指示で始まります。現代ピアノではサステインペダルを使い続ける解釈になるが、響きが濁りやすいです。形式の見方は、三部形式とする説や、変則的なソナタ形式とする説に分かれます。 - 序奏とA主題: 低音のオクターブに続き、途切れない三連符の伴奏の上に付点リズムの旋律が置かれます。葬送を思わせる、とする見方もあります。 - B主題と中間部: ロ長調付近でB主題が出ます。中間部ではA主題の素材から出発し、旋律的な要素が薄れ、三連符が高音域へ弧を描いて上り下りします。 - 再現: A主題が再び現れ、B主題も続いて再現されます。 - コーダ: 約2オクターブにわたる三連符の往復の下で、低音がA主題のリズムを繰り返し、最弱音で終わります。アタッカの指示で休みなく第2楽章(Allegretto、変ニ長調)へ進みます。 ## 音楽的特徴 嬰ハ短調、2/2拍子です。右手の三連符が最後まで途切れず、この音型が全体のトーンを決めます。旋律は主に低音側で語られ、右手は同じ音型を保ちます。音量はpp〜pの範囲にとどまります。弱音と持続音を重ねたペダルの響きが主役で、旋律の動きは小さいです。この三連符の音型は終楽章のアルペッジョの動機へ発展し、全曲の統一にも関わります。 ## 演奏のポイント 最大の課題はペダルです。現代のピアノは当時より余韻が長く、楽譜どおりの踏みっぱなしでは和声が濁ります。対策として、和声の変わり目ごとに踏み替える、ハーフペダルを使う、低音を無音で押さえてソステヌートペダルで保持する、などの方法があります。トーヴィは、速いテンポを選んで12/8のようになる解釈を戒めました。全曲では終楽章が技術・持久力ともに最も難しいです。 ## この音源について - 演奏: マレイ・ペライア(ピアノ) - アルバム: Beethoven: Piano Sonatas Nos. 14 ("Moonlight") & 29 ("Hammerklavier") - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認(2018年2月発売) - 録音場所: ベルリンの放送施設(ホール名は未確認) Sony ClassicalからDGへ移ってからの録音です。The Classic Reviewによれば、制作の進め方は変わらずベルリンの放送施設で録られました。ペライアにとって月光もハンマークラヴィーアもこのレーベルでは初録音とされます。同評は月光のテンポ設定を適切と評し、ペダルは和声の変化ごとに替える穏当な扱いで、アタッカの指示どおり全楽章を途切れず弾いていると述べます。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。このトラックが上記アルバムのものかは、演奏者とレーベルからの推定です。) ## 映画・ドラマ - 不滅の恋人 (Immortal Beloved)(1995): 新しいピアノの蓋に頭をつけて音を感じ取りながら弾くベートーヴェンを、隣室からジュリエッタ・グイチャルディとその父がのぞき見る場面です。 https://www.tunefind.com/movie/immortal-beloved-1995 - Moonlight Sonata(ロータル・メンデス監督)(1937): パデレフスキが第1楽章を演奏します。登場人物の亡き両親を結びつける曲として登場するとされます(上映案内ページの要約です。本文は精読していません)。 https://www.dhm.de/zeughauskino/en/screening/moonlight-sonata-6705/ - 名探偵コナン ピアノソナタ『月光』殺人事件(公開年未確認): 第1楽章と第2楽章が流れる場面があります(日本語版Wikipediaの記述)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノソナタ第14番_(ベートーヴェン) ## トリビア - 日本の戦前の国語読本に載った「盲目の少女のために即興で作った」という『月光の曲』の話は、19世紀ヨーロッパで作られた創作で、事実ではありません。 - 弟子チェルニーによると、ベートーヴェン自身は、この曲が人気を集めすぎたことを不満に思い、「もっといいものを書いたのに」といった趣旨のことを言ったとされます。 - リストは第2楽章を「2つの深淵の間に咲く一輪の花」と評しました。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノソナタ第14番_(ベートーヴェン) - https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_Sonata_No._14_(Beethoven) - https://www.tunefind.com/movie/immortal-beloved-1995 - https://gramophone.co.uk/articles/beethoven-s-moonlight-sonata-a-deep-dive-into-the-best-recordings - https://imslp.org/wiki/Piano_Sonata_No.14,_Op.27/2_(Beethoven,_Ludwig_van) --- # 別れの曲(練習曲 Op.10-3) - 英題: Étude Op.10 No.3 in E major “Tristesse” - 作曲者: ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1832年 - 作品番号: Op.10-3 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/tristesse.html 速さを競う練習曲とは正反対に、遅いテンポで旋律を歌わせる練習曲です。右手が旋律・内声・伴奏の三層を受け持ちます。一つの右手から三層の音楽が聞こえてくるところに、ピアノで歌う面白さを感じます。 ## 作曲の経緯 1832年、22歳のショパンがパリで書いた曲です。Op.10の練習曲集は1829年ごろから数年かけて書き継がれ、この曲は後期にあたります。標題は「練習曲」ですが、従来の練習曲と違い、遅いテンポで旋律を歌わせる曲です。伝記作家ニークスによると、弟子のグートマンがこの曲をさらっていたとき、ショパンは「これほど美しい旋律は二度と書けないだろう」と言い、両手を組んで「ああ、わが祖国よ」と叫んだといいます。望郷の思いを重ねて語られる逸話ですが、後年の伝記に載ったもので、同時代の記録は確認できていません。自筆譜は2種類残り、速度標語はVivace、次いでVivace ma non troppoと書かれています。出版時にショパンがLento ma non troppo(8分音符=100)へ改めたとみられます。2つ目の自筆譜の末尾には、第4番へ間を置かずに入るアタッカの指示があります。 ## 出版・初演 作曲は1832年です(曲集Op.10全体は1829〜32年)。Op.10は1833年に出版されました(英語版Wikipediaはパリのシュレザンジェ版、1833年6月を引く)。初演は未確認です。自筆譜はニューヨークのレーマン・コレクション(Vivace)とワルシャワのショパン博物館(Vivace ma non troppo)に1種ずつです。練習曲集の世界初録音は1927年とされます(日本語版Wikipedia脚注)。 ## 題名・通称の由来 日本で定着した「別れの曲」という通称は、1934年のドイツ映画『Abschiedswalzer』(邦題『別れの曲』、ゲツァ・フォン・ボルヴァリー監督)の邦題に由来します。この映画はショパンの伝記映画で、本曲が主題曲に使われました。日本では1935年にキャストを替えたフランス語版(La chanson de l'adieu)が公開されて大ヒットし、これを機に本曲が「別れの曲」と呼ばれるようになりました。海外の通称は「Tristesse(悲しみ)」で、フランス語圏では「L'intimité」、英語圏では「Farewell」とも呼びます。いずれもショパン自身が付けたものではありません。 ## 構成分析 - A部(冒頭〜約20小節、Lento ma non troppo): 右手の最上声が息の長い旋律を歌い、内声と細かい16分音符の揺れが同じ手で伴奏を務めます。左手は和音とシンコペーションで支えます。楽句の構成は(5+3)+(5+7)小節という非対称型です。声部ごとに別々のクレッシェンド・ディミヌエンド記号が付くのも新しい点です。 - B部(poco più animato、約21〜61小節): 旋律と伴奏が重音の連なりに融合する中間部です。8小節の楽句が5つ並び、第3楽句は減7と三全音の連続で転調が激しいです。第4楽句(46〜53小節)は両手の6度重音によるクライマックスです。第5楽句(54〜61小節)は属七の和音を引き延ばしてA部再現へつなぎます。 - A'部と終結: A部が短縮して戻り、静かに閉じます。自筆譜末尾には第4番へのアタッカ指示があります。 ## 音楽的特徴 三部形式(A-B-A')で、夜想曲のような歌の曲想が指摘されることが多いです。A部の伴奏は右手の細かい揺れと左手のシンコペーションが重なります。旋律には音の反復が多く、第4〜5小節の長3度の揺れはドビュッシー的な響きを先取りしているとカゼッラが述べています。B部は減7の和音と三全音を連ね、ホ長調を保ちつつ半音階的な色合いが強まります。ペダル指示は自筆譜にも原典版にも見当たりません。 ## 演奏のポイント 右手は弱い3本の指(中指・薬指・小指)が旋律、親指と人差し指が16分音符の伴奏を受け持ちます。一つの手で声部ごとに音量とタッチを変えることが課題です。コルトーは、上声をforteのレガート、中声をmp、最下声の16分音符をppのスタッカートにして別々に練習することを勧めます。指定のテンポは8分音符=100ですが、エキエルは、実演は常にこれより遅いか、はるかに遅いと述べます。B部の6度重音のクライマックスは、A部よりずっと速く弾かれるのが通例です。 ## この音源について - 演奏: マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ) - アルバム: Chopin: Etudes Op. 10 & Op. 25 - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1972年(月日は未確認) - 録音場所: 未確認(ミュンヘンのヘルクレスザールとされるが、この録音での明記は未確認) ポリーニは1960年のショパン・コンクール優勝後、ショパン弾きと固定されることを恐れていったん表舞台から退きました。DG公式によれば、1972年に始まったDGでのショパン録音の第1弾がこの練習曲集で、感傷に流れない引き締まった解釈でショパン像を一新したとされます。同年の練習曲集録音はベストセラーとなり、基準盤と評されました。なお1960年にも同曲を録音していたが、EMIからの発売は本人が認めなかったといいます。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 別れの曲 (Abschiedswalzer / La chanson de l'adieu)(1934): ショパンの伝記映画です。恋人コンスタンツィアの18歳の誕生日に贈る曲として、本曲が主題曲に使われます。日本では1935年にフランス語版が公開されました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/別れの曲_(映画) - さびしんぼう(年未確認): 原曲が全編にわたって使われ、エンディングではアレンジ版が歌入りで流れます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/練習曲作品10-3_(ショパン) - 男はつらいよ(TVドラマ版最終回)(年未確認): マドンナ・冬子の家の縁側で、寅次郎が婚約者の存在を知る場面で、隣家のピアノから流れます。1973年の映画『私の寅さん』で再現されました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/練習曲作品10-3_(ショパン) - 101回目のプロポーズ(TVドラマ)(年未確認): ヒロインの亡き婚約者が好んだ曲として場面のBGMになります。 https://ja.wikipedia.org/wiki/練習曲作品10-3_(ショパン) ## トリビア - 日本で「別れの曲」と呼ばれるのは1935年の映画のヒットがきっかけで、海外ではこの通称は通じません。 - 自筆譜の速度標語はVivaceでしたが、出版時にLento ma non troppoへ変更されました。 - ゴドフスキーは本曲を左手だけで弾く版に編曲しました。変ニ長調に移調し、両手で弾いているような錯覚を生む作りです。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/練習曲作品10-3_(ショパン) - https://ja.wikipedia.org/wiki/別れの曲_(映画) - https://en.wikipedia.org/wiki/Étude_Op._10,_No._3_(Chopin) - https://www.henle.de/Etude-E-major-op.-10-no.-3/HN-656 - https://imslp.org/wiki/Études,_Op.10_(Chopin,_Frédéric) --- # 幻想即興曲 - 英題: Fantaisie-Impromptu in C-sharp minor, Op.66 (posth.) - 作曲者: ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1834年 - 作品番号: Op.66(遺作) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/fantaisie-impromptu.html 右手の16分音符と左手の三連符がぶつかる両端部と、中間部の甘い旋律の対比です。ショパン自身は生前に出版しませんでした。両手のリズムのせめぎ合いも、中間部の甘さも、この曲の大好きな魅力です。 ## 作曲の経緯 1834年にショパンが作曲したとされます。同じ年にはOp.17のマズルカやOp.18のワルツも生まれたが、本作だけは生前に出版されませんでした。理由は不明で、ベートーヴェンの「月光」ソナタに似すぎているのを気にしたという説、同じ1834年に出たモシェレスの即興曲との類似を気にしたという説があります。ショパンは遺言で未発表作品の公表を禁じたとされますが、友人のフォンタナが1855年に遺作として世に出しました。1960年ごろ、ルービンシュタインがパリの競売で「エステ男爵夫人のアルバム」を入手し、1835年の日付が入ったショパン自筆の清書譜を見つけました。表紙には「エステ男爵夫人のために作曲」とあり、フォンタナ版とは音やニュアンスの違いが多いです。ルービンシュタインはこれを決定稿と考えました。ただし日本語版Wikipediaは発見を1962年としており、年に食い違いがあります。 ## 出版・初演 1855年、ユリアン・フォンタナが遺作として出版しました(Op.69・70のワルツと同時)。初演は未確認です。自筆清書譜(1835年付)を基にした版は、ウィーン原典版、ポーランド国民版、ペータース版、ヘンレ版などに収められています。録音は、フォンタナ版の例にバックハウス(1908年)、自筆譜版の例にルービンシュタイン(1964年)が挙げられます(日本語版Wikipedia)。 ## 題名・通称の由来 「幻想即興曲」の題はショパンの生前にはなく、フォンタナが1855年に出版したときに付けました。即興曲としては最初に書かれたが出版が最後になったため、第4番という番号になりました。この番号は旧全集の便宜上のものです。 ## 構成分析 - A部(Allegro agitato、嬰ハ短調、2/2): 右手の16分音符と左手の三連符が絶えず絡み合い、休みなく動きます。「月光」ソナタ第3楽章との類似がオスターのシェンカー分析で指摘されています。 - B部(Largo → Moderato cantabile、変ニ長調): 嬰ハ長調と異名同音の変ニ長調に移り、のびやかな歌になります。この旋律は1917年のポピュラー曲『I'm Always Chasing Rainbows』に引用されました。 - A'部(Presto、嬰ハ短調へ復帰): 冒頭の急速な動きが戻ります。 - コーダ: 左手がB部の主題を静かに弾き直し、右手は16分音符を続けます。最後は嬰ハ長調の和音(ピカルディ終止)で静かに閉じます。 ## 音楽的特徴 複合三部形式です(A-B-A')。2/2拍子の中で、右手の16分音符と左手の三連符が交差リズムを作り、緊迫感を支えます。中間部は同主調の異名同音(変ニ長調)に移り、急から緩へ性格を一変させます。オスターの分析では、同じ嬰ハ短調の「月光」ソナタとの類縁が強いです。主題提示の2小節後の急速なパッセージは、「月光」終楽章のカデンツァと同じ音を1オクターヴ上で用います。一方、ハネカーは一部を「感傷的」で「気高さに欠ける」と批判しています。 ## 演奏のポイント 右手の16分音符と左手の三連符のずれを、拍が崩れずに保つことが最大の課題です。ノンストップの急速なパッセージを滑らかなレガートで弾き通す持久力が要ります。中間部は旋律を歌わせつつ伴奏の流れを保ちます。版によって音が異なるため、フォンタナ版と自筆譜版のどちらを使うかを決めておきます。 ## この音源について - 演奏: ダニール・トリフォノフ(ピアノ) - アルバム: Chopin Evocations - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認(2017年発売) - 録音場所: 未確認 ショパンとその影響を受けた作品を並べた2枚組です。プレトニョフ編曲による2つのピアノ協奏曲の世界初録音(マーラー室内管)、セルゲイ・ババヤンとの2台ピアノ用ロンド、トリフォノフ編のバルバー、グリーグ、チャイコフスキーらの小品、モンポウのショパン変奏曲を含みます。Gramophone誌の評では、幻想即興曲は独立曲としての収録で、最後のモンポウの変奏曲の第10変奏がその中間部を引用して全体を閉じます。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。このトラックが上記アルバムのものかは、演奏者とレーベルからの推定です。) ## トリビア - ショパンは遺言で未発表作品の公表を禁じたとされますが、フォンタナがそれに背いて出版しました。 - 自筆の清書譜は長く行方が分からず、1960年ごろにルービンシュタインが競売で入手するまで知られていませんでした。 - 中間部の旋律は1917年の『I'm Always Chasing Rainbows』にそのまま使われました。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/幻想即興曲 - https://en.wikipedia.org/wiki/Fantaisie-Impromptu - https://imslp.org/wiki/Fantaisie-impromptu,_Op.66_(Chopin,_Frédéric) - https://www.henle.de/en/Fantaisie-Impromptu-C-sharp-minor-op.-posth.-66/HN-1320 --- # ノクターン第2番 - 英題: Nocturne in E-flat major, Op.9 No.2 - 作曲者: ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1830〜31年頃 - 作品番号: Op.9-2 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/nocturne-9-2.html 揺れる左手の伴奏の上で、同じ旋律が回帰するたびに装飾を増していく夜想曲です。ショパンの夜想曲の中でも特に広く親しまれています。戻ってきた旋律の、今度はどこが飾られるのでしょうか。小さな違いを見つける喜びがあります。 ## 作曲の経緯 ショパンはポーランドの動乱の中で1831年にパリへ移り、そのまま帰国できなくなりました。作品9の三曲の夜想曲は1830〜31年頃に書かれ(IMSLPは1830-31年)、ショパンにとって初めて出版された夜想曲集です。夜想曲というジャンルはアイルランド出身のジョン・フィールドが築いたもので、アルペジオの伴奏に歌うような旋律を載せる型を持ちます。サロン向けの作品が求められた若い作曲家にとって、格好の形式でした。本曲もフィールドの影響が強いとされますが、旋律が回帰するたびに装飾が増す点には、イタリア・オペラの装飾的な歌唱からの影響が指摘されます。ショパンは再現のたびに自由に変奏して弾いたと伝えられ、弟子の楽譜にも装飾の書き込み例が残ります。なお、具体的な作曲日や直接のきっかけを伝える一次資料は確認できませんでした。 ## 出版・初演 1832年にパリ等で出版されました。ただしモーガン図書館の書誌ではパリのシュレジンジャー版とライプツィヒのキストナー版を「1832?」と疑問符付きで記し、初版を1833年とする記述もあり、出版年は資料間で揺れがあります。初演は未確認です。 ## 題名・通称の由来 「ノクターン(夜想曲)」の語は、夜を指すラテン語Noxに由来し、修道院の晩祷や夜の黙想の意味合いから転じたと考えられています。ピアノ独奏曲のジャンルはジョン・フィールドが始めました。本曲に固有の愛称は確認できず、日本では「ショパンのノクターン」と言えばこの曲を指すことが多いです。 ## 構成分析 - A(主題提示): Andante、変ホ長調、12/8です。弱音でレガートに歌う旋律が、優美な上行の跳躍を伴って始まります。 - A(反復): 主題が繰り返され、装飾音が加わります。 - B(副次旋律): 副次的な旋律がルバートで奏されます。 - A(再現・装飾増)→ B(再現): 主題と副次旋律が再び現れ、そのたびに装飾が増えます。 - A+コーダ: 主題が最も装飾された形で戻り、コーダへ進みます。終わり近くの小節にはsenza tempo(テンポなし)の指示があり、リズムの自由度が高いです。全体はA-A-B-A-B-A-コーダ(ロンド風)と見る説と、英語版が示す拡張された二部形式(A,A,B,A,B,A+コーダ)とする説があります。 ## 音楽的特徴 拍子は12/8で、左手は広い音域に配置した分散和音をダンパーペダルでつなぎ、旋律を支える響きの土台にしています。伴奏は12拍を3拍ずつ四つに分けるワルツ風の揺れを緩やかに強調します。右手の旋律は再現のたびにトリルや装飾音で飾られ、イタリア・オペラの装飾的歌唱を思わせます。構造は単純ですが、変奏によって同じ旋律を繰り返しながら表情を変える点が特徴です。一方で、旋律が装飾されて繰り返されるだけで内容は乏しいとする見方もあります。 ## 演奏のポイント ポイントは、(1)左手を均一に保ちつつペダルで響きをつなぐ、(2)右手の装飾音を拍の中に自然に収めるルバート、(3)再現ごとに装飾を増やしながら歌の流れを切らないこと、(4)senza tempoの小節の処理です。ショパン自身が変奏を加えて弾いたとされるため、版や弟子の書き込み例を参照する演奏者も多いです。 ## この音源について - 演奏: ラン・ラン(ピアノ) - アルバム: Piano Book 2 - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 ランランが少年期から親しんだ小品を集めた『Piano Book』の続編にあたる企画盤に収録されたとされます。DGの紹介動画ページとユニバーサルのプレスリリースがありますが、本文は確認できておらず、録音年・会場・プロデューサー等は未確認です。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。アルバム名は検索結果の要約によります。) ## 映画・ドラマ - バッド・サンタ (Bad Santa)(2003): オープニング・シークエンスで使われています。演奏はイディル・ビレットと記載されています(二次的な出典のため要再確認)。 https://artofthetitle.com/title/bad-santa - 愛情物語(1956): 主題曲としてカーメン・キャバレロが本曲をアレンジして演奏した『To Love Again』が使用されました。原曲そのものではなくアレンジです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/夜想曲第2番_(ショパン) ## CM - au(KDDI)「三太郎」シリーズ『本命?』篇(アレンジ版をBGMに使用): 2017 https://ja.wikipedia.org/wiki/夜想曲第2番_(ショパン) ## トリビア - 台北捷運の松山新店線では、本曲のアレンジが列車接近のメロディに使われています。 - 献呈相手のマリー・プレイエルは、ベルリオーズの元婚約者で、プレイエル社社長カミーユ・プレイエルの妻でした。 - ショパンは再現部で即興的に装飾を変えたと伝えられ、弟子の楽譜にはその変奏例が書き込まれています。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/夜想曲第2番_(ショパン) - https://en.wikipedia.org/wiki/Nocturnes,_Op._9_(Chopin) - https://imslp.org/wiki/Nocturnes,_Op.9_(Chopin,_Frédéric) - https://henle.de/Nocturnes/HN-233 - https://stereophile.com/content/recording-february-1968-chopin-nocturnes --- # 前奏曲 第15番「雨だれ」 - 英題: Prelude in D-flat major, Op.28 No.15 “Raindrop” - 作曲者: ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1838〜39年 - 作品番号: Op.28-15 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/raindrop.html 曲全体で鳴り続ける同じ音が、雨だれを思わせます。穏やかな主題と、暗く迫る中間部の対比です。24曲の前奏曲で最長です。 ## 作曲の経緯 作品28の24の前奏曲は、1839年1月にマジョルカ島で完成したことが、友人フォンタナ宛ての手紙から確認できます。着手の時期は明らかでなく、1831年から1838年までの諸説があります。ショパンは1838年11月から翌年2月まで、ジョルジュ・サンドとともに島に滞在し、雨の多い湿った冬と体調不良に苦しみました。ヘンレ版の解説によれば、第15番は、サンドの回想では島の嵐の中で書かれたとされますが、最初のスケッチはすでにパリで作られていたことを示す資料もあります。サンドの回想録は、雨の夜にショパンが、自分が湖で溺れ、冷たい水滴が胸に規則的に落ちる夢を見たと記す一方、ショパンは雨音を模倣したと解釈されることに強く反発した、とも伝えています。つまり「島で雨音を聞いて書いた」という通説は、史実としては裏付けが弱いです。曲集は1839年9月に出版されました。 ## 出版・初演 作品28全体は1839年9月に出版されました。第15番単独の初演の日時・演奏者は未確認です。ショパン自身が演奏会で取り上げたのは24曲中4曲までと伝えられます。 ## 題名・通称の由来 「雨だれ」はショパン自身の命名ではありません。命名者と時期は確認できませんでした。【史実】1838〜39年の冬にショパンとサンドがマジョルカ島に滞在したこと、作品28の完成が1839年1月のマジョルカであること、そしてサンドが回想録で、雨の夜にショパンが水滴の夢を見て、雨音の模倣だとする解釈に抗議したと書いていることです。【伝承・推測】この逸話に出てくる曲を、サンドは曲名で特定していません。多くの評論家が、繰り返される変イ音(嬰ト音)の響きから第15番だと推測してきたにすぎません。ピーター・ダヤンは、サンドもショパンの抗議を受け入れ、この曲を雨音の模倣ではなく自然の響きの音楽的な翻訳と見ていたと指摘しています。 ## 構成分析 - A(変ニ長調、Sostenuto、4/4): 穏やかで晴朗な主題です。変イ音の連打が曲全体を通して鳴り続け、雨だれに聴こえる要因となります。 - B(嬰ハ短調): 異名同音で嬰ハ短調に移り、陰鬱で重い中間部へ移ります。属音のペダルが途切れず低音で続きます(バッソ・オスティナート)。変イ音は嬰ト音として、より執拗になります。 - A'(変ニ長調への回帰): 冒頭の主題に戻ります。ニークスは、中間部の悪夢から覚めた後の清明な自然のようだと評しました。 ## 音楽的特徴 曲全体の核は、右手内側または低音域で刻まれ続ける変イ音です(中間部では異名同音の嬰ト音)。変ニ長調の明るさと嬰ハ短調の暗さが異名同音を介して対比され、同じ反復音が文脈によって意味を変えます。24曲中で最も長く、演奏時間は約5〜7分です。中間部では属音の持続音が低音に固定され、音が積み重なって緊迫感を強めます。長調から短調への移行は、両調が異名同音で結ばれていることを活かした大胆な場面転換です。 ## 演奏のポイント 技術的な難所は少ないが、(1)終始鳴る反復音を、一定の脈動を保ちつつ機械的にならない音量とタッチで弾き分けること、(2)中間部で反復音が大きくなる際に、旋律線を見失わないこと、(3)長調部と短調部の性格の切り替え、(4)ペダルによる響きの濁りのコントロール、が主なポイントです。演奏時間が長めなので、全体の設計が重要になります。 ## この音源について - 演奏: エリック・ルー(ピアノ) - アルバム: Chopin: 24 Préludes / Brahms: Intermezzo Op.117-1 / Schumann: Ghost Variations - レーベル: Warner Classics - 録音: 2019年8月28〜30日 - 録音場所: テルデックス・スタジオ(ベルリン) ルーは2018年のリーズ国際ピアノコンクールに20歳で優勝し、その後ワーナー・クラシックスと専属契約を結びました。このアルバムは2019年8月末にベルリンの名門テルデックス・スタジオで録音され、2020年2月に発売されました。24曲を一つの物語として組み立てた点がグラモフォン誌などで評価され、「雨だれ」は雨音の描写というより、印象主義的でやわらかな音楽として演奏されていると評されました。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 007 ムーンレイカー(1979): ボンドが敵役ドラックスの邸宅で初めて会う場面で、ドラックスがこの曲を弾いています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Prelude_Op._28,_No._15_(Chopin) - 夢(黒澤明監督『Dreams』)(1990): ゴッホの絵画を見る美術館の場面で、約7分半にわたり断続的に流れます。 https://en.wikipedia.org/wiki/Prelude_Op._28,_No._15_(Chopin) - プロメテウス(リドリー・スコット監督)(2012): 原曲と劇伴中の引用の両方で作品全体にわたり使われます。個別の場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Prelude_Op._28,_No._15_(Chopin) ## CM - Halo 3(Xbox 360)の宣伝映像『Halo: Believe.』: 2007 https://en.wikipedia.org/wiki/Prelude_Op._28,_No._15_(Chopin) ## 教科書・鑑賞教材 - 教育出版『中学校音楽鑑賞用教材集』令和7年度版(副教材。教科書本体ではない): 中学2・3年下—2、第13番「24の前奏曲 作品28」から第15番です(「日本と西洋の音楽の歩み」の項)。 https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/book/book/cate0/cate2/cate206/kanshou-r7jh.html ## トリビア - 24曲の中で最も長い前奏曲で、演奏時間はおおむね5〜7分です。 - サンドの回想録に出てくるのは「水滴の夢」の逸話で、曲名は書かれていません。第15番とするのは後世の推測です。 - 2022年のゲーム『Fall Guys』は、Halo 3の宣伝映像『Believe』のパロディでこの曲を使いました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Prelude_Op._28,_No._15_(Chopin) - https://ja.wikipedia.org/wiki/前奏曲_(ショパン) - https://www.henle.de/Prelude-D-flat-major-op.-28-no.-15-Raindrop/HN-854 - https://www.polygon.com/22809986/halo-3-believe-ad-campaign-making-of-unreleased-version - https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/book/book/cate0/cate2/cate206/kanshou-r7jh.html - https://gramophone.co.uk/articles/classics-reconsidered-alfred-cortot-s-1933-34-recording-of-chopin-s-preludes --- # 月の光(ベルガマスク組曲 第3曲) - 英題: Clair de lune — Suite bergamasque, L.75 No.3 - 作曲者: ドビュッシー(印象派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1890年頃(1905年出版) - 作品番号: ベルガマスク組曲 第3曲 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/clair-de-lune.html 弱音の和音と流れるアルペッジョで、月明かりの情景を描いた小品です。ヴェルレーヌの詩に結びつく題名を持ちます。 ## 作曲の経緯 ドビュッシーは1890年ごろ、20代後半でピアノ組曲を構想し、前奏曲・メヌエット・「感傷的な散歩」・パヴァーヌを並べました。のちに「感傷的な散歩」は「月の光」に、パヴァーヌは「パスピエ」に改題されました。どれもヴェルレーヌの詩に由来する題名です。組曲名の「ベルガマスク」は、詩集『艶なる宴』の詩「月の光」の冒頭にある「仮面とベルガモの踊り手」の語から取られました。ドビュッシーはこの同じ詩に歌曲も付けていますが、組曲の「月の光」はそれとは全く別の音楽です。ヘンレ版の解説によると、原稿は1890年に出版社ショードンへ渡ったまま刊行されず、1905年にフロモン社から出ました。ドビュッシーは校正刷に作曲年「1890」と書き入れ、初期作であることを明示しました。出版前に改訂したことは確かですが、1890年の形と1905年の形で何がどれだけ違うのかは、現存資料からは分かっていません。 ## 出版・初演 1905年、パリのE.フロモン社です(プレート番号 E.1404 F.)。1890年ごろ作曲、1905年に改訂のうえ出版されました(IMSLP、ヘンレ、英語版Wikipediaで一致)。初演は未確認です。 ## 題名・通称の由来 題名はヴェルレーヌ『艶なる宴』所収の詩「Clair de lune(月の光)」からです。この曲の旧題は「感傷的な散歩(Promenade sentimentale)」で、これもヴェルレーヌの詩の題です。組曲名「ベルガマスク」は同詩第1節の「masques et bergamasques」に由来します。 ## 構成分析 - 冒頭主題(A): 変ニ長調・9/8拍子、Andante très expressifです。弱音で、柔らかい下降する旋律をゆるやかな和音で支えます。調性感は穏やかにぼかされます。 - 中間部(B): 律動が流れ出し、アルペッジョ状の伴奏の上で旋律が次第に高まります。曲中で最も感情の振れ幅が大きい部分です。 - 主題の再現(A')と結び: 冒頭の主題が戻り、音量を落として静かに閉じます。全体は緩-やや動く-緩の三部形式的な構成です(小節番号までは未確認)。 ## 音楽的特徴 変ニ長調、9/8拍子の複合3拍子で、全体の大半が弱音で奏されます。和声は古典的な機能和声の連なりから距離を取り、旋法的で曖昧な響きを生みます。前奏曲の部分には、同じヴェルレーヌ詩にフォーレが付けた歌曲の伴奏に似た音形が出るとの指摘もあり、先行作曲家の影響が見える初期作でもあります。ピアノ書法は、内省と距離感の間を行き来する印象主義的な響きの扱いが核になります(細かな和声分析は、参照した解説では詳述されていません)。 ## 演奏のポイント 超絶技巧は少ないが、弱音の中で音色の層とペダルを制御し、9/8の揺らぎを自然に保つことが課題になります。 ## この音源について - 演奏: チョ・ソンジン(ピアノ) - アルバム: Debussy(映像 第1集、ベルガマスク組曲、子供の領分 ほか) - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 2017年 - 録音場所: ジーメンス・ヴィラ(ベルリン) 2015年ショパン国際コンクールの優勝者チョ・ソンジンが、ドビュッシー没後100年の前年にあたる2017年に録音したオール・ドビュッシー・プログラムです。ベルリンのジーメンス・ヴィラで録音され、同年11月17日にドイツ・グラモフォンから発売されました。「月の光」を含む「ベルガマスク組曲」のほか、「映像」第1集や「子供の領分」などを収め、「喜びの島」で締めくくります。チョは11歳の初リサイタルで「ゴリウォーグのケークウォーク」を弾き、パリでミシェル・ベロフに師事しました。 (音源の投稿元(DG公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - オーシャンズ11(2001): 管弦楽編曲版が映画の結びに使われます。 https://fr.wikipedia.org/wiki/Suite_bergamasque - セブン・イヤーズ・イン・チベット(1997): ダライ・ラマがオルゴールを受け取る場面です。 https://fr.wikipedia.org/wiki/Suite_bergamasque - TOKYO SONATA(2009): 最後の場面で子どもがピアノで全曲を弾きます。 https://fr.wikipedia.org/wiki/Suite_bergamasque - つぐない (Atonement)(2007): 場面は未確認です。 https://fr.wikipedia.org/wiki/Suite_bergamasque - トワイライト〜初恋〜(2008): 場面は未確認です。 https://fr.wikipedia.org/wiki/Suite_bergamasque ## CM - シャネル(ニコール・キッドマン出演、クレイグ・アームストロング編曲): 2006 https://fr.wikipedia.org/wiki/Suite_bergamasque ## トリビア - ディズニーは『ファンタジア』(1940)にこの曲を使ったサギの映像の場面を作る予定でしたが、上映時間の都合で外されました。その映像は1946年の『メイク・マイン・ミュージック』の別の場面に転用され、1992年に作業用プリントが見つかって復元されました。 - 1971年にNHK『みんなのうた』で、この曲に中山知子の詞をつけた「月の光」が放送されました(歌は芹洋子と東京トルベール)。 - 2013年にGoogleが、この曲を使った音楽つきアニメーションのDoodleを公開しました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Clair_de_lune_(Debussy) - https://fr.wikipedia.org/wiki/Suite_bergamasque - https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルガマスク組曲 - https://imslp.org/wiki/Suite_bergamasque_(Debussy,_Claude) - https://www.henle.de/en/Suite-bergamasque/HN-381 - https://www.warnerclassics.com/release/debussy-suite-bergamasque-gieseking --- # ジムノペディ 第1番 - 英題: Trois Gymnopédies — No.1 - 作曲者: サティ(近代) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1888年 - 作品番号: 3つのジムノペディ 第1番 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/gymnopedie-1.html 左手の2つの和音の往復の上に、装飾を排した旋律が静かに乗ります。速度表示は「ゆっくりと、苦しみをもって」です。装飾の少なさが、和音の色を味わう余白をくれます。 ## 作曲の経緯 サティは1888年3月から4月にかけて、3曲のピアノ曲「ジムノペディ」を書き上げました。題名は古代スパルタで夏に行われた若者の踊りの祭り「ギュムノパイディア」に由来するが、典拠には諸説あります。サティ本人と友人ロラン=マニュエルはフローベールの小説『サランボー』を挙げました。一方、詩人J.P.コンタミーヌ・ド・ラトゥールの詩『古代人たち』を源とする見方もあります。第1番は1888年の夏、雑誌『家庭の音楽』にこの詩の一節とともに載りました。ただし、詩と曲のどちらが先に書かれたかは分かっていません。第1番の献呈先は、1895年の版に記されたジャンヌ・ド・ブレ嬢で、1888年の自筆譜にはありません。1897年2月には友人ドビュッシーが第3番と第1番を管弦楽に編曲し、2年後の出版時に番号を入れ替えました。 ## 出版・初演 1888年夏に雑誌『家庭の音楽』に第1番が掲載されています。1895年の版に献呈が付きます。IMSLPには1896年E.ボードゥー版を底本とするとの注記もあります。初演は未確認です。 ## 題名・通称の由来 古代スパルタの祭り「ギュムノパイディア」のフランス語形です。gymnos(裸の・武器を持たない)が語源に含まれます。サティは『サランボー』から取ったと述べたが、詩人コンタミーヌ・ド・ラトゥールの詩に同じ語が出る点や、辞典の定義から得たとの説もあります。ピュヴィ・ド・シャヴァンヌの絵の影響を推す見方もあります。 ## 構成分析 - 導入: 3/4拍子、Lent et douloureuxです。左手の低音と和音の反復で、Gmaj7とDmaj7の2つの和音が交互に現れます。 - 主題部: その上に、装飾を排した静かな旋律が乗ります。旋律は伴奏と軽い不協和を作ります。 - 反復と変化、結び: 主題が繰り返され、和声が少しずつ動いたのち、静かに終わります(確かめられたのは和声進行と速度表示までです。小節数や各部の長さは未確認です)。 ## 音楽的特徴 3/4拍子の遅いテンポと、左手の「低音→和音」の反復が骨格をなします。冒頭は下属音上のGmaj7と主音上のDmaj7の交替で、長調とも短調ともつかない曖昧な色合いを出します。旋律は和声に対して穏やかな不協和を保ち、哀愁を生みます。装飾を排した簡素な書法は、サティのいう「新しい単純さ」の最初の例とヘンレ版は解説しています。後に環境音楽の先駆とも見なされます。 ## 演奏のポイント 技術は平易ですが、左手の跳躍の中で低音と和音の音量差を整え、一定の歩みを保つのが要点です。右手は歌わせつつ、テンポを前に押さないことです。 ## この音源について - 演奏: パスカル・ロジェ(ピアノ) - アルバム: Satie: 3 Gymnopédies & other piano works - レーベル: Decca - 録音: 1983年5月 - 録音場所: キングスウェイ・ホール(ロンドン) ロジェのサティ集は1983年5月にロンドンのキングスウェイ・ホールで録音され、1984年にデッカから発売されました(410 220-2)。ジムノペディ全3曲に加え、グノシエンヌ、ジュ・トゥ・ヴ、官僚的なソナチネなどを収めます。クラシックFMはこの盤をジムノペディの優れた演奏に挙げ、録音の冷ややかな明晰さがサティの音楽に合うと評しています。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 鬼火 (Le Feu follet)(1963): 全編を通じてジムノペディ1〜3番とグノシエンヌが断片的に流れます。演奏はクロード・エルフェルです。 https://www.lostmediawiki.com/The_Fire_Within_(lost_film_soundtrack;_1963) - My Dinner with Andre(1981): 場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Gymnop%C3%A9dies - Another Woman(1988): 「マリオンのテーマ」として使われています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Gymnop%C3%A9dies - ロイヤル・テネンバウムズ(年未確認): 場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Gymnop%C3%A9dies - マン・オン・ワイヤー(年未確認): 場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Gymnop%C3%A9dies - 涼宮ハルヒの消失(2010): ジムノペディ全3曲を使用しています。最後にもBGMとして流れます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ジムノペディ ## CM - スバル レガシィB4(efによるクラブミックス風アレンジ): 2003 https://ja.wikipedia.org/wiki/ジムノペディ - アース製薬 アース OH!ノーマット「撃退成分横澤」篇・「撃退成分横山」篇: 年未確認 https://www.ragnet.co.jp/piano-commercial-songs/5 ## トリビア - ドビュッシーは、第2番を編曲しなかった理由を「第2番まで編曲して聞かせるには少し退屈だから」と答えたと伝えられます(伝聞)。 - 日本では、1963年の映画『鬼火』でこの曲が広まったとされます。1975年には池袋の西武美術館が館内の環境音楽として使い、さらに知られるようになりました。 - ブラッド・スウェット&ティアーズが第1番と第2番を編曲した「Variations on a Theme by Erik Satie」は、1968年のアルバムに収録され、翌年のグラミー賞を受けました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Gymnop%C3%A9dies - https://ja.wikipedia.org/wiki/ジムノペディ - https://imslp.org/wiki/3_Gymnopédies_(Satie,_Erik) - https://www.henle.de/en/Gymnopedies/HN-1072 - https://www.ragnet.co.jp/piano-commercial-songs/5 - https://interlude.hk/aldo-ciccolini-1925-2015/ --- # トロイメライ(子供の情景 第7曲) - 英題: Träumerei — Kinderszenen Op.15 No.7 - 作曲者: シューマン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1838年 - 作品番号: Op.15-7 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/traumerei.html 「夢想」を意味する題名どおり、ゆるやかに上り下りする4小節の旋律が、和声を変えながら8回現れる短い曲です。 ## 作曲の経緯 1838年2月から3月にかけて、シューマンは短い小品を30曲ほど一気に書き進めました。日記によればトロイメライは2月24日に生まれています。3月中旬にはクララ宛の手紙で、彼女が「あなたは時々子供のようね」と言ったことが刺激になり、30ほどの「小さくて滑稽な曲」ができたと伝えています。そこから13曲を選んで『子供の情景』としました(日本語版Wikipediaは12曲と記す)。当時クララとは、彼女の父ヴィークの猛反対で結婚の見通しが立たない時期にありました。題名は完成後に添えられた「演奏のための繊細なヒント」にすぎず、元の題は『やさしい小品』や『子供の物語』でした。子供のために書かれたのではなく、大人が子供時代を回想するための作品という点を作曲者自身が語っています。選に漏れた曲は後に作品99と124に回されました。曲そのものがクララへの献呈や直接の描写だと断言できる一次資料は、確認できていません。 ## 出版・初演 出版は1839年です(日本語版Wikipediaは「1839年2月、ライプツィヒのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社」と記すが、本文中に「翌年2月」とも書かれ、記述に揺れがあります)。初演は未確認です。完全な自筆譜は現存が知られていません。 ## 題名・通称の由来 Träumereiはドイツ語で「夢想・白日夢」です。曲集の各題は作曲後に付けられたもので、シューマンは「演奏と解釈への繊細なヒントにすぎない」と述べました。原題は『Leichte Stücke(やさしい小品)』、さらに『Kindergeschichten(子供の物語)』という案もありました。 ## 構成分析 - 全体の枠組み: ヘ長調、4/4拍子、約2分半です。『子供の情景』第7曲で、前曲の活気から一転して静かな夢想的世界に入ります。 - 主要素材: 4小節の旋律が上昇・下降を描き、それが8回現れるが、そのたびに和声づけが変わります。中声部の動きが幻想的な響きを作ります。 - 拍節感: 1拍目に強いアクセントを置かず、4拍子の拍節を意図的にぼかして浮遊感を出しています。 - 小節ごとの形式区分: A-B-A'といった区分は、参照した出典では確認できませんでした(未確認)。 ## 音楽的特徴 旋律は4度跳躍(ハ音からヘ音)で始まり、同じ4小節の旋律が繰り返されるたびに和声が塗り替えられます。中声部で複雑な和声進行を作り、幻想的な響きを得るのはシューマンの常套手段で、本曲が最も効果をあげた例とされます。拍頭の強調を避けて拍節を曖昧にし、夢のような質感を出しています。第8曲「暖炉のそばで」も同じ4度跳躍で始まり、動機の共通性が指摘されます。 ## 演奏のポイント 技術的難所は少ないが、8回の旋律反復をどう描き分けるかが、演奏者の力量の見せどころです。旋律線を歌わせつつ内声を濁らせずに動かし、拍節をぼかしても流れを失わない工夫が要ります。 ## この音源について - 演奏: ヴィキングル・オラフソン(ピアノ) - アルバム: From Afar - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 小品を集めた構成のプログラムを、スタインウェイのグランドピアノと、弦にフェルトを挟んだアップライトの二通りで弾く2枚組のコンセプト・アルバムです。着想の一つは、オラフソンが若い頃に弾いたアップライトの記憶だといいます。「トロイメライ」を含む全曲をフェルト入りのアップライトでも再録音しており、評者はこの曲がその音で特に心に響くと書いています。この動画はグランドピアノ版です。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - Song of Love(1947): 映画の冒頭と終わりの音楽主題として使われています(キャサリン・ヘプバーンが演奏)。邦題は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Kinderszenen - Träumerei(トロイメライ)(1944): シューマン夫妻を描いたドイツの伝記映画で、題名に曲名を採用しています。劇中での使われ方は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Kinderszenen - 転校生(公開年未確認): オープニングとエンディングのモノクロ場面で、オーケストラ編曲版(編曲:八田耕治、朝比奈隆指揮・大阪フィル)を使用しています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E6%83%85%E6%99%AF - かがみの孤城(アニメ映画)(公開年未確認): 孤城の暖炉の間にある大型ディスクオルゴールの曲として使われています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E6%83%85%E6%99%AF ## CM - Raymond(インドの衣料ブランド)の広告キャンペーン『The Complete Man』のテーマ音楽: 年未確認 https://en.wikipedia.org/wiki/Kinderszenen ## トリビア - 30曲ほど書かれた中から13曲だけが選ばれ、残りは後に作品99と124として世に出ました。 - リストはこの曲集に感激し、「生涯最大の喜び」と手紙に書き、娘のために週に2、3回は弾いていると伝えました。 - ロシアでは、この曲のハミング合唱版が戦勝記念日の黙祷の時間に流される追悼音楽として知られます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Kinderszenen - https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E6%83%85%E6%99%AF - https://enc.piano.or.jp/en/musics/21507 - https://imslp.org/wiki/Kinderszenen,_Op.15_(Schumann,_Robert) - https://andantemoderato.com/schumann-kinderszenen-horowitz/ --- # 愛の夢 第3番 - 英題: Liebesträume — Notturno No.3, S.541 - 作曲者: リスト(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1850年出版(原曲の歌曲は1840年代) - 作品番号: S.541-3 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/liebestraum-3.html 歌曲を原曲とする、豊かな旋律と広い音域の伴奏の組み合わせです。2つのカデンツァが3つの部分を分けます。 ## 作曲の経緯 『愛の夢』は、もとは別々に書かれた3つの歌曲を、リスト自身がピアノ独奏用に改作したものです。第1番は『高貴な愛』S.307、第2番は『私は死んだ』S.308です(どちらもウーラント詩、1849年作曲)。第3番の原曲は、フライリヒラートが1829年に書いた詩『おお、愛しうる限り愛せ』に付けた歌曲S.298です。英語版Wikipediaによれば、リストは詩の最初の4節を1843年に曲にしました。成立年は資料により1843年・1845年・1847年と揺れがあり、確定できていません。1850年、3曲は『3つの夜想曲』という副題のもとに、高声用の歌曲集と2手ピアノ版が同時に出版されました。ウーラントの2編が聖なる愛と官能の愛を、フライリヒラートの詩が成熟した無条件の愛を描くという3曲組の構想が、この改作で示されました。ショパンの夜想曲に触発されたとする解説もありますが、一次的裏付けは未確認です。 ## 出版・初演 1850年にピアノ独奏版と高声歌曲版が同時に出版されました(IMSLPの出版社表記はKistner)。原曲の歌曲S.298は初版1847年とする記述もあり、年代に揺れがあります。初演は未確認です。 ## 題名・通称の由来 Liebesträumeはドイツ語で「愛の夢」です(複数形)。リスト自身は各曲を「Notturno(夜想曲)」と呼びました。3曲は愛の3つの形(高貴な愛、官能的な愛、無条件の成熟した愛)を描きます。第3番の原詩の題『O lieb, so lang du lieben kannst』は「愛しうる限り愛せ」の意です。 ## 構成分析 - 第1部(A-A'-B): 変イ長調で、長く保たれる旋律の周りを分散和音が囲みます。単純な主旋律が6小節で提示され、2回目は動きが増します。続く部分はpoco crescendo ed agitatoで緊張を高めます。 - 第1カデンツァ: 上行して下行する速い走句で、夢への移行を表すと解説されます。 - 第2部(クライマックス): 主旋律がロ長調に現れ、次いでハ長調へと進み、最後に変イ長調へ戻ります。右手のオクターヴと分散和音で頂点に達します。 - 第2カデンツァ: 鍵盤の高音域から下降して緊張が解け、夢から現実へ戻る場面とされます。 - 終結部(再現とコーダ): 変イ長調で主旋律が回帰します。dolceで、哀愁を帯びて静かに消えてゆきます。演奏時間は約4分50秒です。 ## 音楽的特徴 変イ長調、4つのフラットです。1つの旋律が全曲を通して変奏されながら現れます。旋律は長音で保持され、逆向きの符尾の分散和音が周囲を流れるため、旋律を浮かび上がらせることが要となります。2つのカデンツァが3つの部分を分け、ロ長調やハ長調など遠隔調への転調が緊張を生みます。第1番と同じ調で、第2番(ホ長調)は変イ長調と増5度の関係にあり、3曲組全体の対比が際立ちます。 ## 演奏のポイント 旋律を内声や分散和音から浮かび上がらせるタッチの分離が最大の課題です。カデンツァは高度な運指と技術を要します。 ## この音源について - 演奏: ラン・ラン(ピアノ) - アルバム: Liszt – My Piano Hero - レーベル: Sony Classical - 録音: 2011年4月23〜28日(ソロ曲) - 録音場所: テルデックス・スタジオ(ベルリン) 2011年のリスト生誕200年にあわせたアルバムです。ソロ曲は同年4月にベルリンのテルデックス・スタジオで録音され、ピアノ協奏曲第1番はゲルギエフ指揮ウィーン・フィルと6月にウィーン楽友協会で収録されました。発売は8月19日です。「愛の夢第3番」はソロ曲の一つです。タイトルの「ピアノの英雄」は、ランランが幼少期からリストを憧れの存在としてきたことを表します。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 同じ1850年に、歌曲版と独奏版の2種類が同時に出版されました。 - 第1番と第3番は同じ変イ長調ですが、第2番はホ長調で増5度離れており、この不安定な関係は意図的と解釈されます。 - 原詩『O lieb, so lang du lieben kannst』は1829年の作で、墓前で悔やむ人を描きます。曲はこの詩の反復句を旋律の核としています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Liebestr%C3%A4ume - https://de.wikipedia.org/wiki/Liebestr%C3%A4ume - https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E3%81%AE%E5%A4%A2 - https://en.wikipedia.org/wiki/O_lieb,_so_lang_du_lieben_kannst - https://www.pianotv.net/2016/08/liszt-liebestraume-musical-journey/ - https://imslp.org/wiki/Liebesträume,_S.541_(Liszt,_Franz) - https://en.wikipedia.org/wiki/Gy%C3%B6rgy_Cziffra_discography --- # 亜麻色の髪の乙女(前奏曲集第1巻 第8曲) - 英題: La fille aux cheveux de lin (The Girl with the Flaxen Hair) - 作曲者: クロード・ドビュッシー(近代(印象派)) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1909末〜1910(完成は1910年1月15〜16日) - 作品番号: 未確認 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/flaxen-hair.html 素朴な旋律と淡い響きで、詩の中の金髪の娘を描いた前奏曲集屈指の小品です。五音音階の素朴さと、淡い和声が寄り添うところがたまらなく魅力的です。 ## 作曲の経緯 1909年末から翌年初めにかけて書かれた前奏曲集第1巻の一曲で、1910年1月15〜16日に仕上がりました。題名はルコント・ド・リールが1852年の『古代詩集』に収めたスコットランド風の詩から取られています。ドビュッシーは1882〜84年にも同じ題の歌曲を書いていますが、旋律面の関係はごく薄いとされます。当時の複雑な書法とは対照的に、初期の素朴な和声に立ち返った点が珍しいです。第1巻は1910年4月に出版され、6月2日にロンドンのベヒシュタイン・ホールでフランツ・リービヒが初演しました。7月にはウォルター・ルンメルが米国で、翌1911年1月にはリカルド・ビニェスがパリで弾きました。 ## 出版・初演 1910年4月、前奏曲集第1巻の一曲として出版されました(出版社名は未確認)。 ## 題名・通称の由来 ルコント・ド・リールの詩「La fille aux cheveux de lin」(『古代詩集』所収)に由来します。金髪の娘を牧歌的なスコットランドの情景に置いた内容です。 ## 構成分析 - 冒頭主題: 3音の短い動機で始まり、終止は変格(プラガル)進行です。 - 第2の旋律(5〜6小節): スコットランドの民謡やグリーグ風とも評される旋律が現れます。 - 頂点(19〜22小節): クレッシェンドで盛り上がり、第22小節の終わりで頂点に達します。 - ドローン風の部分(24〜27小節): 弱音で、平行して動く持続音的な響きが続きます。 - コーダ: 冒頭主題が1オクターヴ上で戻り、変ト長調の和音で静かに閉じます。 ## 音楽的特徴 五音音階と全音階和声、旋法的な終止を組み合わせ、民謡のような素朴さを生んでいます。変格終止的な響きを多用し、旋律は順次進行と跳躍を交互に使います。第1巻の中でも技巧的に平易な部類で、荒れた第7曲「西風の見たもの」の直後に置かれ、対照が際立ちます。 ## 演奏のポイント 和音の連なりを重くせず、旋律を歌わせるのが第一です。頂点へ向かうクレッシェンドを丁寧に作り、その後のドローン風の部分は音を薄く保つと、冒頭主題の再現が生きます。ペダルは響きを濁さない程度に使います。 ## この音源について - 演奏: アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(ピアノ) - アルバム: Debussy: Préludes, Book 1 - レーベル: Deutsche Grammophon(413 450-2) - 録音: 1978年6月 - 録音場所: ハンブルク・ムジークハレ(検索結果の要約による。一次資料は未確認) ミケランジェリのドビュッシー『前奏曲集第1巻』は1978年6月に録音され、DGから1984年に発売されました。録音を極端に絞り、完璧主義で知られたこの巨匠にとって、録音自体が出来事とされます。批評では、細部まで磨いた音色の制御と静けさが評価されています。『亜麻色の髪の乙女』は第8曲です。セッションの具体的な逸話は確認できませんでした。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ドビュッシーの作品の中でも特に録音の多い曲の一つとされます。 - 親友のアルチュール・ハルトマンが、出版の翌月にヴァイオリンとピアノ用の編曲を発表しました。 - 前奏曲集第1巻の第6〜8曲は、静・激・穏の対照を作る配置になっていると評されます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/La_fille_aux_cheveux_de_lin --- # アラベスク第1番(2つのアラベスクより) - 英題: Arabesque No. 1 (Deux arabesques) - 作曲者: クロード・ドビュッシー(近代(印象派の初期)) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1888〜1891頃(2曲の作曲期間) - 作品番号: L. 66(第1番) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/arabesque-1.html 流れる装飾的な音型と柔らかな和声が特徴の、若きドビュッシーによる初期ピアノ曲です。唐草模様という題名も素敵です。流れる音型の曲線を、耳でなぞるように楽しめます。 ## 作曲の経緯 2つのアラベスクは、ドビュッシーが20代だった1888年から1891年の間に書かれたピアノ曲で、作曲の細かい経緯は今回の出典では確認できていません。印象派的な語法の初期の例とされ、旋法や調の間をさまよいながら情景を描く点に後の作風の萌芽があります。ドビュッシーはアラベスクを自然の法則にかなった曲線と捉えていたとされ、同時代のアール・ヌーヴォーが自然の形を讃えたことと響き合います。出版はデュラン社から、初版は1891年11月、第2版は1904年に出ました。 ## 出版・初演 デュラン社、初版1891年11月、第2版1904年です。 ## 題名・通称の由来 アラベスク(唐草模様)に由来します。ドビュッシーは、自然の理にかなった曲線の美を音楽に重ねました。 ## 構成分析 - A部: 第1転回形の三和音を平行に動かす書き出しです。続いて左手のアルペッジョと右手のホ長調五音音階の下降が続きます。 - B部: やや静かなイ長調です。E–D–E–C♯の動機で始まります。 - B部の終わり: 同じ動機をハ長調に移してフォルテで力強く示します。 - A部の再現: 途中で高音域へ移って下り、五音音階の大きな上行・下行を経てホ長調に戻ります。 ## 音楽的特徴 和音の平行移動や五音音階を使い、調性感を柔らかく揺らします。流れる装飾的な音型が全体を貫き、アラベスクの名にふさわしい曲線的な線を描きます。 ## 演奏のポイント 細かい音型を均一に流しつつ、各部の性格の違いを出すことが大切です。B部の静けさと、ハ長調に移る箇所のフォルテとの落差を明確にすると、再現部がより華やぎます。 ## この音源について - 演奏: エレーヌ・グリモー(ピアノ) - アルバム: Memory - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 2017年12月(検索結果の要約による) - 録音場所: ミュンヘンのヒンメルファールツ教会(スタジオではなく教会。要約による) 2018年9月発売の『Memory』は、記憶とは何かを静かに見つめる小品集です。ショパン、ドビュッシー、サティ、シルヴェストロフの短い曲を並べ、グリモーはこれを時間をとらえた結晶のような小品の連なりと表現しました。個人的な思い出ではなく、誰もが持つ意識としての記憶を探る意図だと語っています。音楽家ニティン・ソーニーが、この音に即興を重ねた続編『Memory Echo』も制作しました。『アラベスク第1番』は2曲目に置かれています。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - All About Lily Chou-Chou(リリイ・シュシュのすべて)(2001): 劇中で使われたドビュッシー作品の一つです(場面は未確認)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Two_Arabesques ## トリビア - 第1番は、Star Gazers という番組のテーマ曲に使われました。 - 1974年の富田勲のアルバム『Snowflakes Are Dancing』にも収められています。 - 出版はデュラン社から2度行われました(1891年と1904年)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Two_Arabesques - https://imslp.org/wiki/2_Arabesques_(Debussy,_Claude) --- # 平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番 前奏曲 ハ長調 - 英題: Prelude in C major, BWV 846 (The Well-Tempered Clavier, Book 1) - 作曲者: ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(バロック) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1722 - 作品番号: BWV 846 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/prelude-bwv846.html 分散和音だけで織られた、平均律第1巻の幕開けの前奏曲です。グノーのアヴェ・マリアの土台としても知られる、静かで澄んだ名曲です。同じ形の分散和音なのに、和声が変わるだけでこんなに表情が生まれるのですね。 ## 作曲の経緯 この前奏曲は、バッハが1722年にまとめた『平均律クラヴィーア曲集』第1巻の冒頭を飾る曲です。全24の調を使って前奏曲とフーガの組を並べるという構想の最初の一歩にあたり、鍵盤楽器で全調が弾けるように調律された状態を前提にしています。曲は全35小節で、ほとんどが分散和音だけで組み立てられており、旋律らしい旋律はなく、和声の移ろいそのものが音楽になっています。この簡素さが、調性の世界へ入っていく導入にふさわしいと受け取られてきました。なお、制作の細かな経緯や自筆譜に関する詳細までは今回の調査では確認できていません。 ## 出版・初演 生前の出版は未確認です(第1巻は1722年の編纂として知られます)。 ## 題名・通称の由来 「平均律」は曲集全体の題名で、全24の調による前奏曲とフーガを収めることに由来します。 ## 構成分析 - 冒頭(1小節〜): ハ長調の主和音を分散和音で示して始まります。 - 中間部: 和音の連なりで転調を重ね、緊張感を高めていきます。 - 終結部: 主音の保続音の上で和音が静かに収束します。 ## 音楽的特徴 ほぼ全体が分散和音の同じ形の繰り返しで、旋律線が目立ちません。そのぶん和声の色合いの変化がはっきり聞こえます。全35小節と短く、鍵盤楽器の入門から鑑賞まで幅広く親しまれています。 ## 演奏のポイント 音を均等に保ちつつ、和声が変わる箇所で響きの色を少し変えると流れが生きます。ペダルの使い方で響きの濁りを避けつつ、息づかいを感じさせたいです。 ## この音源について - 演奏: グレン・グールド(ピアノ) - アルバム: Bach: The Well-Tempered Clavier, Book 1, Preludes and Fugues 1–8 - レーベル: Columbia Masterworks(現Sony Classical) - 録音: 1962年(第1巻全体は1962〜65年) - 録音場所: コロムビア30番街スタジオ(ニューヨーク) グールドの平均律第1巻は1962年から1965年にかけて、ニューヨークのコロムビア30番街スタジオで少しずつ録音されました。第1番(BWV846)のセッションは1962年6月7日、9月7日、9月20〜21日に行われたと記録されています。同じ日程で第2番も録られており、曲ごとに日を改めて録り直す作業だったことがわかります。第1〜8番を収めたLPは1963年に発売されました。プロデューサー、使用ピアノ、受賞などは確認できませんでした。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。動画が上記LP原盤かリマスター盤かは未確認です。) ## トリビア - グノーはバッハの前奏曲をほとんど変えずに伴奏として使い、その上に旋律を重ねました。 - グノー作品は最初ヴァイオリン独奏の旋律で出版され、のちにラテン語詞が付いて広まりました。 - 前奏曲は全35小節という短さです。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Prelude_and_Fugue_in_C_major,_BWV_846 - https://en.wikipedia.org/wiki/Ave_Maria_(Bach/Gounod) --- # 亡き王女のためのパヴァーヌ(ピアノ原曲) - 英題: Pavane pour une infante défunte (Pavane for a Dead Princess) - 作曲者: モーリス・ラヴェル(近代(印象派)) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1899 - 作品番号: M. 19 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/pavane.html 古い舞曲の趣と静かな哀感を湛えた、ラヴェル初期の代表的ピアノ小品です。 ## 作曲の経緯 1899年、ラヴェルがパリ音楽院でフォーレに学んでいた時期に書かれたピアノ独奏曲です。パトロンのポリニャック大公妃に献呈され、出版は1900年にウジェーヌ・ドゥメが手がけました。当初はあまり注目されなかったが、1902年4月5日にリカルド・ビニェスが初演すると、次第に人気を集めました。ラヴェル自身は後年、シャブリエの影響が明白で形式も貧しいと冷静に批評しています。1910年には自ら管弦楽に編曲し、1911年2月にマンチェスターでヘンリー・ウッドの指揮により初演されました。 ## 出版・初演 1900年、ウジェーヌ・ドゥメ社です。 ## 題名・通称の由来 ラヴェルは、昔のスペイン宮廷で幼い王女が踊ったかもしれないパヴァーヌの情景だと説明しました。一方で、題は語の響きが気に入って付けただけだとも語っています。特定の王女の追悼ではありません。 ## 構成分析 - 全体像: 楽章・部分ごとの詳細な構成は出典で確認できませんでした(未確認)。 ## 音楽的特徴 古風でほぼ素朴な和声と、抑えた表情、どこか遠い旋律の美しさが特徴です。演奏時間は約6〜7分で、後に管弦楽版も書かれ、ホルンが主旋律を担います。 ## 演奏のポイント ラヴェルは非常に遅いテンポを想定していたとされますが、重く引きずる演奏は好みませんでした。「死んだパヴァーヌ」ではなく「死んだ王女のためのパヴァーヌ」だと本人が語った逸話があり、舞曲の歩みを保つ意識が要ります。 ## この音源について - 演奏: チョ・ソンジン(ピアノ) - アルバム: Ravel: The Complete Solo Piano Works - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認(映像はジーメンス・ヴィラで2024年秋に撮影) - 録音場所: 未確認 チョ・ソンジンは2015年ショパン国際コンクールの優勝後にDGと契約し、2025年のラヴェル生誕150年にあわせて、ピアノ独奏曲全集と2曲の協奏曲を録音する企画を進めました。全集は2025年1月17日に配信と2枚組CDで先行発売、協奏曲はボストン響・ネルソンスと組み、2月に発売されました。チョは子供の頃からラヴェルを愛し、楽譜の指示が非常に細かく、全部は守りきれないが最善を尽くすと語っています。この動画がアルバム音源そのものかは確認できていません。 (音源の投稿元(DG公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ラヴェル自身は、初演者の演奏を評した批評で、この曲の欠点を率直に述べました。 - 1910年の管弦楽版では、2本の「単純なホルン(ナチュラルホルン)」を指定しています。 - 1932年の録音は長く本人指揮とされたが、実際はペドロ・デ・フレイタス・ブランコの指揮でした。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Pavane_pour_une_infante_d%C3%A9funte --- # ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作(レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ) - 英題: Nocturne No. 20 in C-sharp minor, Op. posth. (Lento con gran espressione) - 作曲者: フレデリック・ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1830 - 作品番号: 遺作(B.49 / KK IVa-16 / WN 37) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/nocturne-20.html ウィーン到着直後の1830年、姉のために書かれたノクターンです。協奏曲の断片を引用した回想的な小品で、映画『戦場のピアニスト』の冒頭でも流れます。 ## 作曲の経緯 1830年、ショパンが故郷ワルシャワを離れてウィーンに着いた直後に書いた作品です。姉ルドヴィカに送られ、「第2協奏曲に取り組む前の練習に」という趣旨の献辞が添えられたと伝わります。実際、中間部にはピアノ協奏曲第2番の終楽章の主題や第1楽章の第2主題の断片、さらに歌曲「乙女の願い」の旋律が織り込まれ、姉の愛した曲への思い出の引用になっています。ポーランドで十一月蜂起が起きた時期と重なるため、望郷の念の表れと見る向きもありますが、曲の軽やかさから蜂起の報を知る前の作とする見方もあり、決着していません。ルドヴィカは「夜想曲風のレント」として整理しており、後にノクターンとして扱われるようになりました。 ## 出版・初演 作曲者の死後の1875年に出版されました。伝記作家シュルツが手稿を見つけ、ライトゲーベルが出版しました。初版の題は「アダージョ」です。 ## 題名・通称の由来 ショパン自身は『ノクターン』とも番号とも付けていません。遺作として刊行された初版の題は『アダージョ』で、姉ルドヴィカの整理(夜想曲風のレント)を通じてノクターンとして定着し、通称の『レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ』は楽譜の速度標語に由来します。『追憶(Reminiscence)』の別名は望郷の曲とする解釈に基づきます。生前出版のノクターンは18曲で、本作は含まれず『第20番』は後世の通し番号です。 ## 構成分析 - 序奏(1〜4小節): 静かな導入のあと、5小節目から主要旋律が始まります。 - 主部A: 左手の流れるアルペジオの上で、息の長い歌が展開します。 - 中間部B: 協奏曲第2番(第3楽章の主題・第1楽章の第2主題)と歌曲「乙女の願い」の断片を引用します。 - 再現A': 冒頭の主題が戻り、最後は嬰ハ長調の和音で静かに閉じます。 ## 音楽的特徴 哀愁をおびた旋律がゆったりした左手のアルペジオに乗って歌われ、ショパンの初期ノクターンの特徴をよく示します。後半では協奏曲や歌曲からの引用が次々に現れ、郷愁を帯びた回想のような趣を生みます。最後は短調の曲でありながら長調の和音で結ばれ、悲しみの中にかすかな救いが残ります。技巧的には、中間部の細かな装飾音形がやや目立つ程度で、全体として演奏のしやすさと表現の深さを両立しています。 ## 演奏のポイント 主旋律を歌わせるには、左手のアルペジオを小さな音量で保つことが肝心です。中間部は引用が連なるので、各断片の表情を弾き分けつつも流れを止めません。テンポを揺らしすぎず、最後の和音を静かに響かせます。 ## この音源について - 演奏: ヤン・リシエツキ(ピアノ) - アルバム: 推定: Chopin: Complete Nocturnes - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 2020年10月(日は未確認) - 録音場所: ベルリン、マイスタージンガー・ザール 全集盤はリシエツキのDGでの8枚目のアルバムで、ショパン録音としては3作目です。コロナ禍の合間の約1週間をこの録音に充て、本人は「最もリラックスして楽しめたセッション」と語っています。ピアノ技術者はダニエル・ブレヒ、プロデューサーはシュテファン・フロックで、長年の協力関係にあります。2021年8月13日発売です。なおこの動画が全集盤のトラックかは確認できていません。 (音源の投稿元(Jan Lisiecki - Topic)はoEmbedで確認済みです。どの盤のトラックかは未確認です。) ## 映画・ドラマ - 戦場のピアニスト(2002): 冒頭のワルシャワのラジオ局の場面と、戦後にラジオへ復帰する場面で使われたとIMDbのFAQにあります。ドイツ軍将校ホーゼンフェルトの前で弾くのは本曲ではなくバラード第1番です。 https://en.wikipedia.org/wiki/The_Pianist_(2002_film) ## トリビア - 実在のピアニスト、シュピルマンは1939年9月23日のポーランド放送で本曲を弾いている最中に、空襲で放送が中断されたと伝えられます(Wikipedia)。 - 1894年10月17日、ジェラゾヴァ・ヴォラでのショパン記念碑除幕を祝って、バラキレフが演奏したとされます。 - 手稿はスペイン・バルデモサのカルトゥハ修道院に所蔵されています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Lento_con_gran_espressione - https://en.wikipedia.org/wiki/The_Pianist_(2002_film) - https://m.imdb.com/title/tt0253474/faq - https://s10.imslp.org/wiki/Nocturne_in_C-sharp_minor,_B.49_(Chopin,_Fr%C3%A9d%C3%A9ric) --- # ピアノソナタ第8番「悲愴」 第2楽章 - 英題: Piano Sonata No. 8 in C minor, Op. 13 "Pathétique" II. Adagio cantabile - 作曲者: ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(古典派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1798(出版は1799) - 作品番号: Op. 13 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/pathetique-2.html 激しい両端楽章の間で、歌うような旋律が静かに広がる緩徐楽章です。ベートーヴェンの優しさが最も親しまれた形で表れる一曲です。 ## 作曲の経緯 ピアノソナタ第8番ハ短調は、ベートーヴェンが27歳だった1798年に書かれ、1799年に出版されました。「悲愴」という題は、出版社がこの曲の悲劇的な響きに感銘を受けて付けたもので、作曲者自身の命名と思われがちですが、題名を気に入ったのはベートーヴェンだったと説明されています。作品はリヒノフスキー侯爵に献呈されました。第2楽章は「アダージョ・カンタービレ」で、歌うような旋律が最も有名な部分です。映画や広告、ゲームなどでも使われ、大衆文化にも広く浸透しているとされます。ただし個別の使用例の出典は今回確認できていません。 ## 出版・初演 1799年です。 ## 題名・通称の由来 出版社が命名した「グランド・ソナタ・パテティーク」に由来します。作曲者も気に入ったとされます。 ## 構成分析 - 主部A: 歌うような主旋律が静かに現れます。 - 中間部: やや動きのある部分で気分を変えます。 - 主部の回帰: 旋律が戻り、穏やかに結ばれます。 ## 音楽的特徴 歌うような旋律が全体を貫く、ソナタ中で最も親しまれている緩徐楽章です。激しい両端楽章とは対照的に、安らぎと温かさを湛えています。 ## 演奏のポイント 旋律を長く保って歌わせ、内声の伴奏を出しすぎないようにします。ペダルで音を濁らせず、息の長いフレーズを保つことが肝心です。 ## この音源について - 演奏: ダニエル・バレンボイム(ピアノ) - アルバム: 推定: Beethoven: 33 Metamorphoses – Complete Piano Sonatas & Diabelli Variations - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 2020年(5月とされる。2020年版の場合) - 録音場所: ベルリン、ピエール・ブーレーズ・ザール(2020年版の場合) 2020年版である場合の記述です。ベートーヴェン生誕250年の2020年、バレンボイムはコロナ禍で演奏会が中止になって約3か月ピアノに専念できたことを契機に、ソナタ全32曲とディアベッリ変奏曲をピエール・ブーレーズ・ザールで録音しました。本人にとって全集は5度目で、「ゼロから取り組みたい」と語りました。13枚組のCDは2020年10月30日に発売されました。バレンボイムはDGで1980年代にも全集を録音しており、動画がどちらの音源かは確認できていません。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。どの盤のトラックかは未確認です。) ## トリビア - 題名は出版社が付けたが、ベートーヴェンの好みに合ったとされます。 - 作曲時、ベートーヴェンは27歳でした。 - 献呈先はリヒノフスキー侯爵です。 ## 出典 - https://sin80.com/en/work/beethoven-piano-sonata-8-pathetique-op13 - https://www.classicals.de/beethoven-piano-sonata-no8 --- # ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331 第1楽章(主題と6つの変奏) - 英題: Piano Sonata No. 11 in A major, K. 331 (300i), I. Andante grazioso (Theme and Variations) - 作曲者: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(古典派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1783年頃(1784年出版) - 作品番号: K.331 / 300i - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/k331-1.html ソナタの幕開けに変奏曲を置いたモーツァルトの異色作です。ゆれるシチリアーナ風の主題が6通りに姿を変え、第3楽章のトルコ行進曲へ続きます。同じ主題が次はどんな姿を見せるのでしょうか。6つの変奏には、そんな発見があります。 ## 作曲の経緯 長らく1778年のパリ滞在中の作とされてきたが、近年の研究で1783年ごろのウィーン時代の作と見られています。1784年にウィーンのアルタリア社から、第10番K.330・第12番K.332とともに出版されました。ソナタ形式の楽章を持たず、冒頭に変奏曲、次にメヌエット、最後にトルコ風のロンドを置く異例の並びで、全楽章がイ長調かイ短調で統一されています。2014年にはブダペストの国立セーチェーニ図書館で第1・第2楽章部分にあたる自筆譜4ページが見つかり、同年コチシュが初演奏しました。1783年はウィーンがトルコ軍の包囲を退けて100年の節目にあたり、終楽章のトルコ趣味にはその世相が映るとする見方もあります。 ## 出版・初演 1784年、アルタリア社です(ウィーン)。K.330、K.332と同時に出版されました。 ## 題名・通称の由来 通称「トルコ行進曲付き」は第3楽章にモーツァルト自身が付けた「Alla turca(トルコ風に)」の指示に由来します。トルコ軍楽隊(イェニチェリ)の響きを模したもので、第1楽章自体に愛称はありません。 ## 構成分析 - 主題(Andante grazioso): 8小節+10小節それぞれにリピートが付く2部構成です。この枠組みが全変奏で保たれます。 - 第1・第2変奏: 上声の装飾、続いて3連16分音符の伴奏上での旋律装飾です。 - 第3変奏: イ短調に転じ、音階的な装飾が続きます。第3楽章の動機との近さも指摘されます。 - 第4・第5変奏: 第4は手の交差を伴う華やかな変奏です。第5は初めてAdagioに落とし、細かな装飾を加えます。 - 第6変奏: 4/4拍子のAllegroに変わり、終結部の役割を果たします。 ## 音楽的特徴 ソナタの冒頭楽章に変奏曲を置いたため、典型的な急速なソナタ形式の幕開けを避けた作品となりました。主題はゆれるシチリアーナ風の6/8で、変奏が進んでも8小節+10小節の形は変わらず、短調への転換、手の交差、遅いテンポの変奏、速い終結変奏と、表情だけが次々に変わります。第3楽章のトルコ行進曲の人気に隠れがちですが、全体の入口として穏やかな性格を担います。 ## 演奏のポイント 主題はなだらかな拍の揺れを保ち、装飾音は旋律の流れを壊さないよう軽く弾きます。第3変奏の短調は音色を変えて陰影をつけ、第5変奏のAdagioは歌い込み、第6変奏で一気にテンポを上げるテンポ対比を明確にします。繰り返しでは装飾を加えるかどうかも考えどころです。 ## この音源について - 演奏: 内田光子(ピアノ) - アルバム: Mozart: The Piano Sonatas(5CD、Philips 468 356-2) - レーベル: Philips - 録音: 1983〜1987年(月日は未確認) - 録音場所: ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン) 内田光子が1980年代にロンドンのヘンリー・ウッド・ホールで録音したモーツァルトのピアノ・ソナタを5枚にまとめたセットで、ソナタ全曲と幻想曲ハ短調K.475を収めます。MusicWebの評者は、軽やかさと繊細さ、人工的な残響のない自然なピアノの音を称賛し、押しつけがましくない演奏と述べています。K.331とK.332のみを収めた単独盤も別に存在します。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。このトラックが上記セットのものかは、演奏者からの推定です。) ## トリビア - 第1楽章の主題は、マックス・レーガーが1914年の管弦楽曲《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》に用いました。 - ブルーベックの《ブルー・ロンド・ア・ラ・トルク》(1959)は、この終楽章を元にした曲ではないとされます。 - 第5変奏の最後の3音のリズムは、自筆譜と一般の版で異なる箇所があります。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_Sonata_No._11_(Mozart) - https://enc.piano.or.jp/en/musics/296 - https://imslp.org/wiki/Piano_Sonata_No.11_in_A_major,_K.331/300i_(Mozart,_Wolfgang_Amadeus) --- # 前奏曲第7番 イ長調 Op.28-7 - 英題: Prelude No. 7 in A major, Op. 28 No. 7 - 作曲者: フレデリック・ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1835〜1839(24曲全体の作曲期間) - 作品番号: Op.28-7 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/prelude-7.html 24の前奏曲の第7番です。集中最短で、約45秒の素朴なマズルカ風の小品です。短いが、穏やかな表情に満ちた愛らしい曲です。 ## 作曲の経緯 前奏曲集Op.28は、1835年から1839年にかけて主にパリで書かれ、一部はジョルジュ・サンドらと過ごしたマヨルカ島バルデモサの冬(1838〜39年)に仕上げられました。大半の曲は渡島前にほぼできていたが、ショパンはプレイエルへの手紙で『ここで君の小さなピアノを使って前奏曲を完成させた』と記しています。24曲は5度圏に沿って長調と平行短調を交互に並べる構成で、バッハの平均律集を意識したと言われます。第7番は集中最短で、演奏時間は約45秒です。個々に標題は付けられていないが、マズルカのような趣があるとされます。本曲に関する個別の作曲日や逸話は確認できませんでした。 ## 出版・初演 1839年に出版されました。フランス版(カトラン)と英国版(ウェッセル)、ドイツ版(ブライトコプフ&ヘルテル)で刊行されました。 ## 題名・通称の由来 通称は未確認です(ショパン自身は各曲に標題を付けていません)。日本では『イ長調の前奏曲』のように調で呼ばれることが多いです。 ## 構成分析 - 全体像: 集中最短の小品で、約45秒です。マズルカ風の性格を持ちます。 - 主題: 付点リズムを含む素朴で短い旋律が、穏やかな和声に乗って歌われます。 - 後半: 主題の変化型が現れ、終わりへ向かって静かに収束します。 ## 音楽的特徴 24の前奏曲の中でも特に短く、一息で終わる素朴な小品です。楽譜の見た目もやさしく、和音の連なりが旋律を支える簡潔な書法で、ピアノ学習者にも親しまれます。形式的な展開はほとんどなく、一つの楽想がそのまま小さな世界を作る点にショパンの前奏曲らしさがあります。他の作曲家も本曲を素材に使っています(モンポウ『ショパンの主題による変奏曲』など)。 ## 演奏のポイント 短いため、1音ごとの表情と和音の響きの選び方が全てを左右します。付点リズムは硬くならないよう軽く、マズルカらしい重心の置き方を意識します。弱音で終わりまで気を抜かないことです。 ## この音源について - 演奏: マルタ・アルゲリッチ(ピアノ) - アルバム: Chopin: Preludes, Piano Sonata No. 2 - レーベル: Deutsche Grammophon(463 663-2、Legendary Recordings) - 録音: 1974〜1977年(月日は未確認) - 録音場所: 未確認 Op.28全24曲に、嬰ハ短調Op.45、変イ長調遺作、ソナタ第2番を加えた1枚です。MusicWebは、アルゲリッチ最良のショパン演奏の一つと評し、全曲録音を残さなかった彼女のショパンの中でも重要な録音と位置づけています。同評は第15番「雨だれ」の弾き方や第4番のクライマックスに個人的な異論を述べつつ、全体としての一貫性を称賛しました。DGの「伝説的録音」シリーズ入りした盤です。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。このトラックが上記アルバムのものかは、演奏者とレーベルからの推定です。) ## トリビア - 集中最短の第7番に対し、最長は第17番です(90小節)。 - ショパンは生前、前奏曲を公開の場で4曲より多く弾くことはありませんでした。 - 全曲の初録音は1915年のブゾーニ(ピアノロール)とされます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Preludes_(Chopin) - https://imslp.org/wiki/Preludes_Op.28_(Chopin,_Fr%C3%A9d%C3%A9ric) --- # 16のワルツ Op.39 第15番 変イ長調(ピアノ独奏版) - 英題: Waltz in A-flat major, Op. 39 No. 15 (solo piano version) - 作曲者: ヨハネス・ブラームス(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1865年作曲、1866年出版 - 作品番号: Op.39-15 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/brahms-waltz-15.html ブラームスの16のワルツの中でも最も愛される1曲です。ゆるやかに揺れる旋律が、連弾から独奏に編まれて広く親しまれました。 ## 作曲の経緯 《16のワルツ》Op.39は1865年に作曲され、翌1866年に出版されました。もとはピアノ連弾用で、ブラームス自身が独奏用に難しい版と簡易版の2種を編んでおり、3つの版は同時に出版されて、作曲者の予想に反してよく売れました。当時ウィーンで流行していたワルツへの敬意を示すために書かれたとされ、批評家エドゥアルト・ハンスリックに献呈されました。独奏の難しい版では最後の4曲などで調が連弾版から変えられており、第15番は連弾版ではイ長調、難しい独奏版では変イ長調になります。16曲のなかで最も人気が高い曲となりました。 ## 出版・初演 1866年です(連弾版・独奏難版・独奏簡易版が同時出版)。 ## 題名・通称の由来 曲名はないが、「ブラームスのワルツ」「ブラームスのワルツ第15番」として単独で親しまれます。 ## 構成分析 - 作品集の位置: 16曲の小さなワルツのうち第15番です。連弾版はイ長調、難しい独奏版は変イ長調です。 - 版の違い: ブラームス自身が独奏用に難しい版と易しい版の2つを編曲しました。簡易版はイ長調です。 - 形式: 作品集の大半は、前半が属調などへ向かい、後半が展開風に始まって主題と主調へ戻る反復付き2部形式です。 ## 音楽的特徴 優しくゆれる旋律で知られる、16曲中で最も有名なワルツです。ウィーンの舞曲の流行を背景にした親しみやすい小品で、独奏版は難しい版と簡易版があるため、学習者から演奏者まで幅広く弾かれています。 ## 演奏のポイント 3拍子の1拍目に重心を置きすぎず、旋律を長いフレーズとして歌わせます。内声と左手の和音の厚みでやわらかな揺れを作り、テンポを動かしすぎないことが落ち着きにつながります。 ## この音源について - 演奏: ジュリアス・カッチェン(ピアノ) - アルバム: 未確認(Deccaのカッチェンによるブラームス独奏曲録音) - レーベル: Decca - 録音: 1960年代前半(1962年とする資料があるが、Op.39かは未確認) - 録音場所: Decca Studios, West Hampstead(Prestoの記載。未確認) カッチェンは1961〜65年にDeccaでブラームスのピアノ独奏曲を網羅的に録音しました。Op.39のワルツ集は16曲を前半8曲・後半8曲に分けた形で収録され、第15番変イ長調には、Deccaの配信カタログで「Wiegenlied」と併記される例がありますが、歌曲「子守歌」Op.49-4とは別の作品です。Topicトラックの題は「Wiegenlied」表記です。 (音源の投稿元(Julius Katchen - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 作品集全体を一つの連作として真剣に扱うべきだと、1984年にピアニストのジョゼフ・スミスが評されました。 - 第15番を含む5曲(1, 2, 11, 14, 15番)は、作曲者の死後に2台ピアノ4手版が出版されました。 - 独奏の簡易版では第6番もハ長調に変えられています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Sixteen_Waltzes,_Op._39_(Brahms) - https://www.henle.de/Waltzes-op.-39/HN-1638 - https://imslp.org/wiki/16_Waltzes,_Op.39_(Brahms,_Johannes) - https://classical.music.apple.com/in/recording/johannes-brahms-1833-pp81-1452427383 - https://urresearch.rochester.edu/institutionalPublicationPublicView.action?institutionalItemId=8611&versionNumber=1 --- # 無言歌集 第5巻 Op.62-6「春の歌」 - 英題: Songs Without Words, Book 5, Op.62 No.6 "Spring Song" (Frühlingslied) - 作曲者: フェリックス・メンデルスゾーン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 第5巻の出版は1844年(作曲年は未確認) - 作品番号: Op.62-6 / MWV U 161 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/mendelssohn-spring-song.html 歌詞のない歌をめざした無言歌集の中で最も親しまれる一曲です。明るいイ長調の旋律に春のきざしを重ねた小品です。言葉がないのに歌っているように聞こえるところが、無言歌の大好きな魅力です。 ## 作曲の経緯 無言歌集は1829〜45年に書かれた全8巻48曲のピアノ小品集で、第5巻Op.62は1844年に出版されました。「春の歌」はその最終曲にあたります。英国ではロンドンのカンバーウェル・グリーンで書かれたとされ、「カンバーウェル・グリーン」の名でも呼ばれました。当時は妻の親戚であるベネッケ家に滞在していたと伝わります。第5巻の曲は作曲者自身が連弾にも編み、1844年にヴィクトリア女王へ贈られました。メンデルスゾーンは友人が無言歌に歌詞を付けようとした際、音楽は言葉より曖昧なのではなく、むしろ言葉より明確だと返しています。歌詞なしでも歌のように語りかける、という無言歌の考えを軽やかな旋律で示した一曲です。 ## 出版・初演 第5巻Op.62として1844年に出版されました(無言歌集全体はOp.19〜Op.102の8巻)。 ## 題名・通称の由来 「春の歌」は楽譜冒頭の発想標語(春の歌のように、の意)に由来すると日本語の解説にあります。48曲中、作曲者自身の題と確認できるのは5曲のみで、他は出版社の付題か発想標語由来です。英国での別名「カンバーウェル・グリーン」は作曲地とされる地名からです。 ## 構成分析 - 曲集内の位置: 第5巻(Op.62)の第6曲で、巻の締めくくりです。 - 調と速度: イ長調、Allegretto graziosoです。 - 演奏時間: 約2分半です(PTNA)。 - 技巧上の焦点: 小音符で書かれた装飾的な音型を旋律にどう溶け込ませるかが課題とされます(PTNA)。 ## 音楽的特徴 歌詞のない器楽曲でありながら、歌い手に語らせるような抒情を目指した無言歌の代表作です。明るいイ長調の旋律に、小音符の装飾的な動きが添えられ、春の軽やかさを思わせます。技巧は高度ではなく、アマチュアにも弾きやすいことが曲集全体の人気を支えました。ヴァイオリンやフルートなど他楽器への編曲も多く、日本では駅の発車メロディとしても使われています。 ## 演奏のポイント 小音符の音型を旋律から浮かせず、旋律の一部として滑らかに溶け込ませることが要点です。繊細な技術と感覚が求められるとされます。伴奏は旋律の邪魔をしない軽さを保つとよいです。 ## この音源について - 演奏: ダニエル・バレンボイム(ピアノ) - アルバム: Mendelssohn: Lieder ohne Worte(無言歌集全曲、3LP箱 2740 104) - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1973年6月(パリ)/1973年12月(ロンドン)。Op.62-6がどちらかは未確認 - 録音場所: Studio Europa Sonor(パリ)/ロスリン・ヒル礼拝堂(ロンドン) バレンボイムは1970年代前半にDGで無言歌集を全曲録音し、1974年に3枚組LPとして発売しました。Discogsの注記では、1973年6月にパリ、同年12月にロンドン・ハムステッドのロスリン・ヒル礼拝堂で収録されました。Op.62-6『春の歌』は第5巻にあたり、LP2枚目のB面に入っています。DGはバレンボイムの80歳記念で限定復刻しました。 (音源の投稿元(Daniel Barenboim - Topic)はoEmbedで確認済みです。1974年盤との1対1対応は、題名表記(MWV U161)からの推定です。) ## トリビア - 作曲者自身が題を付けたと確認できる無言歌は48曲中5曲のみです。 - 無言歌という題は、姉ファニーの手紙から、メンデルスゾーン自身の発案らしいとされます。 - 日本では各地の駅の発車メロディにも使われています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Songs_without_Words - https://pedia.3rd-in.co.jp/wiki/%E7%84%A1%E8%A8%80%E6%AD%8C%E9%9B%86%20(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3) - https://enc.piano.or.jp/en/musics/23392 --- # ゴルトベルク変奏曲 アリア - 英題: Goldberg Variations, BWV 988: Aria - 作曲者: ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(バロック) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1741(出版) - 作品番号: BWV 988 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/goldberg-aria.html 30の変奏の出発点となる、優美で静かなサラバンド風の主題です。不眠の伯爵の逸話でも知られる、夜に寄り添う音楽です。 ## 作曲の経緯 ゴルトベルク変奏曲は、1741年にクラヴィーア練習曲集の第4部として出版された、アリアと30の変奏からなる作品です。名前の由来として語られるのは、1802年にフォルケルが伝えた逸話で、ロシア大使カイザーリンク伯が不眠の夜を慰める曲を求め、若い鍵盤奏者ゴルトベルクが演奏した、というものです。ただし出版譜に伯やゴルトベルクへの献呈がなく、当時ゴルトベルクが14歳ほどだったことから、この話の真偽には疑問も出されています。冒頭のアリアは優美で穏やかなサラバンドで、変奏はこのアリアの低音の進行を土台に展開します。 ## 出版・初演 1741年、クラヴィーア練習曲集第4部として出版されました(2段鍵盤のチェンバロ用と表記)。 ## 題名・通称の由来 1802年のフォルケルの伝記に基づく、ゴルトベルクが演奏したという逸話に由来するが、信憑性には疑問があります。 ## 構成分析 - アリア: サラバンド風の主題です。装飾音の多い旋律を持ちます。 - 30の変奏: アリアの低音の進行を土台に展開します。 - アリア・ダ・カーポ: 最後に冒頭のアリアが戻って閉じます。 ## 音楽的特徴 優美で静かな舞曲風の主題で、装飾音に富んだ旋律線が特徴です。変奏全体の出発点であり終着点でもあるため、全曲の枠を作る役割を持ちます。聴く人を穏やかな気持ちにさせる落ち着いた曲想です。 ## 演奏のポイント 装飾音を拍の流れに溶け込ませ、旋律を歌わせることが第一です。繰り返しでの変化の付け方や、テンポの選び方で、印象が大きく変わります。 ## この音源について - 演奏: グレン・グールド(ピアノ) - アルバム: Bach: The Goldberg Variations (1981 Recording)(2015 Remastered) - レーベル: CBS Masterworks(初出MK 37779)/現Sony Classical - 録音: 1981年4月22〜25日、5月12〜16日、5月19日 - 録音場所: コロムビア30番街スタジオ(ニューヨーク) グールドは1955年にデビュー盤として録音したゴルトベルクを、約26年後の1981年4〜5月に同じ30番街スタジオで再録音しました。しばしば深夜まで作業が続き、プロデューサーのサム・カーターが率いるCBSマスターワークスのチームが担当、リチャード・アインホーンも関わりました。ドキュメンタリー撮影のためフランスの映像作家ブルーノ・モンサンジョンも立ち会い、録音にその声が残ります。初出は1982年9月2日で、その約5週間後にグールドは世を去りました。全体は51分18秒で、1955年盤の38分34秒より大幅に長いです。1983年にグラミー賞(最優秀器楽ソロ)を受賞しました。使用ピアノはWikipediaでYamaha CF IIとされます。 (音源の投稿元(SonyClassicalVEVO、題に Official Audio とある)はoEmbedで確認済みです。冒頭のアリアです。) ## 映画・ドラマ - 羊たちの沈黙(1991): レクター博士が独房でアリアを聴く場面です(その後の『ハンニバル』でも使用)。 https://www.opengoldbergvariations.org/discover/silence-of-the-lambs ## トリビア - ゴルトベルクの名は1802年のフォルケルの伝記で結びつけられました。 - 逸話では当時ゴルトベルクは14歳ほどで、話の真偽には疑問があります。 - 『ハンニバル』(2001)ではタイトル曲としても使われました。 ## 出典 - https://www.qub.ac.uk/tomita/essay/cu4.html - https://www.opengoldbergvariations.org/discover/silence-of-the-lambs - https://pure.royalholloway.ac.uk/en/publications/dr-lecters-taste-for-goldberg-or-the-horror-of-bach-in-the-hannib --- # 夢(Rêverie) - 英題: Rêverie - 作曲者: クロード・ドビュッシー(近代(初期)) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1890 - 作品番号: L. 68(L. 76 と表記する資料もある) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/reverie.html ドビュッシー本人は軽視したが、素朴な旋律美で広く愛されるようになった初期の小品です。作曲者の厳しい自己評価と、多くの編曲を生んだ旋律の魅力の両方を知ると、ますます気になる曲です。 ## 作曲の経緯 1890年に書かれた小品です。ドビュッシー自身は1905年、フロモン夫人に宛てた手紙で、出版者ジョルジュ・アルトマンの頼みで急いで仕上げた取るに足らない曲で、出来も悪いと述べ、出版に反対しました。それでも曲は人気を得て、ヴァイオリンとピアノ、連弾、チェロとピアノなど多くの編曲が出ました。確認できる最初の公開演奏は1899年2月27日、ジェルメーヌ・アレクサンドルによるものです。作曲の動機や詳しい経緯は、今回確認できた資料では上記以上は分かりませんでした。 ## 出版・初演 1891年ショードン社、1895年11月16日『ル・イリュストラシオン』付録、1905年フロモン社です。 ## 題名・通称の由来 フランス語で「夢想」を意味する題名です。命名の経緯は未確認です。 ## 構成分析 - 全体像: 小規模な小品です。楽式の詳細は出典で確認できませんでした(未確認)。 ## 音楽的特徴 ハリー・ハルブライヒは、素朴ながらも確かな旋律の魅力を持つ耳に心地よい曲と評しました。単純な旋律美が中心の曲で、そのため多くの楽器へ編曲されています。 ## 演奏のポイント 素朴な旋律を飾らず歌わせる、という以外に出典で確認できた奏法上の指針はありません(未確認)。 ## この音源について - 演奏: エレーヌ・グリモー(ピアノ) - アルバム: Memory - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 2017年12月(検索結果の要約による) - 録音場所: ミュンヘンのヒンメルファールツ教会(要約による) 『夢』は2018年のアルバム『Memory』の13曲目です。静かな小品を、記憶をたどるように順に並べる構成の中に置かれています。グリモーはハイデッガーを引き合いに、記憶とは忘れられたものについて思索することだと序文で語りました。アルバムはドビュッシーとサティのフランス作品を軸に、ショパン、シルヴェストロフ、ニティン・ソーニーの作品を加えています。批評や受賞の個別情報は確認できませんでした。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ウエストワールド(第1シーズン)(2016): 物語の中心的な役割を果たします(場面は未確認)。 https://en.wikipedia.org/wiki/R%C3%AAverie_(Debussy) ## トリビア - ドビュッシー本人は後年この曲を評価しませんでした。 - ラリー・クリントンの曲 My Reverie は、この旋律を転用しています。 - 1970年代後半、冨田勲のシンセサイザー版がフジテレビの放送開始・終了時に使われました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/R%C3%AAverie_(Debussy) --- # グノシエンヌ 第1番 - 英題: Gnossienne No. 1 - 作曲者: エリック・サティ(近代(19世紀末)) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1890 - 作品番号: 未確認 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/gnossienne-1.html 拍子も小節線もない自由な時間の中で、物憂い旋律が揺れます。サティが神秘思想に近づいた時期の、夜に似合う一曲です。 ## 作曲の経緯 グノシエンヌは1890年ごろに作曲され、1893年に出版された3曲の連作で、第1番は1890年の作とされます。当時のサティは、ジョゼファン・ペラダンを通じて薔薇十字の宗派と関わるなど、オカルトや神秘思想に近い環境にいました。楽譜には拍子記号も小節線もなく、自由な時間の流れの中で旋律が進みます。この記譜は、型にはまらない独特の雰囲気を生み、後の作品にも影響を与えたと語られます。第1番は1913年にロラン=マニュエルへ献呈されたとされます。ただし成立事情の細部については、今回の調査では確認できていません。 ## 出版・初演 1893年です(3曲のグノシエンヌとして)。 ## 題名・通称の由来 語源には諸説あります。テセウスがミノタウロス退治を祝って踊ったという迷宮の舞踏を指す語(1865年のラルース辞典)や、グノーシス(認識)に由来するとの説があります。 ## 構成分析 - 冒頭: 左手の伴奏型の上で、物憂げな旋律が現れます。 - 中間部: 旋律の動きが少し変わり、自由な拍で進みます。 - 終結: 静かに音が消えるように閉じます。 ## 音楽的特徴 拍子記号や小節線がない自由な時間感覚の曲です。単純な伴奏型と、東方的とも評される旋律が組み合わさり、夢うつつのような雰囲気を作り出しています。 ## 演奏のポイント 拍を数えすぎず、旋律の息づかいで自然に間を取ります。左手を一定に保ち、右手を歌わせることで、静けさと憂いが保たれます。 ## この音源について - 演奏: パスカル・ロジェ(ピアノ) - アルバム: Satie: 3 Gymnopédies; 6 Gnossiennes etc. - レーベル: Decca - 録音: 1983年5月 - 録音場所: キングスウェイ・ホール(ロンドン) ロジェのサティ集は1983年5月にロンドンのキングスウェイ・ホールで録音され、1984年にDeccaから発売されました。ジムノペディ全3曲とグノシエンヌ全6曲のほか、小品やキャバレー歌曲の編曲も収めた約1時間の1枚です。ロジェはDeccaでラヴェルやプーランクなどフランスものをLP時代から録音していました。Gramophone誌は1984年10月号で、澄んだ冷ややかな音がサティに合い、グノシエンヌが静かで時が止まったように響くと評した一方、マイクが近すぎる点は批判しました。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 楽譜に拍子記号も小節線もありません。 - 語源には諸説あり、決着していません。 - 1893年に3曲がまとめて出版されました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Gnossiennes - https://rtds.jamu.cz/?p=6539 --- # ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2 - 英題: Waltz No. 7 in C-sharp minor, Op. 64 No. 2 - 作曲者: フレデリック・ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1846〜1847 - 作品番号: Op.64-2 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/waltz-64-2.html 哀愁の短調主題と長調の歌がめぐる、後期ショパンの代表的なワルツです。ロスチャイルド夫人に献呈されています。 ## 作曲の経緯 1846年から47年にかけて書かれた、ショパンが生前に発表した最後期のワルツの一つです。Op.64として3曲まとめて1847年にパリのブランデュス社から出版され、第2番は『ナタニエル・ド・ロスチャイルド夫人』に献呈されました。献呈相手はロスチャイルド家の一員で、画家・社交家として知られるシャルロットです。舞曲でありながら実際に踊るためというより、サロンで聴くためのピアノ曲として書かれています。個別の逸話は多くは確認できませんでした。 ## 出版・初演 1847年、パリのブランデュス社(Brandus et Cie)から出版されました(Op.64として3曲)。 ## 題名・通称の由来 通称は確認できませんでした。日本では『第7番』の番号で呼ばれ、『小犬のワルツ』(Op.64-1)と並んで知られます。 ## 構成分析 - 主題A: テンポ・ジュストの和音的な旋律です。歩くような感触の短調の主題です。 - 主題B: より速く(più mosso)、8分音符の流れの中で進みます。 - 主題C: より遅く(più lento)で、嬰ハ長調(変ニ長調)の歌です。間奏のような性格です。 - 全体構成: A B C B A B の順で現れ、ロンド風だがワルツの三部形式にも似ます。 ## 音楽的特徴 哀愁を帯びた短調の主題と、流れるような急速な部分、長調に転じた歌のような中間部が交替する、変化に富んだワルツです。長調の部分は夢見るように穏やかで、短調の主題が戻ると切なさが一層際立ちます。管弦楽版がバレエ『レ・シルフィード』の一部になっています。 ## 演奏のポイント 3拍子の1拍目に重心を置きつつ、メロディーの歌い回しにルバートをかけすぎないようにします。中間のsostenuto部分では、右手の旋律を明るい音色にして対比をつけます。速い部分は粒をそろえ、息継ぎを自然に行います。 ## この音源について - 演奏: アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ) - アルバム: Chopin: Waltzes(RCA LSC-2726) - レーベル: RCA Victor Red Seal - 録音: 1963年(LP発売は1964年) - 録音場所: ローマ、RCAイタリアーナ・スタジオA ルービンシュタインのショパン《ワルツ集》は1963年にローマのRCAイタリアーナ・スタジオAで録音されました。資料には6月25日のセッションと記されています。プロデューサー、エンジニア、編集は、後年までルービンシュタインの録音を支えたマックス・ウィルコックスが担当しました。作品番号付きの14曲を収め、死後出版の5曲は含みません。1964年にLSC-2726として発売され、ステレオ録音の基準盤とされています。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - Op.64の3曲で最もよく演奏されるのが第2番とされます(演奏頻度の根拠は未確認)。 - Op.64-2は管弦楽編曲がバレエ『レ・シルフィード』に使われています。 - 2022年の映画『On the Come Up』では、クロエ・フラワーによる本曲に基づく編曲が使われました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Waltz_in_C-sharp_minor,_Op._64,_No._2_(Chopin) - https://www.tunefind.com/artist/chopin - https://filmmusicreporter.com/2022/09/23/chloe-flowers-solo-piano-track-chopins-waltz-from-sanaa-lathans-on-the-come-up-released/ --- # ワルツ第9番 変イ長調 Op.69-1『別れのワルツ』 - 英題: Waltz No. 9 in A-flat major, Op. 69 No. 1 (Farewell Waltz / L'adieu) - 作曲者: フレデリック・ショパン(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1835 - 作品番号: Op.69-1(遺作) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/waltz-69-1.html 1835年、マリア・ヴォジンスカとの別れに際して書かれたとされるワルツです。ショパンの死後、友人フォンタナが出版しました。 ## 作曲の経緯 1835年9月、ドレスデンでマリア・ヴォジンスカに贈るために書かれたとされるワルツです。ショパンはマリアと婚約したと言われるが、詳しい経緯には異説もあります。彼女に贈られた自筆譜の表紙には『マリー嬢へ』と記されていました。この自筆譜は現在失われているとする資料があるが(ワルシャワの国立図書館が所蔵するという記述もあり、確認が取れていない)、ほかにも、1837年にエリザ・ペルッツィ、1842年にシャルロット・ド・ロスチャイルドに宛てた別の自筆譜が残ります。作曲者の生前には出版されず、1855年、友人ユリアン・フォンタナが遺作として世に出しました。 ## 出版・初演 1855年、ユリアン・フォンタナによって死後出版されました(Op.69として2曲)。 ## 題名・通称の由来 『別れのワルツ(Farewell Waltz / Valse de l'adieu)』の呼称は、ショパン本人の命名ではありません。1835年にマリア・ヴォジンスカとの別れの際に贈られた曲とされることに由来します。出版は死後1855年にフォンタナが行い、Op.69は本人が付けた作品番号ではなく、遺作として後から与えられたものです。 ## 構成分析 - 主題1: con espressione。憂いを帯びた懐かしい旋律で、小さな装飾音の上昇で一つの山を作ります。 - 主題2: sempre delicatissimo。主題1よりやや明るく、すぐに第1主題に戻ります。 - 主題3: dolce。最も軽やかで遊び心のある旋律です。 - 主題4: 二重音が段階的に上がっていく部分(poco a poco crescendo)で、3の主題に戻って、冒頭へ戻ります(ダ・カーポ)。 ## 音楽的特徴 冒頭の主題は、3拍子の流れの中で寂しさとなつかしさが交ざり合い、聴き手を一気に引き込みます。中間の主題は軽やかで、陰りの合間に笑顔がのぞくような対比があります。ワルツの形を借りながら、踊るためというより、手紙のように個人的な感情を込めた作品です。ショパンの死後に広まったこともあり、物語性のある呼称とともに愛されています。 ## 演奏のポイント 冒頭は自然な3拍子の呼吸を保ち、感傷に流れすぎないことです。第3主題以降は軽く、二重音の上昇部分は音量を作りすぎず歌わせます。ダ・カーポで戻る冒頭は、最初より一段落ち着いた音色にします。 ## この音源について - 演奏: アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ) - アルバム: Chopin: Waltzes(RCA LSC-2726) - レーベル: RCA Victor Red Seal - 録音: 1963年(LP発売は1964年) - 録音場所: ローマ、RCAイタリアーナ・スタジオA 別れのワルツを含むこのアルバムは、1963年にローマのRCAイタリアーナ・スタジオAで録音されました。資料には6月25日のセッションと記されています。プロデューサー兼エンジニアはマックス・ウィルコックスです。収録曲は作品18、34、42、64、69、70のワルツで、ショパンの生前に出版された曲を中心とした14曲にまとめられています。1964年にLSC-2726として発売されたこのステレオ盤は、現在も基準録音として挙げられます。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ペルッツィ宛(1837)とロスチャイルド宛(1842)に、別バージョンの自筆譜が残っています。 - フォンタナの死後出版版は、確認できる自筆譜に基づくものではないとされます。 - Op.69の2曲は1829年(第2番)と1835年(第1番)の作で、いずれも1855年に出版されました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Waltzes,_Op._69_(Chopin) - https://imslp.org/wiki/Waltzes,_Op.69_(Chopin,_Fr%C3%A9d%C3%A9ric) - https://enc.piano.or.jp/en/musics/23221 --- # 四季 Op.37a 第10曲 10月「秋の歌」 - 英題: The Seasons, Op.37a, No.10 October: Autumn Song - 作曲者: ピョートル・チャイコフスキー(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1876(全曲は1875年12月〜1876年5月作曲) - 作品番号: Op.37a(Op.37bとも表記)/ TH 135 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/tchaikovsky-october.html チャイコフスキーが雑誌の依頼で書いた十二か月の小品のうち、ニ短調で秋の寂しさを歌う10月の曲です。雑誌から生まれた12か月の音楽に、こんな物悲しい歌があることも、この曲集の興味深いところです。 ## 作曲の経緯 四季は、サンクトペテルブルクの音楽雑誌『ヌヴェリスト』の編集者ニコライ・ベルナールが1875年に依頼した、各月を描く12の小品です。題は編集者の案で、チャイコフスキーは1875年12月の手紙で全ての題を受け入れると伝えました。その1月から2月の曲が先に送られ、後半の7曲は同じ帳面に記されていて、白鳥の湖の管弦楽化を4月22日頃に終えたのち、5月下旬までにまとめて書かれたと推定されます。6月号が5月末に検閲を通っているためです。10月の曲は詩人A・K・トルストイの詩句がエピグラフに付されたが、これも作曲者でなく編集者の選択でした。1876年中に雑誌に連載され、1886年にユルゲンソンが権利を得てOp.37aとして出版しました。 ## 出版・初演 1876年に『ヌヴェリスト』誌で毎月連載されました。同年10〜11月に単行出版の検閲許可を得ています。1886年にユルゲンソン社がOp.37aとして再出版しました。 ## 題名・通称の由来 「秋の歌」の題は、依頼した編集者ニコライ・ベルナールの提案で、チャイコフスキーが受け入れたものです。エピグラフ(A・K・トルストイの詩句)もベルナールの選です。 ## 構成分析 - 標題とエピグラフ: 「秋の歌」です。A・K・トルストイの、荒れた庭に黄色い葉が風に舞う、という趣旨の詩句が添えられます。 - 速度と調: Andante doloroso e molto cantabile、ニ短調、56小節です。 - 四季全体での位置: 秋の中盤を担う10曲目です。次の11曲目は「トロイカ」です。 - 原稿: 10月を含む11曲の自筆譜はモスクワの国立音楽博物館に現存します(4月のみ紛失)。 ## 音楽的特徴 ニ短調で、悲しげに十分に歌う、という発想標語が付きます。四季の中でも特に物悲しい一曲として知られます。短い曲だが旋律が前面にあり、ロシアの秋の寂しさを歌曲のように描きます。依頼仕事として書かれた小品集ながら、旋律の美しさから単独でもよく弾かれ、他の楽器への編曲も多いです。 ## 演奏のポイント 発想標語は「悲しげに、かつ十分に歌って」の意です。旋律の息づかいを大切に、伴奏は旋律を支える程度に抑えて歌い込みます。感傷に流れすぎず、音色の変化で哀愁を出したいです。 ## この音源について - 演奏: イム・ユンチャン(ピアノ) - アルバム: Tchaikovsky: The Seasons - レーベル: Decca Classics(4871021) - 録音: 2024年7月31日〜8月1日 - 録音場所: メニューイン・ホール(英国サリー州) イム・ユンチャンは『四季』の12曲を、月ごとに季節が移る曲集とは捉えず、一人の人間の最後の1年を描いた物語として組み立てました。録音は2024年夏、英国サリー州のメニューイン・ホールで行い、プロデューサーはジョン・フレーザー、エンジニアはフィリップ・サイニーです。2025年8月22日にDecca Classicsから発売されました。批評や報道では大胆な再解釈として注目され、発売後にApple Classicalのチャートで首位に立ったと伝えられました。「10月・秋の歌」はこの物語の後半に置かれます。 (動画題名に Album Audio とあり、投稿元は演奏者本人のチャンネルです(oEmbedで確認済み)。) ## トリビア - 各曲の題と詩の引用は作曲者ではなく編集者が決めました。 - カシュキンが伝えた、従者に催促されて毎月1曲ずつ書いたという逸話は、資料から裏付けにくいとされます。 - 四季の自筆譜は4月の曲のみ失われています。 ## 出典 - https://en.tchaikovsky-research.net/pages/The_Seasons - https://en.wikipedia.org/wiki/The_Seasons_(Tchaikovsky) --- # ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ・コン・エスプレッシオーネ - 英題: Piano Sonata No. 8 in A minor, K. 310 (300d), II. Andante cantabile con espressione - 作曲者: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(古典派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1778 - 作品番号: K.310 / 300d - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/k310-2.html 母の死の頃に書かれたイ短調ソナタの中央で、ヘ長調の歌が静かに流れる緩徐楽章です。モーツァルトの数少ない短調ソナタの陰影を和らげます。 ## 作曲の経緯 1778年の夏、パリ滞在中に書かれました。母アンナ・マリアが亡くなった時期と重なり、モーツァルトにとって最も辛い時期の一つにあたります。モーツァルトのピアノ・ソナタで短調のものは、この曲と第14番K.457の2曲だけで、同時期のヴァイオリン・ソナタ第21番ホ短調K.304とあわせ、母の突然の死が曲の暗い色合いに影響したのではないかと言われています。ただし、書簡でこの曲にほとんど触れられていないため、作曲の細かな事情はよく分かっていません。自筆譜はニューヨークのモルガン・ライブラリー&ミュージアムに所蔵され、交響曲第31番K.297と同じ種類の、パリで買った紙が使われています。 ## 出版・初演 初版は未確認です(1792年頃のアルタリア版がハーバード図書館に所蔵)。 ## 題名・通称の由来 愛称はありません。K.310/300dはケッヘル番号の旧番号と改訂番号の併記です。 ## 構成分析 - ソナタ全体: 第1楽章Allegro maestoso(イ短調4/4)、第2楽章Andante cantabile con espressione(ヘ長調3/4)、第3楽章Presto(2/4)の3楽章です。 - 本楽章の位置: 短調の両端楽章にはさまれたヘ長調の緩徐楽章です。 - 発想標語: 「歌うように、表情豊かに」を意味し、旋律の歌わせ方が主眼にあります。 ## 音楽的特徴 両端楽章がイ短調の悲痛なソナタの中で、ヘ長調の穏やかな歌を聴かせる緩徐楽章です。標語どおり旋律の歌い方が中心で、全曲の緊張を和らげる役割があります。母の死との関係はあくまで推測とされ、楽章ごとの具体的な感情表現と結びつける確かな出典は確認できませんでした。 ## 演奏のポイント 3/4拍子の流れを保ち、旋律線を歌わせて左手の伴奏を支えに回します。強弱の対比は表情標語に沿って丁寧につけ、全曲の短調楽章との性格の違いを意識すると楽章の位置づけが伝わります。 ## この音源について - 演奏: マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ) - アルバム: Mozart: Piano Sonatas K.310, K.333 & K.545 - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認(CD発売は1989年11月7日) - 録音場所: 未確認 ピリスのDG盤『モーツァルト:ピアノ・ソナタ K.310・K.333・K.545』は1989年11月7日発売です。ピリスは1989年にDGと専属契約を結んでおり、DG公式の経歴によれば、K.310・K.333・K.545を含む録音は1990年にグラン・プリ・デュ・ディスクを受けました。録音年・会場は確認できませんでした。 (音源の投稿元(Maria João Pires - Topic)はoEmbedで確認済みです。トラックと上記アルバムの対応は、題名一致からの推定です。) ## 映画・ドラマ - ボーンズ 骨は語る(TVドラマ)S11E20「The Stiff in the Cliff」(2016): 結婚式のドレスを試着するシーンで使われています(Tunefindの記載です。グールド録音です)。 https://www.tunefind.com/show/bones/season-11/32734#102180 ## トリビア - モーツァルトのピアノ・ソナタで短調なのは、K.310とK.457の2曲のみです。 - 自筆譜はモルガン・ライブラリー&ミュージアムが所蔵しています。 - 全曲の演奏時間は約22分とされます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_Sonata_No._8_(Mozart) - https://www.tunefind.com/song/glenn-gould/sonata-no-8-in-a-minor-for-piano-k-310-300d-ii-andante-cantabile-con-espressione - https://imslp.org/wiki/Piano_Sonata_No.8_in_A_minor,_K.310/300d_(Mozart,_Wolfgang_Amadeus) --- # 4つの即興曲 Op.90 D.899 第3番 変ト長調 - 英題: Impromptu in G-flat major, Op.90 No.3, D.899 - 作曲者: フランツ・シューベルト(ロマン派(初期ロマン派)) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1827 - 作品番号: Op.90 / D.899-3 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/schubert-impromptu-90-3.html 変ト長調の長い旋律が、竪琴のような分散和音に乗って流れるシューベルト晩年の歌です。映画でもおなじみの一曲です。 ## 作曲の経緯 シューベルトは1827年に、のちにD.899(Op.90)とD.935(Op.142)となる各4曲、計8曲の即興曲を書きました。D.899のうち、生前に出版されたのは最初の2曲だけで、第3番と第4番は1857年にようやく出版されました。第3番はその際、変ト長調ではなくト長調に移して印刷され、長い間その調の楽譜しか流通しませんでした。ドイツ語版Wikipediaは、出版社ハスリンガーが原調を複雑すぎると考え、弾きやすさのため移調を勧めたと説明します。即興曲という呼称もハスリンガーに由来します。変ト長調の長い旋律線と途切れない分散和音の伴奏が特徴で、第1番や第2番とともに今日も広く演奏されます。 ## 出版・初演 Op.90の第1・2番はシューベルト存命中に出版されました(出版社はハスリンガー)。第3・4番は1857年に出版され、第3番は長くト長調で流通しました。 ## 題名・通称の由来 「即興曲(Impromptu)」という名称は、D.899の4曲についてはウィーンの出版社トビアス・ハスリンガーによるとされます(ドイツ語版Wikipedia)。通称の「秋」「夜」のような愛称は確認できませんでした。 ## 構成分析 - 拍子と速度: Andante、4/2拍子です(alla breve)。ゆったり流れます。 - 旋律と伴奏: 右手が旋律と伴奏を同時に受け持ちます。5指が旋律を歌い、他の指が竪琴のような分散和音を奏でます。 - 和声: 旋律の下で、新しい和声の動きが加わり表情を変えていきます。 - 形式感: 第1番や第3番は、展開部のない序曲形式に近いです(ドイツ語版Wikipedia)。 ## 音楽的特徴 静かな夜想曲風の歌で、長い旋律線と途切れない三和音の分散伴奏が続きます。旋律は一貫して歌い、和声の移ろいが陰影を与えます。同じ右手で旋律と伴奏を弾くピアノ的な魅力があり、映画の場面にもたびたび使われています。 ## 演奏のポイント 5指で歌う旋律を、内側の分散和音より前へ出して保つことが要点です。伴奏の音量と均一さを保ちつつ、歌心を失わないようにします。ペダルは和声の変化を濁さぬよう慎重に使います。 ## この音源について - 演奏: ハティア・ブニアティシヴィリ(ピアノ) - アルバム: Schubert - レーベル: Sony Classical(19075841202) - 録音: 2018年12月19〜23日 - 録音場所: オーストリア、ホーエンエムス、マルクス・ジッティクス・ザール アルバム『Schubert』は、2018年12月19日から23日にかけて、オーストリア西部ホーエンエムスのマルクス・ジッティクス・ザールで録音されました。収録は最後のピアノ・ソナタD960、4つの即興曲D899、リスト編の「セレナーデ」で、2019年3月15日にSony Classicalから発売されました。エグゼクティブ・プロデューサーはジャック・ライアン・スミス、ピアノ技術者はパスカル・モンティが務めました。第3番の演奏時間は約6分18秒です。 (音源の投稿元(KhatiaBuniatishVEVO)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ガタカ(1997): 12本指のピアニストの演奏会の場面です(マイケル・ナイマン編曲版です。英語版Wikipediaの記載によります)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Impromptus_(Schubert) - 愛、アムール(2012): 第1番・第3番が使用され、アレクサンドル・タロー演奏でサウンドトラック化されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Impromptus_(Schubert) - The Lady in the Van(2015): 作中で第3番が演奏され、サウンドトラックにも収録されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Impromptus_(Schubert) ## トリビア - 第3番は出版時にト長調に移され、長年その調で流通しました。 - Manfred Mann's Earth Bandの1976年の曲「Questions」は、この変ト長調の即興曲の主題が基になっています。 - 映画『ガタカ』では、ナイマン編曲版の演奏が『12本の指でなければ弾けない』と語られます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Impromptus_(Schubert) - https://de.wikipedia.org/wiki/Impromptus_(Schubert) --- # 6つの小品 Op.118 第2番 間奏曲 イ長調 - 英題: Intermezzo in A major, Op. 118 No. 2 - 作曲者: ヨハネス・ブラームス(ロマン派) - カテゴリ: ピアノ独奏 - 作曲年: 1893 - 作品番号: Op.118-2 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/brahms-op118-2.html 晩年のブラームスが静かな休暇先で書いた小品集の中の最も有名な1曲です。優しく内省的な旋律で、秘めた想いのようだと語られます。 ## 作曲の経緯 Op.118は1893年の夏、ブラームスが休暇を過ごしたバート・イシュルで書かれた晩年のピアノ小品集です。作品を耳にした同時代の人々は喜び、クララ・シューマンは最初に新作に触れることを許された一人で、「ごく小さな規模に豊かな感情が詰まっている」と評したと、ヘンレ社の解説は伝えています。哲学者でもあったフィリップ・シュピッタは、これらの曲を「孤独と静けさの中でゆっくり味わうのにふさわしい」と評しました。この第2番イ長調は、第5番ヘ長調のロマンツェと並び、曲集中でも最もよく知られた小品で、クララへの秘めた恋文のようだとも言われます(この見方は解説サイトの記述で、根拠は未確認)。 ## 出版・初演 未確認です。 ## 題名・通称の由来 「間奏曲(インテルメッツォ)」は、小さな性格的小品に対する呼称です。発想標語は「Andante teneramente(歩く速さで、優しく)」です。 ## 構成分析 - 曲集内の位置: Op.118の6曲のうち第2番です。第1番イ短調(難易度7)、第3番バラード(7)、第4番へ短調(6)、第5番ロマンツェ(6)、第6番変ホ短調と続きます。 - 発想標語: Andante teneramente。 - 内部構成: 未確認です(出典から確認できませんでした)。 ## 音楽的特徴 Op.118のなかで最も知られる小品の一つで、晩年のブラームスの内省的な作風を代表します。ヘンレ社の難易度は6(中級)で、音楽的な深みに比べて技術的な負担は比較的軽いです。映画『ラスト、コーション』(2007) のサウンドトラックにも収録されました。 ## 演奏のポイント 旋律を内声と一体で歌わせ、感情を表に出しすぎず柔らかく保つのが要点です。長いフレーズを息づかいで運び、強弱は小さな幅の中で微妙に移ろわせます。 ## この音源について - 演奏: ラドゥ・ルプー(ピアノ) - アルバム: Brahms: 2 Rhapsodies Op.79 / Klavierstücke Op.117–119(CD 417 599-2) - レーベル: Decca - 録音: 1976年7月 - 録音場所: キングスウェイ・ホール(ロンドン) ルプーのOp.118は1976年7月にロンドンのキングスウェイ・ホールで録音され、1978年にDeccaから発売されました。後にOp.79のラプソディ、Op.117、Op.119とともにCD化されました。Gramophone誌は、第2番では主題の反行形が原型より美しいという発見があると評し、ルプーを当代屈指のブラームス弾きと称えました。演奏時間は約5分56秒です。 (音源の投稿元(Radu Lupu - Topic)はoEmbedで確認済みです。トラックと上記Decca盤の対応は、演奏者の録音歴からの推定です。) ## 映画・ドラマ - ラスト、コーション(色・戒)(2007): サウンドトラックの4曲目に収録されています(アラン・プラネス演奏)。場面は未確認です。 https://www.soundtrackcollector.com/title/80951/ ## トリビア - Op.118は1893年にバート・イシュルで書かれました。 - ヘンレ社は第2番と第5番を曲集の中で最も有名な小品としています。 - 映画『ラスト、コーション』のサントラでは、デスプラのスコアの合間に収録されています。 ## 出典 - https://www.henle.de/us/Piano-Pieces-op.-118/HN-1215 - https://www.soundtrackcollector.com/title/80951/ - https://interlude.hk/brahms-late-piano-works-klavierstucke-op-118/ --- # カノン(パッヘルベルのカノン) - 英題: Canon and Gigue in D major, P.37 - 作曲者: パッヘルベル(バロック) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 不明(1680〜1706の間で諸説) - 作品番号: P.37 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/canon.html 低音の同じ進行を繰り返し、3つの声が同じ旋律を追いかけて重なっていく、バロックの代表的なカノンです。追いかける声を一つずつ聴くと、同じ低音の上に広がる変化がいっそう面白く感じられます。 ## 作曲の経緯 作曲の年も事情も記録がなく、1680年ごろから1706年までさまざまな説があります。シュルツェは、1694年に行われたJ.S.バッハの兄ヨハン・クリストフの結婚式のために書かれたと推測したが、パッヘルベル研究者のウェルターはこれを憶測と退けています。ビーバーの曲集(1696年刊)への応答とする説もあります。原曲は3本のヴァイオリンと通奏低音のための作品で、ジーグと対で伝わります。現存最古の写本は1838〜42年頃のもので、カノンだけが1919年にベックマンにより出版されました。広く知られるようになったのは、1968年のパイヤール室内管弦楽団による録音(パイヤール自身の補筆つき編曲)以降です。 ## 出版・初演 カノン単独は1919年にG.ベックマンの論文で初めて出版されました。1929年にザイフェルトが編曲版(Organum叢書)を刊行しました。 ## 題名・通称の由来 正式名は「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ」です。一般には「パッヘルベルのカノン」「Canon in D」と呼ばれます。 ## 構成分析 - カノン: 同じ旋律を2小節ずらして3つのヴァイオリンが追います。低音は8つの和音(D-A-Bm-F#m-G-D-G-A)を繰り返します。 - 変奏: 低音の28回の反復の上で、4分音符、8分音符、16分音符と音価が細かくなり、付点やシンコペーションも現れます。 - ジーグ: 12/8拍子、各10小節の2部分です。カノンと違い固定低音はなく、模倣的な書法で進みます。 ## 音楽的特徴 ほぼ同じ低音進行を繰り返し、その上に3声が同じ旋律を時間差で重ねます。厳格な模倣であるカノンと、低音が固定された変奏曲(シャコンヌ的)の二つの形式が一曲に重なる点が特色です。和声進行はロマネスカ型とされ、のちのポップスにも多く転用されました。上声が少しずつ細かく動いて曲が盛り上がるので、同じ和音の繰り返しでも飽きずに聴けます。 ## 演奏のポイント 低音の4分音符を一定に保ち、上声の音価が細かくなっても速さを変えないことが大切です。声部の入りは均等に、先に入った声部を邪魔せず歌い継ぎます。ピアノ編曲では各声部の受け渡しを聴き分けて弾きます。 ## この音源について - 演奏: ジャン=フランソワ・パイヤール指揮 パイヤール室内管弦楽団 - アルバム: Pachelbel: Canon in D Major and Other Baroque Works(原盤はErato 1968年LP。Musical Heritage Society盤) - レーベル: Erato(原盤)/The Musical Heritage Society - 録音: 1968年 - 録音場所: 未確認 パイヤール室内管による1968年の録音は、ロマン的で遅めのテンポと、パイヤール自身が書いたオブリガート声部を持つ編曲版でした。同年6月にEratoからフランスでLP発売され、同年にMusical Heritage Societyからも頒布されました。1970年代に米国で人気が広がり、1977年にRCAが再発しました。1980年の映画『普通の人々』でも使われました。 (音源の投稿元(The Musical Heritage Society=原盤頒布元のレーベル系チャンネル)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 普通の人々 (Ordinary People)(1980): サウンドトラックでパイヤール版が目立って使われました(場面は未確認)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Pachelbel%27s_Canon - Cosmos: A Personal Voyage(TVシリーズ)(1980): サウンドトラックに採用されています(場面は未確認)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Pachelbel%27s_Canon ## CM - Woolmark(Pure New Wool)英国TV広告: 1975年頃から https://en.wikipedia.org/wiki/Pachelbel%27s_Canon ## トリビア - 1981年のThe New Yorker誌に、館内放送でこの曲が流れ続ける囚人を描いた風刺漫画「Prisoner of Pachelbel」が載りました。 - 1968年、Aphrodite's Childの「Rain and Tears」とPop-Topsの「Oh Lord, Why Lord」が、いずれもこの曲を土台にしたヒットとなりました。 - 2012年の英国の葬儀調査(約3万件)で、クラシック部門の2位でした(1位はエルガー「ニムロッド」)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Pachelbel%27s_Canon - https://imslp.org/wiki/Canon%20and%20Gigue%20in%20D%20major,%20P.37%20(Pachelbel,%20Johann) --- # G線上のアリア - 英題: Air on the G String — Orchestral Suite No.3, BWV 1068 (arr. Wilhelmj) - 作曲者: バッハ(編曲:ウィルヘルミ)(バロック(編曲はロマン派期)) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 原曲の作曲年は未確定/編曲1871年 - 作品番号: BWV 1068-2 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/air-g-string.html バッハの管弦楽組曲の緩徐楽章を、ウィルヘルミがG線だけで弾けるよう編曲した、静かに歌う名旋律です。原曲の歩む低音と、編曲版の低い独奏という、同じ作品から生まれた響きの違いにも惹かれます。 ## 作曲の経緯 原曲はバッハの管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068の第2曲「エア」です。現存する演奏資料には1730年頃のものがありますが、原形をケーテン時代などにさかのぼらせる説もあり、作曲時期・作曲地は確定していません。組曲の他の楽章がトランペットやティンパニを含む中、この楽章だけが弦楽と通奏低音で演奏されます。1871年、ヴァイオリニストのアウグスト・ウィルヘルミが、ヴァイオリン独奏と弦楽(またはピアノ、オルガン)のために編曲しました。ハ長調に移調し、第1ヴァイオリンの旋律をさらに1オクターブ下げて、G線だけで弾けるようにしました。譜面に「auf der G-Saite(G線で)」と書き込んだことが通称の由来で、他の声部は弱音で控えめにされました。 ## 出版・初演 ウィルヘルミ編曲版は1871年です(出版社・詳細は未確認)。IMSLPに掲載されています。 ## 題名・通称の由来 ウィルヘルミが譜面に「G線で」と書いたことに由来します。のちに「原曲からG線だけで弾く曲だった」という誤った話も流れました。 ## 構成分析 - 旋律: 高音弦の絡み合う旋律が、ゆったりとした長い息で歌われます。 - 低音: 原曲では低音が規則的に歩み、曲に推進力を与えます。 - ウィルヘルミ版: 旋律をG線の低音域に移し、伴奏は弱音器や弱いピツィカートに抑えます。 ## 音楽的特徴 原曲は、重なり合う高音の旋律線と、歩むように進む低音との対比が魅力です。ウィルヘルミ版は旋律を低音域の独奏に任せ、他を弱くしたため、原曲の対位法的な織り込みや低音の推進力は薄れ、よりロマン派的な甘く暗い響きになりました。ヨアヒムは「バッハ作品の恥知らずな改竄」と批判し、トーヴィーも原曲のニ長調で演奏すべきだとしました。それでも編曲の名は、さまざまな楽器の版で通称として定着しています。 ## 演奏のポイント 長い旋律を途切れさせず、弓の流れを一定に保ちます。ウィルヘルミ版は低い音域で音量が出にくいので、伴奏は弱く抑えて独奏を支えます。ピアノ編曲では旋律の歌わせ方と低音の歩みを分けて弾きます。 ## この音源について - 演奏: アンタル・ザライ(ヴァイオリン)、ボダ・バラージュ(ピアノ) - アルバム: Johann Sebastian Bach Virtuosity Vol.4(とされるが出典で未確認) - レーベル: 未確認 - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 この録音の収録事情は出典で確認できませんでした。編曲そのものは、1871年にアウグスト・ウィルヘルミが管弦楽組曲第3番BWV1068のアリアを、ハ長調に移してヴァイオリンのG線だけで弾けるように編んだものです(Wikipedia)。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - セブン (Se7en)(1995): ミルズとサマセット刑事が犯罪現場の写真を調べる場面です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Air_on_the_G_String - 007 私を愛したスパイ(1977): 悪役ストロンバーグが部下をサメに与える場面です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Air_on_the_G_String - 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997): 前半の終わり近くです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Air_on_the_G_String ## CM - Hamlet(英国の葉巻)TV広告(ジャズ編曲): 1966〜1991 https://en.wikipedia.org/wiki/Air_on_the_G_String ## トリビア - 1905年から約30年にわたり、ヘンリー・ウッドがロンドンのプロムスでウィルヘルミ版を取り上げ続けました。 - 1967年の「A Whiter Shade of Pale」は、作者ゲイリー・ブルッカーによれば、この曲の1〜2小節が出発点でした。 - ウィルヘルミ版の録音は1900年代初頭から残っており、1902年のレオポルト・ハルトマンなどが早い例です。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Air_on_the_G_String - https://imslp.org/wiki/Orchestral%20Suite%20No.3%20in%20D%20major,%20BWV%201068%20(Bach,%20Johann%20Sebastian) - https://www.bach-leipzig.de/en/neutral/johann-sebastian-bach-%E2%94%80-chronology - https://www.bachvereniging.nl/en/bwv/bwv-1068 - https://www.brandenburg.com.au/online-concerts/from-our-stage/fos-bachs-universe/ - https://www.hyperion-records.co.uk/notes/55020-B.pdf --- # 主よ人の望みの喜びよ - 英題: Jesu, Joy of Man's Desiring — Cantata BWV 147 (arr. Myra Hess) - 作曲者: バッハ(ピアノ編曲:マイラ・ヘス)(バロック(編曲は20世紀)) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 原曲1723年/ヘス編曲1926年 - 作品番号: BWV 147(第6曲・第10曲のコラール) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/jesu-joy.html バッハのカンタータのコラールを、マイラ・ヘスがピアノ用にまとめた、流れるような伴奏に旋律が歌う名編曲です。一台のピアノに、歌と流れる器楽の旋律が一緒に収まっていることに心が弾みます。 ## 作曲の経緯 原曲は、1723年のカンタータ「心と口と行いと生活で」BWV147(全10曲、2部構成)のコラールで、各部の終わり(第6曲と第10曲)に置かれています。ヨハン・シェープの旋律に、マルティン・ヤーヌスの賛美歌の2つの節を当て、独立した管弦楽の伴奏がつきます。第6曲の歌詞は「Wohl mir, dass ich Jesum habe」、第10曲は「Jesus bleibet meine Freude」です。ピアニストのマイラ・ヘスがこれをピアノ用に編曲し、1926年にピアノ独奏版を、1934年に連弾版をオックスフォード大学出版局から刊行しました。英語題はこのヘス版に由来し、現在よく知られる姿は主にこの編曲によります。 ## 出版・初演 ヘス編曲:1926年にピアノ独奏版、1934年に連弾版です(オックスフォード大学出版局)。 ## 題名・通称の由来 英語題「Jesu, Joy of Man's Desiring」はヘス版に付いた題で、原曲のどちらの歌詞とも一致しません。日本語題はそれに基づきます。 ## 構成分析 - 主旋律: ピアノ右手の旋律がコラールを歌います。 - 伴奏: 絶え間なく流れる三連系の動きが、曲全体を支えます。 - 原曲との関係: 原曲は合唱+トランペット・ヴァイオリン・通奏低音です(オーボエ・ヴィオラは任意)。 ## 音楽的特徴 原曲では、コラール旋律の合唱に、独立した器楽の流れる旋律がからみます。ヘス編曲はその両方を一台のピアノにまとめ、「素朴に、流れるように」と指示されています。弾きやすそうに聞こえて、内声の流れと旋律を同時に整えるのは容易ではありません。結婚式やアドベント、クリスマス、イースターなどでよく演奏されます。 ## 演奏のポイント 伴奏の流れを均一に保ちつつ、旋律を歌わせます。英語版歌詞ではゆったりとしたテンポが慣例ですが、原曲のドイツ語の賛美歌は活気ある性格とされます。ヘス自身は「素朴に、流れるように」と記しています。 ## この音源について - 演奏: アンジェラ・ヒューイット(ピアノ) - アルバム: Bach Arrangements(Hyperion CDA67309) - レーベル: Hyperion - 録音: 2001年4月(日は未確認) - 録音場所: ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン) ヒューイットがバッハ作品のピアノ編曲だけを集めて録音したアルバムです。ヒューイット自身の編曲のほか、ケンプフ、ダルベール、ハリエット・コーエンのためのバッハ曲集に収められた英国作曲家たちの編曲などを含みます。Hyperionの解説では、ピアノ的な装飾と技巧を抑え、どの楽器で弾いてもバッハらしく響くことを重んじた選曲とされます。ヘス編曲は戦時中にバッハを広く親しませたと紹介されています。制作・録音はルートヴィヒ・ベッケンホフ、発売は2001年8月です。なお編曲者ヘス自身の1928年1月17日の録音は「録音」の項をご参照ください。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。このトラックが上記アルバムのものかは、演奏者とレーベルからの推定です。) ## トリビア - アポロ100の1972年のインストゥルメンタル「Joy」が米Billboard Hot 100で6位になりました。 - ヘスはバッハを深く尊敬し、このコラールをピアノで即興的に弾くことも多かったといいます。 - 日本のビジュアルノベル『Wonderful Everyday』(2010年)で、ピアノ編曲が全編にわたり使われました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Jesu,_Joy_of_Man%27s_Desiring - https://imslp.org/wiki/Herz%20und%20Mund%20und%20Tat%20und%20Leben,%20BWV%20147%20(Bach,%20Johann%20Sebastian) - https://www.classicalconnect.com/music/11691 --- # ピアノ協奏曲第2番 第2楽章 - 英題: Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18 — II. Adagio sostenuto - 作曲者: ラフマニノフ(後期ロマン派) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1900〜1901年 - 作品番号: Op.18 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/rach-pc2-2.html ダーリ医師の治療で立ち直ったラフマニノフが書いた、静かで抒情的な緩徐楽章です。映画や歌にも転用された名旋律です。ピアノと木管が旋律を受け渡すところに、協奏曲ならではの対話の美しさを感じます。 ## 作曲の経緯 1897年の交響曲第1番の初演失敗で、ラフマニノフは作曲できなくなりました。親族の勧めで神経科医ニコライ・ダーリの催眠療法を1900年1〜4月に受けて自信を取り戻し、同年夏にイタリアでシャリアピンの家に滞在しつつ、第2・第3楽章から書き始めました。この2楽章は1900年12月に、従兄のシロティの指揮、本人のピアノで先行初演されました。第1楽章は後から完成し、全曲は1901年11月(新暦)にモスクワで同じ二人により初演されて大成功を収めました。 ## 出版・初演 グチェイリ社から1901年に出版されたとされます(出版年の記述に揺れあり)。作曲者自身による2台ピアノ版も同時に出版されました。1900年12月の先行初演はモスクワ貴族会館で、シロティにとって指揮デビューでした。 ## 題名・通称の由来 楽章名はAdagio sostenutoです(ゆっくりと音を保って)。楽章名以外の通称は未確認です。 ## 構成分析 - 導入: 弦楽器の遅い和音が、ハ短調からホ長調へ転調して始まります。 - A部: ピアノが静かな伴奏音型を奏で、木管が旋律を歌います。 - 中間部: Più animato。ピアノの動きが活発になり盛り上がります。 - 再現: テンポが戻り、主題が回帰して静かに終わります。 ## 音楽的特徴 第1楽章のハ短調から、遠隔のホ長調へ移り、弦の和音で静かに幕を開けます。ピアノは旋律をオーケストラ(特にフルートやクラリネットなどの木管)と受け渡しながら、細やかな音型で支える役割も担います。協奏曲全体の中で最も抒情的で、のちにポピュラー音楽にも転用された旋律をもちます。 ## 演奏のポイント ピアノは目立つ主役というより、木管の旋律に寄り添う対話の姿勢が大切です。分散和音の粒をそろえ、音量を抑えて息の長いフレーズを保ちます。中間部では高揚しすぎず、テンポの流れを保つことが重要です。 ## この音源について - 演奏: スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)、スタニスワフ・ヴィスロツキ指揮 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団 - アルバム: Rachmaninov: Piano Concerto No.2 / Tchaikovsky: Piano Concerto No.1 ほか - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1959年4月26〜28日 - 録音場所: ワルシャワ・フィルハーモニー・ホール リヒテルとヴィスロツキ指揮ワルシャワ・フィルによる第2番は、1959年4月26〜28日にワルシャワのフィルハーモニー・ホールで録音され、同年にドイツ・グラモフォンから発売されました。1960年にはグラン・プリ・デュ・ディスクを受賞したとされます。現在ではラフマニノフとチャイコフスキーの協奏曲の基準盤と見なされ、International Piano誌は音の明晰さと色彩・管弦楽的効果の幅を称賛しました。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 逢びき (Brief Encounter)(1945): 場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Brief_Encounter - 七年目の浮気 (The Seven Year Itch)(1955): 場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/The_Seven_Year_Itch ## トリビア - 作曲者自身がこの協奏曲を生涯で計143回ソリストとして演奏しました。 - 1900年12月の先行初演で指揮を務めたシロティにとって、これが指揮デビューでした。 - エリック・カルメンのヒット曲「All by Myself」(1975年)は、この第2楽章に基づきます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_Concerto_No._2_(Rachmaninoff) --- # アヴェ・マリア(エレンの歌 第3番) - 英題: Ave Maria — Ellens dritter Gesang, D.839 (arr. Liszt, S.558/12) - 作曲者: シューベルト(ピアノ編曲:リスト)(ロマン派(初期)) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 原曲1825年/リスト編曲1837〜38年(1876年改訂) - 作品番号: D.839, Op.52-6(リスト版 S.558/12) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/schubert-ave-maria.html スコットの詩に付けられた祈りの歌を、リストがピアノ一台で歌わせた編曲です。息の長い旋律が夜に寄り添います。 ## 作曲の経緯 1825年、シューベルトはウォルター・スコットの叙事詩『湖上の美人』のドイツ語訳から7曲を作曲し、その第6曲がこの歌です。作品52として1826年に出版されました。ヒロインのエレンが聖母に庇護を祈る場面の歌で、各連の始めと終わりに現れる「Ave Maria」という呼びかけが通称の由来になりました。のちにこの旋律へラテン語の祈祷文を当てて歌う習慣が広まったが、シューベルトが典礼文に曲を付けたわけではありません。ピアノ独奏版はリストが1837〜38年に作った『シューベルトの12の歌曲』S.558の第12曲(1876年改訂)で、旋律を中音域に置き、上下の和音で包み込みます。 ## 出版・初演 原曲は1826年に出版されました(作品52)。リスト編曲は『12 Lieder von Franz Schubert』S.558に収録されています(1838年刊とする資料あり)。 ## 題名・通称の由来 歌詞冒頭と各連末の呼びかけ「Ave Maria」からです。『湖上の美人』ゆえ、初演先の伯爵夫人自身も「湖上の美人」と呼ばれたとされます。 ## 構成分析 - 第1連: 穏やかな分散和音に乗り、祈りの旋律が始まります。 - 第2〜3連: 同じ旋律を保ちつつ、詩の内容に応じて表情が変わります。 - リスト版の中間部: 和音の伴奏が分散和音に替わり、高音域で静かに輝きます。 - リスト版の頂点と結び: 感情が最も高まったのち、再び静けさに戻ります。 ## 音楽的特徴 原曲は変ロ長調で、持続低音と六連符の伴奏に息の長い旋律が乗る簡素な歌です。リストの独奏版は原曲の構成にほぼ忠実で、旋律を中音域に置き、上下の音域を和音や分散和音で囲むため、三本の手で弾くような響きになります。派手な技巧曲ではないが、多層の音色と分散和音の処理に、高度な技術と音楽性が求められます。 ## 演奏のポイント 旋律を中音域でレガート・カンタービレに歌わせ、伴奏の分散和音は音量を抑えて旋律の下に溶かします。ペダルは濁らないよう細かく踏み替え、頂点でも音を割らず、結びは息を整えて静かに閉じます。 ## この音源について - 演奏: ベンジャミン・グロスヴェナー(ピアノ) - アルバム: Liszt - レーベル: Decca Classics - 録音: 未確認(2021年2月19日発売) - 録音場所: 未確認 グロスヴェナーのアルバム『Liszt』は2021年2月19日に発売された、Deccaでの6枚目のアルバムです。「アヴェ・マリア」(S.558)は10曲目に置かれ、収録時間は5分28秒です。リストによるシューベルト歌曲の有名な編曲を、アルバムを締めくくるアンコール的な小品として選んでいます。録音場所・日付・制作陣は確認できませんでした。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ファンタジア(1940): 「禿山の一夜」に続く終結部です。ストコフスキー編曲の声楽・弦楽版です(ピアノ版ではありません)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Ave_Maria_(Schubert) ## トリビア - シューマンは「ミルテの花」第1曲「献呈」の後奏で、この旋律を引用しています。 - 映画『ファンタジア』は、ムソルグスキー「禿山の一夜」の終わりにこの曲を続け、鐘の音が夜明けではなく礼拝の始まりに聞こえるようにしました。 - IMSLPの作品ページには、リスト版の演奏録音が登録されています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Ave_Maria_(Schubert) - https://ja.wikipedia.org/wiki/エレンの歌第3番 - https://imslp.org/wiki/12_Lieder_von_Franz_Schubert,_S.558_(Liszt,_Franz) - https://www.pianostreet.com/liszt-sheet-music/transcriptions/schubert-ave-maria-b-flat-major.htm --- # 愛のあいさつ - 英題: Salut d'Amour (Liebesgruss), Op.12 - 作曲者: エルガー(後期ロマン派) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1888年 - 作品番号: Op.12 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/liebesgruss.html エルガーが婚約者アリスへの贈り物として書いた小品です。甘く温かな旋律で、ピアノ独奏版でも親しまれています。 ## 作曲の経緯 エルガーは1888年7月にこの曲を書き上げました。当時の彼は、ピアノの教え子でもあったキャロライン・アリス・ロバーツと婚約した直後でした。彼女がドイツ語に堪能だったことから、題を「Liebesgruss(愛のあいさつ)」としました。休暇先のセトルからロンドンへ戻った9月22日、婚約の贈り物として彼女に手渡しています。原曲はヴァイオリンとピアノのための作品で、自筆譜が残る公認の編曲は、チェロとピアノ版とピアノ独奏版の2つです。のちに小編成の管弦楽版も出版されました。編曲者名と編曲年は、確認した出典には記載がありませんでした。 ## 出版・初演 1889年、ショット社です(マインツ)。ヴァイオリンとピアノ、ピアノ独奏、チェロとピアノ、小管弦楽の各版が初版で刊行されました。管弦楽版の初演は1889年11月11日、水晶宮です(指揮:オーガスト・マンズ)。 ## 題名・通称の由来 最初の題は独語のLiebesgrussです。出版時に、欧州各国で売りやすいよう仏語題Salut d'Amourが主題となり、Liebesgrussは副題に回りました。 ## 構成分析 - 原曲の編成: ヴァイオリンとピアノです。ピアノ独奏版は、エルガー自身の自筆譜に基づく公認版の一つです。 - 管弦楽版初演: 1889年11月11日、水晶宮でのオーケストラ版です。 - 版の展開: ヴァイオリン、ピアノ独奏、チェロ、小管弦楽の各版が初版時に出ました。 ## 音楽的特徴 確認できた出典では、旋律構成や和声の分析は得られませんでした。分かっているのは、原曲がヴァイオリンとピアノのための小品で、ホ長調で書かれたことです。婚約者への贈り物として作られた個人的な作品でありながら、のちに多くの楽器編成へ編曲され、エルガーの代表作の一つとなりました。 ## 演奏のポイント 未確認です。 ## この音源について - 演奏: イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)、サミュエル・サンダース(ピアノ) - アルバム: 未確認(コンピレーション『The Perlman Sound』などに収録) - レーベル: Warner Classics系(原盤は未確認) - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 Apple Music Classicalの『The Perlman Sound』(41曲)では、エルガー「愛の挨拶」Op.12の演奏者がパールマンとサミュエル・サンダースと表示され、演奏時間は2分45秒です。同盤にはクライスラー編曲やサラサーテなど、サンダースとの小品が多数入ります。共演者までは確認できたが、初出アルバム・録音年・会場は特定できていません。この音源はヴァイオリンとピアノ版です。曲自体は1888年7月に書き上げられ、婚約の頃の恋人キャロライン・アリス・ロバーツに贈られました。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - グレイストーク ターザンの伝説(1984(年はページ上で未確認)): ベルギー人探検家ダルノが蓄音機でこの曲を流す場面です(Wikipedia英語版の記述)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Salut_d%27Amour ## トリビア - 贈られたのは婚約の際で、ロバーツ嬢はエルガーのピアノの教え子でした。 - 初版ではほとんど売れず、題を仏語のSalut d'Amourに改めてから売れ行きが伸びました。 - 歌詞付き版に「Woo thou, Sweet Music」(A.C.バンテン詞)やスウェーデン語の「Violer」があります。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Salut_d%27Amour - https://imslp.org/wiki/Salut_d'amour,_Op.12_(Elgar,_Edward) --- # ヴォカリーズ - 英題: Vocalise, Op.34 No.14 - 作曲者: ラフマニノフ(後期ロマン派) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1915年 - 作品番号: Op.34-14 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/vocalise.html 歌詞を持たず母音だけで歌われるラフマニノフの歌曲です。ピアノ独奏を含む多彩な編曲で親しまれています。言葉のない歌が、楽器を替えてどんな声を持つのでしょうか。編曲の多さも、この曲を知る楽しみにつながります。 ## 作曲の経緯 1915年に作曲・出版された、14の歌曲Op.34の最後の曲です。高声(ソプラノまたはテノール)とピアノのために書かれ、歌詞はなく一つの母音だけで歌います。原曲の声楽版よりも器楽編曲で演奏される機会のほうが多いとされます。ピアノ独奏版にはシロティ、アラン・リチャードソン(1951年)、コチシュ、アール・ワイルド、フィオレンティーノなど多くの編曲者がいます。ラフマニノフ自身も管弦楽版およびソプラノと管弦楽版を作りました(年は未確認)。 ## 出版・初演 1915年です(Op.34全体の出版です。出版社は未確認です)。 ## 題名・通称の由来 ヴォカリーズとは、歌詞を持たず母音だけで歌う歌唱法・曲種のことです。 ## 構成分析 - 旋律: 息の長い主旋律が、低めの伴奏の上で歌われます。 - 展開: 旋律が高まりながら音域を広げます。 - 終結: 静かに収束します。 ## 音楽的特徴 歌詞の代わりに一つの母音で歌う、語らない歌曲です。そのため旋律の力だけで聴かせる曲となり、管弦楽、弦楽器、管楽器、ギターなど非常に多くの楽器に編曲されています。ピアノ独奏版では旋律と伴奏を一人で弾き分ける必要があります(構造欄は、詳細な出典を確認できず概略のみ)。 ## 演奏のポイント ピアノ独奏では旋律線を歌手のように途切れさせず、内声や伴奏は控えめに保ちます。編曲者により音の配置が異なるため、楽譜ごとに旋律の受け渡しを確認するとよいです。 ## この音源について - 演奏: ラン・ラン(ピアノ) - アルバム: Piano Book 2 – Classical Encores - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 前作『Piano Book』の続編にあたるアンコール集で、ラフマニノフのヴォカリーズ(コチシュ編)が冒頭に置かれています。DGのカタログページにはプロデューサーとしてクリストファー・アルダーとフィリップ・クラウゼの名が載っているとの情報があったが、ページ本文は確認できていません。録音場所、録音年、使用ピアノは確認できませんでした。編曲者のコチシュはハンガリーの名ピアニストです。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 声の高さを選べるよう、ソプラノまたはテノールのどちらでも歌えると初版に記されています。 - 原曲は嬰ハ短調ですが、歌手の声域に合わせて移調されることがあります。 - チェロとヴォーカルのために、ボビー・マクファーリンとヨーヨー・マーが編曲した版もあります。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Vocalise_(Rachmaninoff) --- # ブラームスの子守歌 - 英題: Wiegenlied, Op.49 No.4 - 作曲者: ブラームス(ロマン派) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1868年 - 作品番号: Op.49-4 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/brahms-lullaby.html 友人の子の誕生を祝って書かれた、世界で最も有名な子守歌のひとつです。揺れる伴奏に素朴な旋律が乗ります。 ## 作曲の経緯 1868年7月、ボンで作曲されました。友人ベルタ・ファーバーに次男が生まれたのを祝う贈り物で、ブラームスはハンブルクで彼女が所属した女声合唱団を指導していました。旋律にはアレクサンダー・バウマンのレントラーの引用が含まれるとされます。同年『5つの歌曲』Op.49の一曲としてジムロックから出版され、初演は1869年12月22日ウィーンで、ドゥストマンの歌とクララ・シューマンのピアノで行われました。ピアノ独奏版は出版直後から多数作られました。著名な例に、パーシー・グレインジャーが1922年に「お気に入りの旋律の自由な編曲」の一つとして作った独奏編曲があります。 ## 出版・初演 1868年にジムロックから出版されました(Op.49)。第2連(シェーラーの詩)は後に追加されました(日本語版Wikipediaは1874年とします)。 ## 題名・通称の由来 Wiegenliedはドイツ語で「子守歌」です。日本では「ブラームスの子守歌」と呼ばれ、歌い出しから「Guten Abend, gut' Nacht」とも呼ばれます。 ## 構成分析 - 伴奏型: ゆりかごを思わせるシンコペーションの音形が全曲を支えます。 - 低音: 変ホ音が持続して、落ち着きを表します。 - 第1連: 『少年の魔法の角笛』の詩です(Guten Abend, gut' Nacht)。 - 第2連: ゲオルク・シェーラーの詩が、後から追加されました。 ## 音楽的特徴 素朴な旋律と、ゆりかごを揺らすようなシンコペーションの伴奏が一体となった短い歌です。低音に変ホ音が保たれ、安らぎを生みます。一見とても簡素ですが、旋律に別の歌を隠し重ねた工夫があるとされます。1877年には交響曲第2番第1楽章の第2主題にも、この旋律の形が使われました。 ## 演奏のポイント 旋律は揺れる伴奏の上に浮かべるように、拍を数えすぎず柔らかく歌います。伴奏の左手は音量を抑え、シンコペーションが旋律を押し出さないよう注意します。 ## この音源について - 演奏: ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ) - アルバム: Brahms – Reger: Complete Song Transcriptions - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 2023年1月10日とされる - 録音場所: b-sharp(ベルリン) レーガーがブラームスの歌曲をピアノ独奏用に編んだ28曲の編曲を、ブッフビンダーが作品番号順に収めたアルバムです。2024年3月22日に発売されました。レーガーは、名作に華やかな装飾を加えるのは蛮行だと述べ、旋律線を際立たせて原曲の伴奏をできる限り忠実に残す方針を取ったと伝えられます。子守歌(作品49-4)は7曲目です。使用ピアノやエンジニアは確認できませんでした。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ブラームスは出版社ジムロックに、病気の子や悪童向けに短調版を作ってはどうか、と皮肉まじりに書き送っています。 - 1877年、交響曲第2番の第1楽章第2主題にこの旋律の形が用いられました。 - 第1連の詩は民謡詩集『少年の魔法の角笛』からです。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Wiegenlied_(Brahms) - https://ja.wikipedia.org/wiki/子守歌_(ブラームス) - https://imslp.org/wiki/5_Lieder%2C_Op.49_(Brahms%2C_Johannes) --- # ピアノ協奏曲第21番 第2楽章 - 英題: Piano Concerto No.21 in C major, K.467 — II. Andante - 作曲者: モーツァルト(古典派) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1785年 - 作品番号: K.467 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/mozart-pc21-2.html 弱音器付きの弦と夢見るようなピアノが続く緩徐楽章です。映画『みじかくも美しく燃え』で世界的に知られました。 ## 作曲の経緯 この協奏曲は1785年3月9日にウィーンで完成しました。直前の二短調協奏曲K.466の完成から4週間後のことです。自筆譜はニューヨークのモルガン・ライブラリー&ミュージアムに所蔵されています。第2楽章は、主調ハ長調の下属調であるヘ長調のアンダンテです。弱音器付きの弦楽器が夢見るような旋律を奏でます。映画との関係では、1967年のボー・ヴィダーベリ監督作『みじかくも美しく燃え』(原題Elvira Madigan)でこの楽章が使われ、独奏はゲザ・アンダの録音でした。この映画をきっかけに、曲は「エルヴィラ・マディガン」の通称で広く知られるようになりました。 ## 出版・初演 未確認です。 ## 題名・通称の由来 通称「エルヴィラ・マディガン」は、1967年のスウェーデン映画『みじかくも美しく燃え』(原題Elvira Madigan)でこの楽章が使われたことによります。 ## 構成分析 - 第1部: 管弦楽だけで始まり、弦には弱音器が付いています。第1ヴァイオリンの夢見るような旋律を、第2ヴァイオリンとヴィオラの三連符の反復、チェロとバスのピツィカートが支えます。楽章の主要な旋律素材はすべてここで提示されます。 - 第2部: ピアノが加わりヘ長調で始まります。単純な反復ではなく、新しい素材が挟まり転調していきます(ハ短調・ハ長調、ト短調、変ロ長調を経てヘ短調へ)。 - 第3部: 同じ旋律が変イ長調で再現されます。その後ヘ短調からヘ長調へ戻り、短いコーダで閉じます。 ## 音楽的特徴 この楽章は3つの部分から成り、冒頭の管弦楽部分に楽章の主要な旋律素材がすべて含まれています。弱音器付き弦の上で、夢を見るような旋律が三連符の反復音とピツィカートに支えられて進みます。ピアノが入ってからは、ヘ長調やヘ短調など調を巡る展開があり、変イ長調での再現を経て静かに終わります。 ## 演奏のポイント 未確認です。 ## この音源について - 演奏: ゲザ・アンダ(ピアノ/弾き振り)、カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク - アルバム: Mozart: Piano Concertos Nos. 17 & 21 - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1961年5月 - 録音場所: ザルツブルク(祝祭大劇場とされる) アンダは1961年5月、ザルツブルクで自ら弾き振りをしてこの協奏曲を録音しました。1961年から1960年代末にかけて、カメラータ・アカデミカ・ザルツブルクとモーツァルトのピアノ協奏曲を全曲録音する計画の一部です。第17番と第21番の録音は1963年のグラン・プリ・デュ・ディスクを受けました。1967年のスウェーデン映画『みじかくも美しく燃え』では、この第2楽章が使われ、以来「エルヴィラ・マディガン」の通称でも知られています。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - みじかくも美しく燃え (Elvira Madigan)(1967): 第2楽章が使われました。ゲザ・アンダの録音です。具体的な場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_Concerto_No._21_(Mozart) - 007 私を愛したスパイ(1977): 悪役ストロンバーグが水中の居城アトランティスを浮上させる場面で、この協奏曲を演奏します(楽章は未確認です)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_Concerto_No._21_(Mozart) ## トリビア - 自筆譜はモルガン・ライブラリー&ミュージアム(ニューヨーク)が所蔵しています。 - ニール・ダイアモンドの1972年の曲「Song Sung Blue」は、この楽章の主題に基づくとされます。 - チリ国営テレビの天気番組TV Tiempoの主題にこの楽章が使われています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_Concerto_No._21_(Mozart) - https://imslp.org/wiki/Piano%20Concerto%20No.21%20in%20C%20major,%20K.467%20(Mozart,%20Wolfgang%20Amadeus) --- # 夢のあとに - 英題: Après un rêve, Op.7 No.1 - 作曲者: フォーレ(後期ロマン派(フランス)) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1877年 - 作品番号: Op.7-1(歌曲集『3つのメロディ』第1曲) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/faure-apres-un-reve.html フォーレがビュシーヌの詩に付けた1877年の歌曲です。夢の余韻と喪失を歌い、チェロ版などでも愛されています。 ## 作曲の経緯 「夢のあとに」は、フォーレが1877年に作曲した歌曲で、1878年に出版されました。『3つのメロディ』Op.7の第1曲にあたります。詞はロマン・ビュシーヌ(1830〜1899)によるもので、彼は歌手でパリ音楽院の教授でもあり、フォーレの友人でした。詩はイタリア語の詩に基づくとされ、情熱的な逢瀬の夢と、そこへ戻りたいと願う気持ちを歌います。器楽編曲では、リュッター編のチェロとピアノ版がIMSLPに載っています。チェロ2本の編曲もあるが、編曲者名と編曲年は確認できませんでした。ピアノ編曲版は未確認です。 ## 出版・初演 1878年に出版されました(IMSLP『3つのメロディOp.7』)。出版社は未確認です。 ## 題名・通称の由来 題は詩の内容、つまり夢から覚めたあとの喪失感に由来します。 ## 構成分析 - 歌曲集での位置づけ: 『3つのメロディ』Op.7の第1曲です。IMSLPによる作曲年は第1曲1877年、第2曲1870年頃、第3曲1873年です。 - 詞: ロマン・ビュシーヌ作です。イタリア語の詩に基づきます。夢の中の逢瀬と、そこへ戻りたいという願いを語る独白です。 - 器楽版: IMSLPに、チェロとピアノ版(リュッター編、コウロン編、プラティチェッリ編)が掲載されています。 ## 音楽的特徴 この曲は歌曲として書かれたが、器楽曲としても広く演奏されます。詩は夢から覚めた者の独白で、情熱的な夢と、それが消えたあとの喪失感を扱います。IMSLPにはテノールまたはチェロとピアノのための版があり、旋律を歌う声部をチェロが担う編曲として演奏されます。調性、拍子、旋律の具体的な分析は、出典から確認できませんでした。 ## 演奏のポイント 未確認です。 ## この音源について - 演奏: ミッシャ・マイスキー(チェロ)、パヴェル・ギリロフ(ピアノ)とされる - アルバム: Méditation(推定) - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1987年10月とされる(Méditation盤の場合) - 録音場所: ノイマルクトの旧王立厩舎(Reitstadel)祝祭ホールとされる 『Méditation』は、マイスキーとギリロフが1987年10月にノイマルクトの祝祭ホールで録音したとされる小品集で、DGから1990年に出ました。ヘンデルやシューベルト、ブラームスの子守歌、フォーレの夢のあとに、ラフマニノフのヴォカリーズなど、歌のように旋律を奏でる作品が並びます。版はチェロとピアノのための編曲で、動画の題名はマイスキー編曲としています。別に1999年5月にハンブルクで録音されたマイスキーとダリヤ・ホヴォラの『Après un rêve』盤もあり、動画がどちらの盤かは確認できていません。 (音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。どの盤のトラックかは未確認です。) ## トリビア - 詞を書いたビュシーヌは歌手・声楽教師で、フォーレの友人でした。 - 日本語版Wikipediaでは、歌曲として書かれたが器楽曲としても演奏されると説明されています。 - 詩の原型はイタリア語の詩だとされます。 ## 出典 - https://imslp.org/wiki/3_Songs,_Op.7_(Fauré,_Gabriel) - https://oxfordsong.org/poet/romain-bussine - https://ja.wikipedia.org/wiki/夢のあとに --- # パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏 - 英題: Rhapsody on a Theme of Paganini, Op.43 — Variation 18 - 作曲者: ラフマニノフ(後期ロマン派) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1934年 - 作品番号: Op.43 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/paganini-var18.html パガニーニの主題を反転させて生まれた、ラフマニノフ屈指の甘美な旋律です。映画でも使われた名変奏です。もとの主題を知ると、この甘さの生まれ方にも驚かされます。 ## 作曲の経緯 この狂詩曲は、スイスの別荘ヴィラ・セナールで1934年7月3日から8月18日にかけて書かれました。主題はパガニーニの無伴奏ヴァイオリンのための奇想曲第24番で、全24の変奏からなります。1934年11月7日にボルチモアで、作曲者自身のピアノ、ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団により初演されました。第18変奏は、主題の旋律を反転させた形に基づきます。ラフマニノフ自身がこの変奏の魅力を認め、「これは私のエージェントのためだ」と述べたと伝わります。 ## 出版・初演 未確認です。 ## 題名・通称の由来 パガニーニの奇想曲第24番の主題に基づくことからです。 ## 構成分析 - 全体の位置: 全体を協奏曲の3楽章に見立てると、第11〜18変奏が緩徐楽章に相当します。 - 第18変奏: 主題を反転させた旋律が、イ短調から変ニ長調で歌われます。 - 直後: 第19変奏以降は終楽章に相当し、速い変奏が続きます。 ## 音楽的特徴 全曲の中で最も有名な変奏で、単独で名曲集に収録されることが多いです。パガニーニの主題をいわば逆さにした旋律を、変ニ長調の甘美な響きで歌います。全体が速い変奏で構成される中で、この変奏だけが穏やかな抒情を担い、全曲のハイライトとなっています。 ## 演奏のポイント 旋律をピアノとオーケストラで受け渡しながら歌い上げます。ピアノは旋律に豊かな響きを与えつつ、オーケストラとの音量バランスを保ち、クライマックスで音を濁らせないことが大切です。 ## この音源について - 演奏: ユジャ・ワン(ピアノ) - アルバム: 推定: Rachmaninov: Piano Concerto No.2 / Rhapsody on a Theme of Paganini(アバド指揮、DG)。2023年のドゥダメル/ロサンゼルス・フィル盤の可能性もある - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 2010年4月(アバド盤の場合) - 録音場所: フェラーラ、テアトロ・コムナーレ(アバド盤の場合) アバド盤はライヴ録音で、パガニーニ狂詩曲は変奏ごとにトラックが分かれています。評者はテンポを急がず色彩や転調を味わう、遊び心のある演奏と評しました。ワンは後にドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルとラフマニノフの協奏曲全曲とこの狂詩曲を再録音し、2023年9月にDGから発売しています。どちらの音源がこの動画のものかは未確認です。なおラフマニノフ自身は1934年11月7日にボルチモアで初演し、12月24日にカムデンの教会スタジオでストコフスキー指揮フィラデルフィア管と録音しました(歴史的録音)。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ある日どこかで (Somewhere in Time)(1980): 場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Somewhere_in_Time_(film) ## トリビア - ウィニフレッド・アトウェルが録音した第18変奏(映画「Story of Three Loves」の主題として)は、英国チャートで9位を記録しました。 - ゲーム「グランツーリスモ6」のイントロ曲に、ラン・ランの演奏で使われました。 - フォーキンのバレエ化の際、第18変奏の調を作曲者が変ニ長調でなくニ長調で、と提案しました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Rhapsody_on_a_Theme_of_Paganini - https://imslp.org/wiki/Rhapsody_on_a_Theme_of_Paganini,_Op.43_(Rachmaninoff,_Sergei) --- # ソルヴェイグの歌 - 英題: Solveig's Song — Peer Gynt (arr. Grieg, Op.52 No.4) - 作曲者: グリーグ(ロマン派(国民楽派)) - カテゴリ: 協奏曲・編曲 - 作曲年: 1874〜75年(付随音楽Op.23) - 作品番号: Op.23(第4幕)、組曲第2番Op.55-4、ピアノ編曲Op.52-4 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/solveigs-song.html 帰らぬ人を待ち続けるソルヴェイグの歌を、グリーグ自身がピアノ独奏に編曲しました。北欧の哀愁を静かにたたえた旋律です。 ## 作曲の経緯 1874〜75年、グリーグはイプセンの戯曲『ペール・ギュント』(1867)の付随音楽Op.23を作曲しました。上演は1876年2月24日にクリスティアニア(現オスロ)で行われました。ソルヴェイグの歌は第4幕に置かれ、故郷でペールの帰りを待つ娘ソルヴェイグの心情を歌います。のちにグリーグは付随音楽から8曲を選んで二つの組曲にまとめ、この曲は組曲第2番Op.55(1893年出版)の第4曲になりました。ピアノ独奏版はグリーグ自身の歌曲編曲集Op.52の第4曲で、同集全6曲の編曲者もグリーグです。Piano Streetは編曲の年を1890年とするが、未確認です。 ## 出版・初演 付随音楽の総譜は1908年にヨハン・ハルヴォルセンが出版しました。組曲第2番Op.55は1893年です。Op.52は作曲者校訂版がC.F.Petersから刊行されています(初版年は未確認です)。 ## 題名・通称の由来 ヒロインであるソルヴェイグ(Solveig/Solvejg)の名からです。故郷でペールを待ち続ける女性の歌です。 ## 構成分析 - 全体: イプセン劇第4幕で歌われる、待ち続ける女性の歌です。 - Op.52-4: イ短調、Poco Andanteのピアノ独奏編曲です。 - 組曲版: 組曲第2番Op.55の第4曲に収録されています。 - 関連曲: 第5幕の「ソルヴェイグの子守歌」です。 ## 音楽的特徴 待ち続ける女性の心を歌う、哀愁を帯びた短調の旋律が核です。グリーグ自身がピアノ独奏に編曲したOp.52-4は、歌の旋律と伴奏をピアノ一台に収めます。同じ劇の第5幕には「ソルヴェイグの子守歌」もあり、組曲にはこの歌の方が採られました。 ## 演奏のポイント 旋律を歌うように弾き、伴奏は音量を抑えて支えに徹します。ゆるやかな揺れを保ちつつ、悲しみを強調しすぎず、静かに祈るような表情を保ちます。 ## この音源について - 演奏: アリス=紗良・オット(ピアノ) - アルバム: Wonderland – Grieg: Piano Concerto, Lyric Pieces - レーベル: Deutsche Grammophon(479 4631、2016年9月9日発売) - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 グリーグ作品を集めた2016年のDG盤『Wonderland』に収録されています。ペール・ギュント組曲第2番Op.55-4のピアノ独奏編曲で、編曲者は未確認です。アルバムはピアノ協奏曲(サロネン指揮バイエルン放送響)と抒情小品の選集で構成され、オットはグリーグを学生時代から身近に感じてきたと語っています。DGはタイトルを、北欧の伝説を思わせる幻想的な風景から取ったと説明します。Gramophoneの批評は、管弦楽の伴奏と音質を称賛した一方、オットの独奏には自由すぎるルバートへの留保を示しました。 (音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - グリーグは劇場側から各曲の長さや順番を指定され、継ぎはぎの仕事を強いられたと不満を述べています。 - 1999年のヴァンダルハーツ2の曲に、旋律が使われました(英語版Wikipedia)。 - パワーメタルバンドKamelotの曲「Forever」は、この旋律を基にしています(英語版Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Peer_Gynt_(Grieg) - https://imslp.org/wiki/Peer_Gynt,_Op.23_(Grieg,_Edvard) - https://imslp.org/wiki/Piano_Transcriptions_of_Songs,_Op.52_(Grieg,_Edvard) - https://www.pianostreet.com/grieg-sheet-music/piano-transcriptions-of-songs/solvejgs-song-op-52-4-a-minor.htm --- # 交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」第1楽章 - 英題: Symphony No. 5 in C minor, Op. 67 – I. Allegro con brio - 作曲者: ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(古典派(ベートーヴェンの中期)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1804–1808 - 作品番号: 作品67 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/beethoven-5.html 「ダダダダーン」の4音の動機を徹底的に展開した、ハ短調の緊迫したソナタ形式の楽章です。ベートーヴェンの代名詞ともいえる冒頭で知られています。あの4音だけで、どこまで音楽が広がるのでしょうか。 ## 作曲の経緯 第5交響曲のスケッチは1804年、交響曲第3番の完成後に始まりました。ただし作業は順調に進まず、ベートーヴェンは歌劇『フィデリオ』の初稿、ピアノ・ソナタ「熱情」、ラズモフスキー弦楽四重奏曲、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第4番、交響曲第4番、ハ長調ミサなど、別の作品の作曲のたびに筆を止めています。第5番と第6番は1807〜08年に並行して仕上げられました。この頃のベートーヴェンは30代半ばで、難聴が進み、ナポレオン戦争でウィーンがフランス軍に占領される(1805年)という混乱の時代でもありました。曲はウィーンのパスクヮラティ・ハウスの住まいで書かれたとされます。1808年12月22日の初演は4時間を超える長大な演奏会の一部で、リハーサルは一度しかなく、会場も非常に寒かったと伝わります。 ## 出版・初演 初演:1808年12月22日、ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場です。ベートーヴェン自身の指揮で、全曲ベートーヴェンの新作という4時間超の演奏会の中で第6番などと共に初演されました。初版は1809年4月です。 ## 題名・通称の由来 「運命」はドイツ語の Schicksalssinfonie に由来する通称で、ベートーヴェン自身の題ではありません。冒頭の動機について「運命はこのように扉をたたく」と語ったとする話は、秘書シンドラーの証言に基づくが、シンドラーの証言の信頼性には疑問が多く、実際に語ったかは不確かです。第二次世界大戦後には「勝利の交響曲」と呼ばれたこともあります。 ## 構成分析 - 提示部: 「短・短・短・長」の4音の動機(ダダダダーン)で始まり、この動機が第1主題となります。ホルンの呼びかけを挟んで第2主題が現れます。 - 展開部: 動機がさまざまな楽器間で受け渡され、調を変えながら緊張を高めていきます。 - 再現部: 冒頭動機が再現され、途中でオーボエの短い独奏が入ります。 - コーダ: 動機がさらに展開されたのち、力強い和音で楽章を結びます。 ## 音楽的特徴 ごく短い動機を徹底的に展開して楽章全体を組み立てている点が最大の特徴です。全曲では、終楽章でピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンが加わります(第9番や第6番など他の交響曲でも使用)。第3楽章から第4楽章へは切れ目なく続きます。 ## 演奏のポイント まず注目したいのは、冒頭の4音の間(休符の長さ)と、動機を刻むリズムの鋭さです。再現部のオーボエ独奏の寂しさと、そのあとの急展開の対比にも耳を向けたいです。テンポ設定と、提示部の繰り返しを行うかどうかも演奏者による違いが出るところです。 ## この音源について - 演奏: ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(配信上の演奏者表記。指揮者は未確認) - アルバム: エクセレント・クラシック カラヤン名曲集 - レーベル: ARC(℗ 2020の表記)/配信提供:TuneCore Japan - 録音: 未確認(2020年4月15日は配信リリース日) - 録音場所: 未確認 - YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=WyWkPhV54xM ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団名義で配信されている、交響曲第5番「運命」の第1楽章です。配信アルバムは『エクセレント・クラシック カラヤン名曲集』で、リリース日は2020年4月15日です。アルバム名にはカラヤンの名がありますが、このトラックの指揮者と録音年・会場は確認できていません。2020年は録音年ではなく、この配信版のリリース年です。 (動画ページの曲名とBerliner Philharmonikerのアーティスト表示を確認しました。配信アルバムとリリース日は配信カタログとも照合しています。指揮者・録音年・録音場所は未確認です。) 音源・配信情報の出典: - https://www.youtube.com/watch?v=WyWkPhV54xM - https://s.awa.fm/track/22cace926117d9e69595 - https://s.awa.fm/track/12d82ebf31f9e20c7093 ## 映画・ドラマ - ファンタジア2000(1999): 映画の最初のセグメントで、第5番の第1楽章に合わせた抽象的なアニメーション(蝶やコウモリのような形が光と闇の世界を描く)が展開されます。 https://walt-disney-animation-studios.fandom.com/wiki/Symphony_No._5 ## トリビア - 第二次世界大戦中、BBCはヨーロッパ各地の抵抗組織に向けた放送の冒頭に、この4音の動機をドラムで鳴らしました。ローマ数字の「V」が5を表し、連合国の「V for Victory」運動とも重なったためです。 - 指揮者トスカニーニは1943年のムッソリーニ失脚後に第1楽章だけを演奏し、残りはドイツが敗れたら演奏すると語ったとされ、全楽章の演奏を終えたのは1945年5月でした。 - ヴァイオリニスト兼指揮者ザロモンは、ロンドン・フィルハーモニック協会のリハーサルで当初この曲を「くず」と呼んだが、のちに撤回し、偉大な作品の一つと認めたといいます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._5_(Beethoven) - https://www.musicweb-international.com/classrev/2014/Jan14/Beethoven_Kleiber_4791106p.htm - https://hifiplus.com/articles/classic-albums-beethovens-5th-and-7th-symphony-vienna-philharmonia-carlos-kleiber-cond/ - https://walt-disney-animation-studios.fandom.com/wiki/Symphony_No._5 - https://kyoukasyo.com/wp-content/uploads/symphony-no-5-in-c-minor.pdf - https://imslp.org/wiki/Symphony_No.5,_Op.67_(Beethoven,_Ludwig_van) --- # 交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」第4楽章「歓喜の歌」 - 英題: Symphony No. 9 in D minor, Op. 125 'Choral' – IV. 'Ode to Joy' - 作曲者: ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(古典派〜ロマン派の過渡期(後期)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1824 - 作品番号: 作品125 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/beethoven-9.html ベートーヴェン最後の交響曲の終楽章です。シラーの詩に曲を付けた歓喜の主題が、低弦の静かな入りから独唱と合唱を伴う大合唱へ広がります。 ## 作曲の経緯 ベートーヴェンがシラーの詩『歓喜に寄す』に曲を付けたいと思い立ったのは1792年、まだ22歳の頃だったとされます。交響曲第7番から数年を経た1815年頃に作曲が動き出し、1817年にロンドンのフィルハーモニック協会から交響曲を依頼されたことで本格化しました。当初は器楽だけの交響曲と、声楽を含む「ドイツ交響曲」を別々に書く構想だったが、のちに二つの案を一つにまとめて現在の形になりました。歓喜の旋律が固まったのは1822年頃で、先に考えていた終楽章の旋律は弦楽四重奏曲第15番の第5楽章に流用されました。1824年に初稿が完成し、初演までに何度か手直しされています。作曲者は当初ベルリンでの初演を望んだが、ウィーンの支援者たちの嘆願を受けてウィーン初演に落ち着きました。 ## 出版・初演 初演は1824年5月7日、ウィーンのケルントナートーア劇場です。実際の指揮はミヒャエル・ウムラウフが担い、ベートーヴェンは各楽章のテンポを示す役で舞台に立ちました。出版は1826年、ショット社です。 ## 題名・通称の由来 ベートーヴェン自身は表題を付けていません。第4楽章に合唱が入ることから「合唱付き」と通称され、日本では「第九(だいく)」とも呼ばれます。歌詞はシラーの詩『歓喜に寄す』から約3分の1を抜粋し、一部を作曲者が編集したものです。 ## 構成分析 - 第4楽章の冒頭(Presto): 不協和音の激しい序奏で始まり、低弦のレチタティーヴォ風の呼びかけと、第1〜3楽章の主題の回想・否定が続きます。 - 歓喜の主題の提示: 低弦のユニゾンで静かに歓喜の主題が現れ、徐々に楽器が加わって大きく展開します。 - バリトン独唱「おお友よ、このような音ではない」: 作曲者自身が付け加えた言葉で声楽が登場し、続いて合唱と四重唱へ進みます。 - 行進曲風の変奏と二重フーガ: トルコ風の行進曲を経て、二つの主題を組み合わせるクライマックスの合唱フーガへ進みます。 - コーダ(Prestissimo): 合唱と独唱、管弦楽が一気に加速し、祝祭的に全曲を締めくくります。 ## 音楽的特徴 ソナタ形式の第1楽章、スケルツォの第2楽章、変奏曲の第3楽章のあと、第4楽章に声楽を導入した点が当時としては大胆です。第3・第4楽章が続けて変奏曲である点も異例です。トライアングル、シンバル、バスドラムなど、他のベートーヴェンの交響曲にない打楽器も使われます。 ## 演奏のポイント 低弦だけで始まる歓喜の主題の静かな入りと、そこから楽器が増えていく積み上げを追ってみたいです。バリトンの最初の一声の力強さにも惹かれます。声楽が加わる後半の約20分では、独唱者・合唱・管弦楽のバランスが取れているかが聴きどころです。 ## この音源について - 演奏: ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン楽友協会合唱団(ウィーン・ジングフェライン)。独唱:グンドゥラ・ヤノヴィッツ、ヒルデ・レッセル=マイダン、ヴァルデマール・クメント、ヴァルター・ベリー - アルバム: Beethoven: The 9 Symphonies(2024 Remastered, Berlin 1962。元は1963年発売のカラヤン最初のDG全集) - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1962 - 録音場所: ベルリン、イエス・キリスト教会(Jesus-Christus-Kirche) カラヤンはベルリン・フィルとの最初の全集録音を1961年12月に始め、1962年11月の第九で締めくくりました。第九のためにウィーン楽友協会合唱団(ウィーン・ジングフェライン)をわざわざベルリンの教会に招き、独唱陣も当時望みうる最良の顔ぶれをそろえたとDGは記しています。1963年に発売されたこの全集は、DGにとって全9曲を一度に録音し、あらかじめ計画した予約制の企画として出した初のベートーヴェン全集であり、豪華な装丁でも出されました。のちの復刻ボックスには、第九のリハーサル音源を収めたBlu-ray Audioが付き、カラヤンの練習での簡潔な指示を聴くことができます。 (音源の投稿元(Berliner Philharmoniker - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 時計じかけのオレンジ(1971): 暴力映画を見せられる条件づけ療法の場面などでベートーヴェンの第九(第4楽章)が使われます。映画音楽盤ではウェンディ・カルロスのシンセサイザー版が収録されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/A_Clockwork_Orange_(soundtrack) - バルトの楽園(2006): 徳島の板東俘虜収容所でドイツ兵捕虜が第九を演奏した史実に基づく映画です(監督:出目昌伸)。史実との相違点はWikipedia側に注記があります。 https://ja.wikipedia.org/wiki/交響曲第9番_(ベートーヴェン) ## CM - サントリー『2020年の希望』篇: 2020年12月に全国OAが始まりました。幾田りらが第九(歓喜の歌)を歌唱しています。サントリーが1983年から開催する『サントリー1万人の第九』にちなむ起用です。 https://utaten.com/news/index/24810 ## トリビア - 初演時はソプラノ独唱が18歳のゾンターク、アルトが21歳のウンガーと若く、リハーサルも2回しかなかったと伝わります。観客の拍手に気づかないベートーヴェンを、アルト歌手が聴衆の方へ向けたという逸話もあります(逸話として伝わる話)。 - 日本での全曲演奏の最初とされるのは1918年6月1日、徳島県の板東俘虜収容所でのドイツ兵捕虜による演奏です。男声用に編曲され、ファゴットなどはオルガンで代用されました。ただし「初演」とは言えないとする意見もあります。 - CDの収録時間が約74分になったのは第九が1枚に収まるように配慮したため、という話が伝わるが、これは伝聞として語られるものです。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/交響曲第9番_(ベートーヴェン) - https://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._9_(Beethoven) - https://www.deutschegrammophon.com/de/kuenstler-innen/von-karajan/pressestimmen/die-ueberwindung-der-traegheit-karajans-beethoven-266813 - https://utaten.com/news/index/24810 - https://en.wikipedia.org/wiki/A_Clockwork_Orange_(soundtrack) - https://imslp.org/wiki/Symphony_No.9,_Op.125_(Beethoven,_Ludwig_van) --- # ヴァイオリン協奏曲集「四季」より 春 第1楽章 (協奏曲 ホ長調 作品8-1 RV269) - 英題: The Four Seasons: Concerto No. 1 in E major 'La primavera', Op. 8 No. 1, RV 269, I. Allegro - 作曲者: アントニオ・ヴィヴァルディ(バロック) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1725年頃(作品8の出版) - 作品番号: Op.8-1 / RV269 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/vivaldi-spring.html ヴィヴァルディ「四季」の冒頭を飾る「春」の第1楽章です。ソネットに基づき小鳥や嵐を描く明るいホ長調の協奏曲で、独奏ヴァイオリンの技巧と軽快な主題が魅力です。 ## 作曲の経緯 「四季」は、独奏ヴァイオリンと弦楽合奏のための協奏曲を春・夏・秋・冬の4曲に仕立てた作品群で、作品8の冒頭に置かれた4曲として知られています。各曲にはソネット(詩)が付けられ、ヴィヴァルディは楽譜の中に「犬の吠え声」などの情景指示も書き込んでいます。春の協奏曲では、第1楽章が小鳥のさえずりや春の訪れを描き、第2楽章Largo e pianissimo sempreが嬰ハ短調で穏やかに進み、その中で犬の吠え声が指示されます。第1楽章の主題は人気が高く、ヴィヴァルディ自身がこの楽章を歌劇「テンペのドリッラ」にシンフォニアと合唱の形で転用しています。また、J.S.バッハが同主題の冒頭動機をカンタータ第27番BWV27の第3曲アリアに用いたことも指摘されています。演奏時間は全曲で約10分とされます。 ## 出版・初演 作品8として出版されました(出版年・出版者の詳細はこの調査では一次確認できていません)。 ## 題名・通称の由来 La primaveraは「春」です。各曲に付されたソネットが季節の情景を描くことから標題音楽的な「四季」と呼ばれます。 ## 構成分析 - 第1楽章 Allegro(ホ長調): 春の到来を告げる明るい主題と、鳥のさえずり・嵐を表すとされる挿入部です。 - 第2楽章 Largo e pianissimo sempre(嬰ハ短調): 静かな緩徐楽章です。犬の吠え声の指示があります。 - 第3楽章 Allegro: 舞曲風の終楽章です(今回は詳細未確認です)。 ## 音楽的特徴 ソネットと結びついた描写的な音楽で、冒頭のリトルネロ主題が繰り返し戻る協奏曲形式の中に、鳥・嵐などの情景が独奏ヴァイオリンの装飾的パッセージで挿入されます。 ## 演奏のポイント 明快なリトルネロ主題と、鳥の声を模す独奏パートの対比が聴きどころです。バロック奏法による演奏と、現代楽器による豊かな響きの演奏で印象が大きく変わります。 ## この音源について - 演奏: ナイジェル・ケネディ(ヴァイオリン)、イギリス室内管弦楽団 - アルバム: Vivaldi: The Four Seasons - レーベル: EMI Classics(現Warner Classics) - 録音: 1986(Warner Classics公式ページ記載: originally recorded November 1986) - 録音場所: Church of St John-at-Hackney, London ケネディの「四季」は1989年9月25日に発売され、300万枚超を売り上げました。英国のクラシック・チャートで1年以上首位を保ち、クラシック録音の最高売上としてギネスブックに載ったとされます。ポップ音楽の手法が初めてクラシックに用いられ、「夏」のシングル、街頭の大型ポスター、ラジオやテレビの広告が展開されました。録音自体は1986年11月にロンドンのセント・ジョン・アット・ハックニー教会で行われました。 (音源の投稿元(Nigel Kennedy - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ヴィヴァルディは「春」第1楽章を歌劇「テンペのドリッラ」にシンフォニアと合唱として再利用しました。 - J.S.バッハのカンタータ第27番BWV27のアリアに、同楽章の冒頭動機が使われているとされます。 - ジャン=ジャック・ルソーは「春」のフルート版を出版しました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/The_Four_Seasons_(Vivaldi) - https://www.warnerclassics.com/release/kennedy-four-seasons - https://en.wikipedia.org/wiki/Nigel_Kennedy - https://www.hyperion-records.co.uk/notes/120886-B.pdf --- # 交響曲第9番 ホ短調「新世界より」第2楽章 ラルゴ(「家路」) - 英題: Symphony No. 9 in E minor "From the New World", II. Largo ("Goin' Home") - 作曲者: アントニーン・ドヴォルザーク(後期ロマン派(国民楽派)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1893 - 作品番号: Op.95, B.178 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/largo-new-world.html コーラングレが歌う変ニ長調の主題で知られる『新世界より』の緩徐楽章です。のち英語詞『Goin' Home』や堀内敬三の『家路』となり、日本でも広く愛されています。 ## 作曲の経緯 ドヴォルザークは1892年から1895年までニューヨークの国民音楽院の院長を務め、この交響曲を1893年に書きました。院で出会ったアフリカ系アメリカ人の学生ハリー・バーリーが歌う黒人霊歌を聴き、その精神を吸収したとされます。本人は初演前日のニューヨーク・ヘラルド紙で、先住民音楽の旋律は実際には使わず、その特徴を盛り込んだ独自の主題を作って展開したと説明しています。第2楽章については、ロングフェローの『ハイアワサ』に基づく将来のカンタータか歌劇のための「習作」のようなものだと述べました(その作品は書かれませんでした)。主題を当初のクラリネットからコーラングレに改めたのは、バーリーの声を思わせたためと伝えられます。1893年夏のアイオワ旅行で見た広大な土地の印象も作品に反映したと言われます。初演は同年12月16日、ニューヨークのカーネギー・ホールです。 ## 出版・初演 初演は1893年12月16日、カーネギー・ホールで、アントン・ザイドル指揮ニューヨーク・フィルによる演奏です(同団の委嘱)。各楽章のたびに熱烈な拍手が起こり、作曲者が立ってお辞儀をしたといいます。ロンドン初演は1894年6月21日(A.マッケンジー指揮)、プラハでは同年10月13日に作曲者自身の指揮で演奏されました。初版時は交響曲第5番とされ、古い文献や録音ではその番号で呼ばれます。出版社は未確認です。 ## 題名・通称の由来 「新世界」はアメリカを指します。第2楽章の旋律は、ドヴォルザークの弟子(資料により同僚とも)W・A・フィッシャーが1922年に歌詞を付けて歌曲「Goin' Home」としました。日本では1946年に堀内敬三が日本語詞を付けた「家路(遠き山に日は落ちて)」として親しまれています。宮沢賢治が1924年夏までに自作の詩を同じ主題に付けて歌っていた(『種山ヶ原』)との記述もあります。 ## 構成分析 - 導入: 管楽器による和音の進行です。研究者は「むかしむかし」という語りの定型を表すと解釈します。 - 第1部(主題): 弱音器付きの弦の上で、コーラングレが変ニ長調の主題を独奏します。 - 中間部: 嬰ハ短調で郷愁と寂しさを帯び、低弦のピツィカートの上で葬送行進風になります。続いてスケルツォ風の部分に、この楽章の主題と第1楽章の主題が現れます。 - 結び: 主題と導入の和音がそっと戻って静かに閉じます。 ## 音楽的特徴 コーラングレの独奏による息の長い旋律です。五音音階に近い音の運びが日本人に親しみやすい、との指摘もあります(資料による説明)。ドヴォルザークは、先住民音楽やアフリカ系アメリカ人の霊歌の特徴を取り入れたが、旋律をそのまま引用したわけではないと述べています。 ## 演奏のポイント 聴きどころは四つあります。①コーラングレ独奏の息の長さと音色(ヴィブラートや呼吸の取り方)です。②弱音器付きの弦の柔らかな響きです。③中間部の嬰ハ短調への陰りと、第1楽章主題の回想です。④最後の主題とコラール風の和音が戻る弱音の処理です。 ## この音源について - 演奏: レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック - アルバム: 交響曲第9番「新世界より」(原盤:コロンビア MS 6393。Sonyの2017年リマスター版として配信) - レーベル: Columbia Masterworks(原盤)/Sony Classical(再発) - 録音: 1962 - 録音場所: マンハッタン・センター(ニューヨーク) バーンスタインとニューヨーク・フィルのこの録音は、1962年4月16日にニューヨークのマンハッタン・センターで行われました。プロデューサーはジョン・マクルーアです。LPの解説はエドワード・ダウンズ、ジャケットの写真はアーヴィング・ペンが担当し、ステレオ盤(MS 6393)にはドヴォルザークの木版画(額装向け)が付いていたと、ディスコグスの盤情報にあります。LP上のラルゴの演奏時間は14分35秒です。同じマンハッタン・センターでは、1963年に《スラヴ舞曲》、1965年に《謝肉祭》序曲が録音されました。バーンスタインはこの交響曲を、ほかに1953年(デッカ)と1986年(DG、イスラエル・フィルとのライヴ)にも録音しています。 (音源の投稿元(Leonard Bernstein - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - Crimes of Passion(ケン・ラッセル監督)(1984): ラルゴが映画の主要な音楽テーマとして使われます。 https://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._9_(Dvo%C5%99%C3%A1k) ## CM - Hovis(英国のパン)「Boy on the Bike」: 1973年です。リドリー・スコット監督のテレビCMにラルゴが使われ、英国で広く知られるきっかけになりました。 https://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._9_(Dvo%C5%99%C3%A1k) ## 教科書・鑑賞教材 - 『改訂新版 中学生の音楽3』(音楽之友社、昭和50年発行): 堀内敬三作詞「家路」を混声四部合唱で掲載しています。 https://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00horiuchi.htm - 『中学生の音楽3』(教育芸術社、昭和49年・昭和39年発行): 野上彰作詞の「家路」を合唱曲として掲載しています(題は「家路(交響曲『新世界』から)」です)。 https://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00horiuchi.htm - 『改訂 音楽』(教育出版、昭和51年発行・高校): 作曲者ドヴォルザークと「新世界から」についての記述があります(同サイトによる確認)。 https://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00horiuchi.htm ## トリビア - ニール・アームストロングは、アポロ11号の月面着陸ミッションに、この交響曲を含むテープ録音を持って行ったとされます。 - 「Goin' Home」は黒人霊歌と誤解されることが多いが、1922年以前にこの歌が存在した証拠はなく、旋律もこの交響曲(1893年)より前には見つかっていません。 - 宮沢賢治は1924年夏までに、同じ主題に自作の詩を付けて歌っていました。当時の友人の自叙伝にその記録があると、ある資料は伝えています(堀内敬三版より20年あまり前)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._9_(Dvo%C5%99%C3%A1k) - https://www.asahi-net.or.jp/~cp7t-mrt/music/gaikoku/ieji.html - https://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00horiuchi.htm - https://imslp.org/wiki/Symphony%20No.9,%20Op.95%20(Dvo%C5%99%C3%A1k,%20Anton%C3%ADn) - https://leonardbernstein.com/discography?composer=Dvo%C5%99%C3%A1k%2C+Anton%C3%ADn - https://www.classical-music.com/articles/new-world-symphony --- # ボレロ - 英題: Boléro - 作曲者: モーリス・ラヴェル(20世紀・近代フランス) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1928 - 作品番号: M.81(作品番号なし) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/bolero.html 小太鼓の同じリズムに乗せ、2つの旋律を楽器を替えて繰り返し、約15分かけて音量を積み上げるラヴェルの代表作です。1928年にバレエ曲として初演されました。次はどの楽器が歌うのでしょうか。同じ旋律を待つ時間まで楽しくなるのが、この曲の魅力です。 ## 作曲の経緯 1928年、ダンサーのイダ・ルビンシュタインがラヴェルに、アルベニスのピアノ曲集《イベリア》から6曲を管弦楽に編曲するよう依頼したのが発端です。作業中に、指揮者アルボスがすでに編曲済みで著作権上ほかの編曲は難しいと分かりました。アルボスは権利を譲ると申し出たが、ラヴェルは自作の編曲に切り替えようとしたのち、結局スペインの舞曲ボレロに基づく新曲を書くことにしました。サン=ジャン=ド=リュズでの休暇中、友人サマズイユの前でピアノを片手で弾き、「しつこさのある主題だろう。展開せずに何度も繰り返し、オーケストラを少しずつ厚くしていくつもりだ」と語ったと伝わります。1931年のインタビューでは、17分間の「音楽のない管弦楽の織物」、つまり一つの長いクレッシェンドだと自作を説明しています。ラヴェルは大半の楽団が演奏を断るだろうと予想していたが、結果は最も有名な作品となりました。 ## 出版・初演 初演:1928年11月22日、パリ・オペラ座です。バレエとして上演され、振付ニジンスカ、美術・台本ブノワ、指揮ウォルター・ストラムです。楽譜は1929年にパリのデュラン社から出版されました。ラヴェル自身による2台ピアノ版は1930年に出版されました。 ## 題名・通称の由来 スペインの舞曲「ボレロ」にちなみます。楽譜の速度標語が「Tempo di Bolero, moderato assai(ボレロの速度で、非常に中庸に)」です。 ## 構成分析 - リズム: 小太鼓が3拍子のリズムを冒頭から最後まで刻み続けます。 - 2つの旋律: どちらも18小節です。第1旋律は全音階的、第2旋律はシンコペーションや下降音を含みフリギア旋法に近いです。交互に8回ずつ反復し、頂点で第1旋律がもう一度(9回目)現れます。 - 楽器の受け渡し: フルート、クラリネット、ファゴット、E♭クラリネット、オーボエ・ダモーレ、トランペット、サクソフォン、ホルン、トロンボーン…と旋律の担当が移り、次第に弦や大勢の楽器が加わります。 - 中盤以降の重ね: ホルンの旋律にチェレスタやピッコロがG・Eなど別の調で重なり、倍音を補強するように響きが輝きを増します。 - 結尾: 練習番号18で突然ホ長調に転じ、8小節ほどでハ長調に戻ります。最後の6小節でバスドラム・シンバル・タムタムが初めて入り、トロンボーンのグリッサンドを伴って閉じます。 ## 音楽的特徴 旋律・リズム・和声がほぼ変わらず、音色(楽器の組み合わせ)と音量だけが変化します。サクソフォンはソプラニーノ(F管)を指定しているが、F管のソプラニーノは実在せず、初演時から変ロ管ソプラノで演奏されてきたと伝えられます。 ## 演奏のポイント まず①小太鼓の揺るがないテンポに耳を向けたいです。ラヴェルは速くなることを嫌い、1930年のコッポラ録音の立ち会いで終盤が走りかけたところを制止したと、コッポラ本人が回想しています。②楽器ごとの音色の変化(誰がどの旋律を吹くか)を追うと構造が分かりやすいです。③中盤以降の、別の調の重ねによる響きの変化も聴きどころです。④終盤の突然のホ長調への転調と、最後のグリッサンドまで聴き届けたいです。 ## この音源について - 演奏: ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - アルバム: ムソルグスキー(ラヴェル編):展覧会の絵/ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲(カラヤン・ゴールド) - レーベル: Deutsche Grammophon(DG 413 588-2) - 録音: 1985 - 録音場所: ベルリン・フィルハーモニー DGの表記ではボレロの録音は1985年、同じ盤の《展覧会の絵》は1986年です。盤評サイトMusicWebによれば、この盤の録音はベルリン・フィルハーモニーで1985年12月から1987年2月にかけて行われました。カラヤンはこの曲を1966年のDG録音、1977年のEMI録音に続いて残しており、これはデジタル期の再録音にあたります。評者は、初期のDGデジタル録音には響きが硬いという批判があり、のちの「カラヤン・ゴールド」でリマスターされたと述べます。また、カラヤンはライヴの再現ではなく家庭での鑑賞を念頭に置き、デジタル技術を支持して録音したと指摘しています。この盤は1993年2月15日にカラヤン・ゴールドとしても出ています。 (音源の投稿元(Berliner Philharmoniker - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - Bolero(ジョージ・ラフト、キャロル・ロンバード主演)(1934): 音楽が重要な役割を果たします。作品の知名度を高めた要因の一つとされます。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bol%C3%A9ro - アレグロ・ノン・トロッポ(ブルーノ・ボツェット監督)(1976): 地球上の生命の進化を描くアニメーションの場面です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bol%C3%A9ro - 10(ダドリー・ムーア、ボー・デレク共演)(1979): 作中で印象的に使われ、ラヴェルのレコード売上と印税が急増したとされます(推定約100万ドル)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bol%C3%A9ro - Les Uns et les Autres(別題 Boléro)(1981): ジョルジュ・ドンによるボレロのダンス場面です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bol%C3%A9ro - デジモンアドベンチャー(劇場短編)(1999): 冒頭と、グレイモン対パロットモンの戦闘で使用されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bol%C3%A9ro - Exit 8(日本映画)(2025): 冒頭と結末の場面で使用されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bol%C3%A9ro - ボレロ 永遠の旋律(ラヴェルの伝記映画、アンヌ・フォンテーヌ監督)(2024): サウンドトラックにボレロ(ディルク・ブロッセ指揮、ブリュッセル・フィル)を収録しています。 https://tower.jp/article/feature_item/2024/02/09/1115 ## 教科書・鑑賞教材 - 中学校音楽科 鑑賞教材「ボレロ」(徳島県教育委員会の学習指導案): 第2・3学年B鑑賞の教材として全3時間で扱う学習指導案です。教科書会社名は文書では確認できませんでした。 https://edtech.tokushima-ec.ed.jp/file/792 ## トリビア - ラヴェル自身はこの曲を「形式も展開も転調もほとんどない」と評し、多くの楽団が演奏を拒むだろうと予想していました。実際には彼の最も有名な作品になりました。 - 1930年5月、トスカニーニがニューヨーク・フィルとパリ・オペラ座でこの曲を演奏した際、テンポが速すぎるとラヴェルが不満を示しました。楽屋でのやり取りは複数の証言があり、内容は一致しません。 - 初演の際に客席の女性が「ラヴェルは気が狂っている」と叫び、ラヴェルが「彼女は分かっている」と言ったという逸話があるが、真偽は不確かとされます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Bol%C3%A9ro - https://imslp.org/wiki/Bol%C3%A9ro%20(Ravel,%20Maurice) - https://edtech.tokushima-ec.ed.jp/file/792 - https://tower.jp/article/feature_item/2024/02/09/1115 - https://www.deutschegrammophon.com/en/catalogue/products/mussorgsky-pictures-at-an-exhibition-karajan-1986-6970 - https://www.musicweb-international.com/classrev/2021/Jun/Mussorgsky-pictures-4135882.htm --- # 行進曲「威風堂々」第1番 - 英題: Pomp and Circumstance, March No. 1 in D major - 作曲者: エドワード・エルガー(後期ロマン派(イギリス)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1901 - 作品番号: Op.39-1 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/pomp-circumstance-1.html エルガーが1901年に書いた行進曲です。弱音で始まる『希望と栄光の国』のトリオが全管弦楽で堂々と再現され、英国の祝祭や各国の卒業式で親しまれています。 ## 作曲の経緯 『威風堂々』第1番は1901年に作曲され、友人アルフレッド・E・ロドウォルドとリヴァプール管弦楽協会に献呈されました。同年10月19日にリヴァプールでエルガー自身の指揮により、第2番とともに初演されます。2日後にはロンドンのクイーンズ・ホールのプロムナード・コンサートで、ヘンリー・ウッドの指揮により演奏されました。ウッドの回想では、聴衆が立ち上がって叫び、管弦楽曲としては例のない二度のアンコールに応えたといいます。翌1902年には、トリオの旋律が国王エドワード7世のための『戴冠式頌歌』の『希望と栄光の国』に転用されました。さらに1905年6月28日、エルガーが名誉博士号を受けたイェール大学の卒業式で演奏され、これが米国などで卒業式の行進曲として定着する端緒となりました。 ## 出版・初演 1901年10月19日リヴァプールで初演されました(エルガー指揮、リヴァプール管弦楽協会)。ロンドン初演は同月21日のクイーンズ・ホール・プロムスです(ウッド指揮)。ブージー社(Boosey & Co.)より1901〜02年に出版されました。 ## 題名・通称の由来 題名の『Pomp and Circumstance(威風堂々)』はシェイクスピア『オセロ』第3幕第3場の台詞からです。第1番の楽譜には、ド・タブリー卿の詩『栄光の行進』の一節も全曲集のモットーとして添えられました(英Wikipedia)。 ## 構成分析 - 序奏と行進曲主部: Allegro con molto fuoco(活気に満ちて火のように)の序奏から、低音が旋律とぶつかる力強い主題が現れます。主部は反復されます。 - ブリッジ: 金管の和音と木管・弦の保持音のあと、トランペットとトロンボーンのファンファーレが冒頭の主題を呼び戻します。 - トリオ: ト長調で、第1ヴァイオリン、ホルン4本、クラリネットが弱音で提示します。続いて2台のハープを含む全管弦楽で反復されます。 - 再現と結び: 行進曲主部が戻り、トリオは主調ニ長調でオルガンも加わって堂々と再現されます。曲は大旋律ではなく、冒頭の活発な主題の回想で閉じられます。 ## 音楽的特徴 弱音で始まる『希望と栄光の国』のトリオと、全管弦楽・オルガン・ハープを動員した再現との対比が聴きどころです。編成にはバス・クラリネット、コントラファゴット、コルネット、オルガン、ハープ2台などが含まれます。 ## 演奏のポイント 主部は低音と旋律が衝突する推進力を保ち、トリオは弱音で歌い出して、再現で一気に開放するのが聴きどころです。大旋律で曲が終わらず、冒頭の活発な主題に戻って結ぶ点にも注意が必要です。エルガー自身の録音は約4分25秒で、のちの指揮者はやや遅めの傾向があります(英Wikipedia)。 ## この音源について - 演奏: サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 - アルバム: Elgar: Pomp and Circumstance Marches, Froissart, Elegy & Sospiri(Warner Classics 2020年リマスター盤。ほか旧盤も同音源) - レーベル: Warner Classics(Parlophone/EMI原盤) - 録音: 1962 - 録音場所: ロンドン、キングスウェイ・ホール 第1番は1962年8月29日、ロンドンのキングスウェイ・ホールでバルビローリ指揮フィルハーモニア管弦楽団が録音しました。第2〜5番の大半は1966年に、改称後のニュー・フィルハーモニア管と収録されています。2020年のWarner Classics盤は、アナログのオリジナル・マスターから192kHz/24bitで高解像度化されました。『Gramophone Classical Music Guide』は、フィルハーモニア管の好調ぶりと5曲全曲を聴ける点を高く評価しています。 (音源の投稿元(Sir John Barbirolli - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - この曲は1901年以降のプロムスのほぼ毎シーズンで演奏され、1944年以降は毎年演奏されています(英Wikipedia)。 - ジョージ6世とエリザベス2世の戴冠式では、退場音楽の最初の曲として第1番が演奏され、続いて第4番が奏されました(英Wikipedia)。 - カナダ、フィリピン、米国では、トリオ部分が単に『Pomp and Circumstance』や『卒業行進曲』と呼ばれ、多くの高校・大学の卒業式の入場曲になっています(英Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Pomp_and_Circumstance_Marches - https://imslp.org/wiki/Pomp_and_Circumstance,_Op.39_(Elgar,_Edward) - https://www.prestomusic.com/classical/products/7939121--elgar-pomp-and-circumstance-marches-nos-1-5-op-39-etc - https://www.prostudiomasters.com/album/page/67873 --- # アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525 第1楽章 - 英題: Serenade No. 13 in G major, K. 525 'Eine kleine Nachtmusik' – I. Allegro - 作曲者: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(古典派) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1787 - 作品番号: K.525 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/eine-kleine.html モーツァルトが1787年に書いた弦楽のためのセレナードです。上昇音型で始まる明快なソナタ形式の第1楽章で、最も親しまれたクラシック曲の一つです。 ## 作曲の経緯 このセレナードはモーツァルトが1787年8月10日にウィーンで完成させました。同じ頃、彼は歌劇『ドン・ジョヴァンニ』の第2幕に取り組んでいました。ただし、なぜこの曲を書いたのか、生前に演奏されたのかどうかは分かっていません。ヴォルフガング・ヒルデスハイマーは、モーツァルトのセレナードの多くが依頼作であることから、記録に残らなかった依頼だった可能性を指摘しています。モーツァルト自身が付けた自作品目録の記入に「Eine kleine Nacht-Musick」とあり、そこから通称が広まったが、研究者は、特別な題ではなく「小さなセレナードを完成した」という記録にすぎないと見ます。目録では5楽章とされており、現存しない2つ目のメヌエットがあったと考えられています。 ## 出版・初演 出版はモーツァルトの死後30年以上たった1827年頃、オッフェンバッハ・アム・マインのヨハン・アンドレ社です。未亡人コンスタンツェが、夫の作品の大きな束の一部として出版社に売却しました。初演の記録はありません。 ## 題名・通称の由来 モーツァルト自身の自作品目録に「Eine kleine Nacht-Musick」と記されたことからです。ドイツ語の意味は「小さな夜の音楽」で、特別な曲名として付けたのではなく、小さなセレナードの完成を記録しただけとの見方があります。 ## 構成分析 - 提示部: 上昇する「マンハイム・ロケット」の主題で始まります。第2主題は優美で、属調のニ長調です。提示部は繰り返されます。 - 展開部: ニ長調で始まり、ニ短調やハ長調に触れたのち、ト長調に戻ります。 - 再現部: ト長調に戻って主題が再現し、楽章を結びます。 ## 音楽的特徴 2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのための作品だが、弦楽合奏で演奏されることも多いです。大編成の曲ではなく、短い楽章の中に主題の明快さが凝縮されています。Britannicaは、最もよく演奏され、象徴的な古典曲のひとつと評しています。 ## 演奏のポイント 冒頭の力強い上昇音型と、直後の軽やかな応答の対比を聴いてみたいです。提示部の繰り返しを含めたテンポ設定と、弦楽合奏の場合の人数・響きの軽さにも注目したいです。 ## この音源について - 演奏: サー・ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ(※YouTube動画IDとこのアルバムの対応は未確認。caveats参照) - アルバム: Mozart: Eine kleine Nachtmusik(1987年6月15日発売)と推定。ただしYouTube動画がこのアルバムのものとは未確認 - レーベル: Philips Classics - 録音: 未確認(検索結果の要約では1976年、アビー・ロード・スタジオとの記述があるが、一次出典を読めていない) - 録音場所: 未確認 確認できた事実は限られます。このアルバムはフィリップス・クラシックスから1987年6月15日にデジタル配信形態で登録され、第1楽章の収録時間は5分45秒、プロデューサーはミヒャエル・ブレムナーとクレジットされています。同じ演奏者によるアルバムにはパッヘルベルのカノンやレオポルト・モーツァルトの『おもちゃのカッサシオン』なども収められています。また、同じ指揮者・楽団の演奏は2004年にワーナー・クラシックスのコンピレーション盤(アルビノーニのアダージョなどと併録)にも収録されています。録音の経緯や批評・受賞などは確認できませんでした。 (音源の投稿元(Academy of St Martin in the Fields - Topic)はoEmbedで確認済みです。アルバムとの対応は未確認です。) ## トリビア - 目録では5楽章とされていたが、2つ目のメヌエットとトリオは失われたと考えられています。アルフレート・アインシュタインはピアノ・ソナタ K.498a のメヌエットがそれにあたる可能性を示したが、証拠は限られます。 - 魚の養殖に関する研究で、この曲を聞かせた魚が他の音楽や雑音より体重の増加が大きかったと報告されています(Wikipediaが紹介する研究)。 - スティーヴン・ソンドハイムのミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』は、この曲名にちなんで名付けられました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Eine_kleine_Nachtmusik - https://imslp.org/wiki/Eine%20kleine%20Nachtmusik,%20K.525%20(Mozart,%20Wolfgang%20Amadeus) - https://www.universalmusic.it/musica-classica/album/mozart-eine-kleine-nachtmusik-_20012207831/ - https://www.prestomusic.com/classical/products/8358921--mozart-eine-kleine-nachtmusik-etc --- # ムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)組曲「展覧会の絵」 - 英題: Pictures at an Exhibition (Mussorgsky, orch. Ravel) - 作曲者: モデスト・ムソルグスキー(管弦楽編曲: モーリス・ラヴェル)(ロマン派(ロシア国民楽派)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: ピアノ組曲1874年/ラヴェル編曲1922年 - 作品番号: 未確認 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/pictures.html ムソルグスキーがハルトマンの遺作展を歩く姿を描いたピアノ組曲を、ラヴェルが色彩豊かな管弦楽に編んだ名作です。プロムナードとキエフの大門が特に有名です。プロムナードの足取りが変わるたび、音で描かれる次の絵が気になります。 ## 作曲の経緯 ムソルグスキーは親友の画家・建築家ヴィクトル・ハルトマンが1873年8月4日に急死した後、その遺作展を見て、1874年6月2日から22日にかけてピアノ組曲を書き上げました。作品は10の絵とそれらをつなぐプロムナードで構成され、会場を歩く自分自身の姿が描かれています。曲はウラディーミル・スターソフに献呈されました。生前には出版されず、1886年にリムスキー=コルサコフによる改訂版がベッセル社から出ました。ラヴェルによる管弦楽版は1922年の夏にクーセヴィツキーのために作られ、1922年にパリで初演されました。クーセヴィツキーは6年間独占上演権を持ち、1930年にボストン交響楽団と最初の録音を行ったとされます。ラヴェル版は最も多く演奏・録音される編曲となりました。 ## 出版・初演 ピアノ版: 1886年、リムスキー=コルサコフ編です(ベッセル社、ペテルブルク)。ラヴェル版: 1922年10月、パリで初演されました(指揮クーセヴィツキー)。 ## 題名・通称の由来 ハルトマンの遺作展の絵(水彩・素描)を音楽で描いたことから「展覧会の絵」と呼ばれます。 ## 構成分析 - プロムナード: 会場を歩く様子です。不規則な拍子で歩みを表します。 - 小人(グノームス): くるみ割り人形のデザインとされるハルトマンのスケッチです。 - 古城、テュイルリー、ブイドロ(牛車)など: 各曲が特定の絵に対応します。ただし多くの絵は失われています。 - カタコンベ〜死せる言葉による死者との対話: プロムナード主題が曲そのものの一部となる転換点です。 - キエフの大門(ボガトゥイリの門): 変ホ長調です。プロムナード主題が頂点を築く終曲です。 ## 音楽的特徴 プロムナードの主題が曲間に変化しながら戻り、終曲で壮大な頂点を迎えます。ラヴェル版は多彩な管楽器、サクソフォン、チェレスタ、2台のハープなどを加えた大編成の管弦楽法です。 ## 演奏のポイント プロムナードの足取りの違い(気分や調の変化)の描き分けと、キエフの大門での金管・打楽器による壮大なクライマックスの構築が聴きどころです。 ## この音源について - 演奏: ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィル(「キエフの大門」のトラック) - アルバム: Ravel: Boléro / Debussy: La Mer / Mussorgsky: Pictures at an Exhibition(DG 1995年再発盤の記載に基づく。YouTube動画の盤との一致は未確認。1986年のDG再録音も存在するため、動画がどちらの録音かは未確認) - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1966(DG記事による。ただし動画の音源が1966年盤か未確認) - 録音場所: 未確認 DGの記事によると、カラヤンとベルリン・フィルは1966年3月にラヴェルの「ボレロ」を録音し、その後「展覧会の絵」も同様に高水準の録音として残しました。ドビュッシー「海」(1964年)と合わせ、印象派管弦楽曲の演奏解釈の基準になったと評されます。当時の専門誌FonoForum(1966年12月号)は、美的に完成され音響も見事で、録音技術も高水準と評価しました。 (音源の投稿元(Herbert von Karajan - Topic)はoEmbedで確認済みです。動画は終曲「キエフの大門」のトラックで、1966年盤か1986年盤かは未確認です。) ## トリビア - ラヴェル版ではプロムナードの一つが省かれています。 - キエフの大門は英語では「The Great Gate of Kiev」のほか、「ボガトゥイリの門」とも訳されます。 - ハルトマンの絵の多くは失われており、どの絵に対応するか不明な曲も多いです。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Pictures_at_an_Exhibition - https://www.wienersymphoniker.at/en/opus/pictures-exhibition-orchestration-maurice-ravel - https://gramophone.co.uk/articles/mussorgsky-s-pictures-at-an-exhibition-orch-ravel-a-guide-to-the-best-recordings - https://www.deutschegrammophon.com/de/kuenstler-innen/von-karajan/pressestimmen/meisterstueck-mit-folgen-66102 --- # 動物の謝肉祭 第13曲「白鳥」(チェロとピアノ版を中心に) - 英題: Le Cygne (The Swan), from The Carnival of the Animals - 作曲者: カミーユ・サン=サーンス(ロマン派(後期ロマン派・フランス)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1886年(組曲の作曲)/1887年(チェロとピアノ1台版の出版) - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/le-cygne.html 動物の謝肉祭の中で唯一、作曲者が生前の公開を許した曲です。チェロが水面を滑る白鳥のように静かに歌い、後にバレエ『瀕死の白鳥』でも知られました。 ## 作曲の経緯 1885〜86年のドイツ演奏旅行がうまくいかなかったサン=サーンスは、オーストリアの小さな村にこもり、1886年2月に組曲『動物の謝肉祭』を書き上げました。出版社デュランへの手紙では、本来は第3交響曲に取り組むべきなのに「こんなに楽しい」と打ち明けています。組曲は、チェリストのシャルル・ルブークが開いた私的な演奏会で初演され、タファネルらが参加しました。作曲者は戯れの要素が強い作品が自分の評判を損なうと考え、生前の出版と公開演奏を禁じたが、チェロ独奏の「白鳥」だけは例外で、1887年に自身の編曲したチェロとピアノ1台の版で出版されました。1905年にはフォーキンがこの曲に『瀕死の白鳥』を振り付け、パヴロワが踊って世界的に知られるようになりました。 ## 出版・初演 「白鳥」のみ1887年にチェロとピアノ1台版で生前出版されました。全曲は没後の1922年4月にパリのデュランから出版され、1922年2月25日にピエルネ指揮コンセール・コロンヌが最初の公開演奏を行い熱狂的に迎えられました。私的初演の日付は資料により異なります(英語版Wikipediaは1886年3月3日のルブーク宅の演奏会、日本語版Wikipediaは3月9日)。 ## 題名・通称の由来 動物の謝肉祭の一曲として白鳥を描いたものです。「スワン・ソング(白鳥は死の間際に最も美しく歌う)」という古代ギリシャ以来の俗信に結びつけて、美の儚さを描いた作品と解釈されることがあります。「瀕死の白鳥」の通称は、後にパヴロワのバレエ小品が付けられたことによります。 ## 構成分析 - 導入部: ピアノ2台が細かい分散和音(片方は16分音符のさざ波、もう片方は和音)で水面を描き、その上にチェロが入ります。 - 主旋律: ゆったりとしたチェロの歌が、水面を滑る白鳥を思わせる息の長い旋律線で続きます(全28小節)。 - 終結: 静かに旋律が収まり、穏やかに終わります。 ## 音楽的特徴 チェロの長いレガート旋律を、ピアノのほぼ絶え間ない分散和音が支えます。組曲中、風刺や引用の冗談がほぼない真摯な曲で、サン=サーンスが生前に公開を許した唯一の楽章です。チェロ以外にもヴィオラ、ダブルベース、テルミン、声楽(ヴォカリーズ)、ピアノ独奏編曲(ゴドフスキー、ジロティ)など多数の編曲があります。 ## 演奏のポイント 弓の長さを使ったレガートと、ヴィブラートの繊細な加減が聴きどころです。ピアノは水面の揺れを保ちつつ、チェロの歌を邪魔しない音量配分が要になります。 ## この音源について - 演奏: ヨーヨー・マ(チェロ)、フィリップ・アントルモン(指揮・ピアノ)、ガビー・カサドシュ(ピアノ) - アルバム: 未確認(1978年の『動物の謝肉祭』録音。後に『Appassionato』(2007)にも収録) - レーベル: 未確認(CBS系、現Sony Classical) - 録音: 1978 - 録音場所: パリ 1978年、ヨーヨー・マは結婚式の翌日、新設されたスポレート・フェスティヴァル(サウスカロライナ州チャールストン)に滞在していたところへ、パリで録音するよう呼び出しの連絡を受けたといいます。指揮はフィリップ・アントルモンで、2台ピアノの一方をアントルモン自身が、もう一方をガビー・カサドシュが弾きました。マは幼少期にパリで育ち、この曲を早い時期に習っており、特別な思い入れがあったと紹介されています。この録音は2007年のアルバム『Appassionato』で最も古い収録曲として再登場しました。 (音源の投稿元(Yo-Yo Ma - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - サン=サーンスは組曲の生前出版を禁じたが、「白鳥」だけは1887年に出版を許しました。 - パヴロワは『瀕死の白鳥』を約4,000回踊ったと伝えられます(英語版Wikipedia、アルフレッド・フランケンスタインのライナーノーツ引用)。 - 羽生結弦はイル・ヴォーロ版『Notte Stellata』を2011年の東日本大震災の追悼の思いを込めたエキシビション・プログラムとして用いました(英語版Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Le_Cygne - https://en.wikipedia.org/wiki/The_Carnival_of_the_Animals - https://ja.wikipedia.org/wiki/動物の謝肉祭 - https://www.mprnews.org/story/2007/02/13/yo-yo-ma-keeps-alive-the-passion --- # 組曲「惑星」より 木星(快楽をもたらす者) - 英題: Jupiter, the Bringer of Jollity (The Planets, Op. 32) - 作曲者: グスターヴ・ホルスト(20世紀・近代イギリス) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1914(「木星」の作曲)/1917(管弦楽化の完成) - 作品番号: Op.32(H.125)第4曲 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/jupiter.html 活気ある舞曲風の主部と、中間部の広い旋律の対比が魅力です。中間部は英国の賛歌と平原綾香『Jupiter』の原曲にもなった、ホルスト『惑星』の代表楽章です。 ## 作曲の経緯 組曲『惑星』は1914年から1917年にかけて書かれ、「木星」は火星・金星に続き1914年の終わり頃に作曲されました。構想の発端は1913年春、ホルストが友人バルフォア・ガーディナーやバックス兄弟とスペインを旅したときの占星術をめぐる会話とされ、曲は天文学ではなく占星術上の性格づけに基づきます。当時ホルストはセント・ポール女学校とモーリー・カレッジの音楽教師で、作曲に使えたのは週末と休日だけでした。右腕の神経炎も重く、200ページ近い総譜の清書は同僚2人の手を借りたといいます。まずピアノ用に書かれ、管弦楽への書き直しは1917年に終わりました。ホルスト自身は、「木星」は日常的な意味での陽気さに加え、宗教的・国家的な祝祭に伴う儀式的な喜びももたらす、と記者に語っています。 ## 出版・初演 組曲の初演は1918年9月29日、ロンドンのクイーンズ・ホールです。エイドリアン・ボールト指揮、招待客約250人の非公式な会でした。1919年2月27日の王立フィルハーモニック協会の演奏会では「木星」を含む5曲が一般公開で演奏されました。全曲の初の公開演奏は1920年11月15日、アルバート・コーツ指揮ロンドン響です。総譜はブージー&ホークス社から出版されました(1921年版)。 ## 題名・通称の由来 副題の「Bringer of Jollity」は占星術上の木星の性格づけに由来します。ホルストは「日常的な喜びと、宗教的・国家的な祝祭のより儀式的な喜び」を指すと説明しました。日本語では「快楽」のほか「歓喜」などと訳されます。中間部の旋律は1921年に詩「I Vow to Thee, My Country」の旋律に転用され、のち賛歌曲「サクステッド」の名で知られています。日本では2003年に平原綾香『Jupiter』(吉元由美作詞)の旋律にもなりました。 ## 構成分析 - 第1〜第3主題(Allegro giocoso): ホルンの快活な第1主題で始まり、リズミカルな第2主題、舞曲風の素朴で明るい第3主題が続きます。 - 中間部(Andante maestoso): 弦とホルンが歌う厳かな第4主題です。冒頭の半分の速さで3/4拍子、変ホ長調です。この旋律が賛歌「我は汝に誓う、我が祖国よ」と平原綾香『Jupiter』の原曲となりました。 - 再現部: 第1〜第3主題が再現し、第4主題がロ長調で戻ります。 - 結尾: 全管弦楽による3連続フォルテ(fff)の一撃の和音で終わります。 ## 音楽的特徴 曲全体は活気に満ちた舞曲風の部分と、中間部の広い歌とのコントラストで成り立ちます。中間部の旋律は終止が解決しないまま次へ進む点も特徴とされます。『惑星』は大編成(オルガン、チェレスタ、テナーチューバなどを含む)で書かれており、この楽章でもその音色の幅が生かされます。 ## 演奏のポイント ①冒頭のホルンの呼びかけと、舞曲風の主題の弾むリズムに耳が向きます。②中間部の第4主題は、ゆったりした歩みの中で幅広く歌います(ホルスト自身の録音は、のちの賛歌のイメージとは違う作りだと研究者が指摘しています)。③再現部でロ長調に戻る第4主題の高揚も聴きどころです。④最後のfffの一撃まで楽しみたいです。 ## この音源について - 演奏: レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(女声合唱:カメラータ・シンガーズ) - アルバム: 未確認(Sony Classicalの「2017年リマスター版」として配信。原盤はコロンビア録音の『惑星』) - レーベル: Columbia(原盤)/Sony Classical(再発) - 録音: 1971 - 録音場所: エイヴリー・フィッシャー・ホール(ニューヨーク。Wikipediaの録音一覧の記載による) バーンスタインとニューヨーク・フィルによる『惑星』は、1971年12月初めにニューヨークで録音され、1973年に発売されました。女声合唱はカメラータ・シンガーズの女声です。LPの後、CDで1985年と1997年に再発され、2022年にはDuttonからSACDにもなりました。この音楽は、1972年3月に放送されたバーンスタインの最後の「ヤング・ピープルズ・コンサート」の題材にもなっています。この盤の「木星」は、組曲を締めくくる前の華やかな楽章として収められています。 (音源の投稿元(Leonard Bernstein - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - (Ken Russell's View of) The Planets(1983): 『惑星』の音楽を使ったテレビ放送用のモンタージュ映像です。使用音源はオーマンディ指揮フィラデルフィア管の録音です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%91%E6%98%9F_(%E7%B5%84%E6%9B%B2) ## CM - ACジャパン(旧・公共広告機構)「臨時キャンペーン・災害支援『できること』篇」: 2005年です。平原綾香『Jupiter』がCMソングとして使用されています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/Jupiter_(%E5%B9%B3%E5%8E%9F%E7%B6%BE%E9%A6%99%E3%81%AE%E6%9B%B2) ## トリビア - ホルストは『惑星』の抜粋演奏、特に明るい「木星」で締める形を嫌い、「本当の作品では終わりは幸せではない」と語ったと娘イモージェンが伝えています。 - 1921年に詩「I Vow to Thee, My Country」に曲を付ける依頼を受けたとき、ホルストは疲れ切っていたが、詩が『木星』の旋律にうまく収まると分かって安堵した、とイモージェンが記しています。 - 平原綾香『Jupiter』は、ホルストの原曲に日本語詞を付けて歌うことを本人が提案して生まれました。作詞は吉元由美です。ホルストは1934年没で、2003年の時点で日本では原曲の著作権が切れていました。オリコン週間1位なしでデビュー曲が100万枚に到達したのは、倉木麻衣のデビュー曲以来7年ぶりでした。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/The_Planets_(Holst) - https://en.wikipedia.org/wiki/I_Vow_to_Thee,_My_Country - https://en.wikipedia.org/wiki/The_Planets_discography - https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%91%E6%98%9F_(%E7%B5%84%E6%9B%B2) - https://ja.wikipedia.org/wiki/Jupiter_(%E5%B9%B3%E5%8E%9F%E7%B6%BE%E9%A6%99%E3%81%AE%E6%9B%B2) - https://imslp.org/wiki/The_Planets,_Op.32_(Holst,_Gustav) - https://karajan.org/stories/spotlight-holst-the-planets --- # トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 - 英題: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565 - 作曲者: ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(真作性に異論あり)(バロック) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1704年頃〜1750年代(成立年は不明で諸説) - 作品番号: BWV 565 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/toccata-fugue-dm.html オルガン曲を代表する一曲で、劇的な冒頭と16分音符のフーガが続きます。バッハ作とされてきたが、真作性には1981年以来異論もあり、結論は出ていません。 ## 作曲の経緯 BWV565の成立事情は実のところはっきりしません。バッハ自筆譜は残っておらず、近い時期の唯一の資料は、バッハの弟子ケルナーに学んだヨハネス・リンクの写本で、作成は1730年代〜1750年代と資料により幅があります。作曲時期も1704年頃〜1750年代と広く見積もられ、アルンシュタット時代の若書きとする見方もあります。1833年にメンデルスゾーンが構想し部分的に準備した「あまり知られていないオルガン曲」集で初めて出版され、1840年8月6日にはライプツィヒで彼が演奏して評判を呼びました。20世紀にはストコフスキーの管弦楽編曲(1927年)とディズニー映画『ファンタジア』(1940年)で一気に有名になり、オルガン曲を代表する一曲となりました。 ## 出版・初演 初出版は1833年です(メンデルスゾーンが関わった『あまり知られていないオルガン曲』集の第3分冊)。1846年C.F.ペータース、1867年バッハ協会全集(第15巻)、1964年新バッハ全集などで刊行されました。最初の大きな公開演奏は1840年8月6日、メンデルスゾーンによるライプツィヒでの演奏です。 ## 題名・通称の由来 リンク写本の表題は伊語で「Toccata con Fuga」です。同じニ短調の別作品(BWV538)が通称「ドリア調」と呼ばれて区別されていたが、1950年のBWV(バッハ作品目録)刊行以降は番号で呼ばれます。 ## 構成分析 - トッカータ: 右手と足鍵盤の有名なオクターヴ重ねのモルデント音型で始まり、減七和音から跳ね上がります。冒頭はニ短調の主和音へ解決し、以降は即興風の音型が続きます。 - フーガ: 16分音符のみの主題による4声のフーガです。応答が下属調で行われる点が珍しく、足鍵盤が単独で主題を弾く箇所もあります。終わり近くで変ロ長調の持続和音に至ります。 - 終結部(レチタティーヴォ): わずか17小節の間に5度テンポが変わり、最後はMolto adagioでの短調の変格終止で閉じます。 ## 音楽的特徴 嵐を描いた標題音楽という見方がある一方、ディズニー『ファンタジア』では抽象的な絶対音楽として使われました。ヴァイオリン的な音型や、平行オクターヴ、単純な和声などが真作性をめぐる論点になっています。 ## 演奏のポイント 冒頭のモルデントを含むトッカータの息づかいと、フーガ主題の16分音符の明晰さが聴きどころです。演奏時間は通常9分前後で、リング(Ringk)写本に基づく版では足鍵盤の扱いなどが版により異なります。レジストレーション(音色選択)で印象が大きく変わります。 ## この音源について - 演奏: ヘルムート・ヴァルヒャ(オルガン) - アルバム: 未確認(ヴァルヒャのARCHIV Produktion録音。1947年モノ盤または1956年以降のステレオ全集のいずれか、どの音源かは未確認) - レーベル: Archiv Produktion(Deutsche Grammophon) - 録音: 未確認(ヴァルヒャの録音は1947年と1956年) - 録音場所: 未確認 ヴァルヒャが1947年夏にARCHIV Produktionのために行った最初の録音がこのニ短調トッカータで、当時はまだ78回転のSP盤でした。LPの登場後にバッハのオルガン作品全集を録音し、のちにステレオで全曲を再録音した際も、1956年にDGが初めて手がけたステレオ録音として選ばれたのはこの曲でした。ジャケットでの扱いも次第に大きくなり、1963年録音は後にDGの『Classic Mania』セットに含まれる唯一のバッハ作品になったといいます(英語版Wikipedia)。なおYouTube音源がどの年の録音かは確認できていません。 (音源の投稿元(Helmut Walcha - Topic)はoEmbedで確認済みです。どの年の録音かは未確認です。) ## 映画・ドラマ - ジキル博士とハイド氏(1931): BWV565の最初期の音声映画での使用例の一つです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Toccata_and_Fugue_in_D_minor,_BWV_565 - 黒猫(The Black Cat)(1934): ホラー的な使い方です(英語版Wikipediaの記載)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Toccata_and_Fugue_in_D_minor,_BWV_565 - ファンタジア(1940): 冒頭の「トッカータとフーガ」です。ストコフスキー編曲で、ほぼ抽象的な映像と共に使用されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Toccata_and_Fugue_in_D_minor,_BWV_565 - 海底二万哩(1954): ネモ船長がノーチラス号のオルガンで演奏します。 https://en.wikipedia.org/wiki/Toccata_and_Fugue_in_D_minor,_BWV_565 - 夕陽のガンマン(1965): モリコーネがトッカータの冒頭を引用しています。廃教会での決闘場面で、オルガンが全開で鳴ります。 https://en.wikipedia.org/wiki/Toccata_and_Fugue_in_D_minor,_BWV_565 - ローラーボール(1975): 作品の冒頭と終盤で使用されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Toccata_and_Fugue_in_D_minor,_BWV_565 ## トリビア - リンク写本の表題は伊語の「Toccata con Fuga」で、最初の出版(1833年)の表紙にはピアノでの演奏も可能と示されていました。 - 1981年にピーター・ウィリアムズが、原曲はヴァイオリン曲で、後にオルガンへ編曲されたのではないかと提起しました。一方クリストフ・ヴォルフはバッハの作と考え、ツェンダーは「反証がない限りバッハの作品として扱うべき」と述べました。 - BWV565は1940年のディズニー『ファンタジア』の冒頭曲だが、1942年の映画公開版ではカットされ、1946年の再公開で戻りました(英語版Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Toccata_and_Fugue_in_D_minor,_BWV_565 - https://www.deutschegrammophon.com/de/kuenstler-innen/diverse-kuenstler/neuigkeiten/helmut-walcha-organist-mit-leib-und-seele-263124 - https://en.wikipedia.org/wiki/Helmut_Walcha --- # ビゼー「アルルの女」第2組曲より ファランドール - 英題: L'Arlésienne Suite No. 2: IV. Farandole - 作曲者: ジョルジュ・ビゼー(第2組曲の編曲: エルネスト・ギロー)(ロマン派(フランス)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 付随音楽1872年/第2組曲1879年 - 作品番号: 第2組曲(作品番号なし) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/farandole.html ビゼー「アルルの女」第2組曲の終曲です。プロヴァンスの行進曲と舞曲の旋律が重なり、タンブランが響く熱狂的なクライマックスへ駆け上がります。行進曲と舞曲を一度に楽しめるところにも、ビゼーの音楽の面白さを感じます。 ## 作曲の経緯 「アルルの女」はアルフォンス・ドーデの戯曲のための付随音楽で、1872年9月30日にパリのヴォードヴィル座で初演されました。ビゼーは合唱24人と26人ほどの小編成の楽団のために27曲を書いたが、初演は不評で19回で打ち切られました。その後、ビゼー自身が管弦楽用の第1組曲を作り、彼の死後の1879年に出版社ショードンが第2組曲を依頼し、友人ギローが編曲・構成しました。第2組曲は、パストラール、間奏曲、メヌエット(歌劇「美しきパースの娘」の音楽)、ファランドールの4曲で、ファランドールは付随音楽の第22曲フィナーレと第23曲間奏曲・合唱を凝縮したものとされます。プロヴァンスの太鼓タンブランとフルート・ピッコロを用いた旋律に、行進曲「王たちの行進(3人の王の行列)」が重なります。 ## 出版・初演 付随音楽: 1872年9月30日初演されました(ヴォードヴィル座)。第2組曲: 1879年、ショードン社が委嘱しました(編曲者名は楽譜に記載がありません)。 ## 題名・通称の由来 ファランドールはプロヴァンス地方の舞曲の名です。旋律「Danso dei Chivau-Frus(馬の踊り)」に由来します。 ## 構成分析 - 第22曲Final(劇音楽): 『馬の踊り』の旋律を含みます。第2組曲ではファランドールの一部になります。 - 第23曲Entr'acte and Chorus: 合唱が管弦楽に置き換えられファランドールに編入されています。 - ファランドール: 短調の『3人の王の行列』と長調の『馬の踊り』が組み合わされ、クライマックスへ進みます。 ## 音楽的特徴 プロヴァンス民謡の二つの旋律を対位的に重ね、フルート・ピッコロ・タンブランで舞曲の色彩を出し、大きな盛り上がりで曲を終えます。 ## 演奏のポイント タンブランの扱い(楽譜にはプロヴァンス式の大型タンブランを指定)と、二つの主題が重なる箇所の明瞭な処理が聴きどころです。 ## この音源について - 演奏: シャルル・デュトワ指揮 モントリオール交響楽団(演奏者名はYouTubeチャンネル名Orchestre symphonique de Montréal - Topicから。指揮者・アルバムとの一致は未確認) - アルバム: L'Arlésienne & Carmen Suites(Decca 417 839-2、グラモフォン誌レビューに基づく。YouTube動画との一致は未確認) - レーベル: Decca - 録音: 未確認 - 録音場所: Church of St Eustache, Montreal(グラモフォン誌レビューによる) グラモフォン誌のレビューによれば、デュトワ指揮モントリオール響の「アルルの女」「カルメン」組曲は、プロデューサーのレイ・ミンシャル率いるDecca録音チームが、実績あるモントリオールのサン・ウスタシュ教会で収録しました。第2組曲ではフルートのティモシー・ハッチンスの滑らかな音が称賛され、録音は鮮やかで空間も豊かです。ただしファランドールでは大太鼓などの打楽器が響き過ぎるとの指摘もありました。マリナー(Philips)やオザワ(EMI)の盤より推薦されています。 (音源の投稿元(Orchestre symphonique de Montréal - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ギローは第2組曲のため、のちに『神の子羊(Agnus Dei)』としても歌われる間奏曲を再利用しました。 - 第2組曲のメヌエットは、ビゼーの歌劇「美しきパースの娘」の音楽から転用されたものです。 - ファランドールのテーマは、ミヒマルGTの「Theme of mihimaLIVE 2」にも使われています(英語版Wikipediaの記述)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/L%27Arl%C3%A9sienne_(Bizet) - https://ja.wikipedia.org/wiki/アルルの女 - https://imslp.org/wiki/L'Arlésienne_Suite_No.2_(Bizet,_Georges) --- # 歌劇「カルメン」前奏曲(第1幕への前奏曲) - 英題: Prelude to Act 1 of Carmen - 作曲者: ジョルジュ・ビゼー(ロマン派(フランス)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1875 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/carmen-prelude.html 闘牛士の行進と歌の旋律が輝く幕開けのあと、運命の動機が弦のトレモロの上で不穏に響きます。ビゼーが全曲の悲劇を先取りした前奏曲です。 ## 作曲の経緯 『カルメン』は、メリメの小説をもとに、アンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィが台本を書き、ビゼーが作曲した4幕のオペラ・コミックです。1875年3月3日にパリのオペラ=コミック座で初演されました。台詞でつなぐ形式で書かれ、初演は聴衆に衝撃を与えたと伝えられます。ビゼーは同年6月4日に急死し、ウィーン上演のために台詞をレチタティーヴォに改める作業は友人エルネスト・ギローが引き継ぎました。第1幕への前奏曲は、のちに登場する闘牛士の入場の音楽、闘牛士の歌の旋律、カルメンと宿命を象徴する動機を先取りして並べます。祝祭的な華やかさで始まり、最後は運命の動機が弦のトレモロの上で不穏に鳴り、急激なクレッシェンドで閉じます。 ## 出版・初演 初演:1875年3月3日、パリ・オペラ=コミック座です(指揮アドルフ・ドゥロフル)。声楽譜はショードン社(1875)、管弦楽総譜は1877年です。 ## 題名・通称の由来 Prelude(前奏曲)は第1幕への導入曲です。『カルメン』の題名は、メリメの小説およびその主人公の名によります。 ## 構成分析 - 祝祭的な主部(Allegro giocoso): 第4幕の闘牛士たちの入場の音楽と、第2幕『闘牛士の歌』の旋律が華やかに響きます。組曲では『闘牛士』として独立して演奏されます。 - 運命の動機: クラリネット、ファゴット、コルネット、チェロが、弦のトレモロの上で運命の動機を奏します。 - 結び: 運命の動機が急激なクレッシェンドを伴って前奏曲を締めくくり、幕が開くと明るく陽気な空気に切り替わります。 ## 音楽的特徴 オペラ全体を支配する運命の動機が、冒頭からすでに提示される点に注目したいです。第4幕の悲劇的な結末を予告する音の使い方が、前奏曲に含まれています(英Wikipedia)。 ## 演奏のポイント 祝祭的な主部の輝かしい金管と、最後に現れる運命の動機の陰りの落差が最大の聴きどころです。日本の組曲版では前半が『終曲(闘牛士)』として、後半が『前奏曲〜アラゴネーズ』の冒頭として分けて演奏されることがあります(日本語Wikipedia)。 ## この音源について - 演奏: ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - アルバム: Bizet: L'Arlésienne Suites Nos. 1 & 2 / Carmen Suite No. 1 - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1982 - 録音場所: ベルリン、フィルハーモニー 『カルメン』の前奏曲を含むこの抜粋は、1982年9月26日にベルリンのフィルハーモニーでカラヤンとベルリン・フィルが録音しました。前奏曲のほか、第1幕後の『アルカラの竜騎兵』、第2幕後の間奏曲、第3幕後の『アラゴネーズ』を収め、合計9分8秒です。アルルの女の両組曲は1984年2月19日に同じホールで録音され、アルバムは1985年にDGから発売されました。 (音源の投稿元(Berliner Philharmoniker - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 教科書・鑑賞教材 - 高校音楽Ⅰ「歌劇『カルメン』」授業実践(学芸大附属学校図書館DB): 運命のモティーフに着目して前奏曲とハバネラを鑑賞する授業計画です。特定の教科書名は記載がありません。 https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib_v2/uploads/multidatabase/10130.pdf ## トリビア - 『カルメン』は初演が失敗したと言われるが、ビゼーが亡くなった時点で上演回数はすでに30回を超えていたとされます(日本語Wikipedia)。 - 第2組曲を含む『カルメン』組曲として一般に知られる版は、ギローの編曲によるショードン社版と、ホフマンによるブライトコプフ版です(日本語Wikipedia)。 - 『ハバネラ』はスペインの作曲家イラディエルの『エル・アレグリート』を元にしており、ビゼーは民謡と思い込んで使ったが、後に声楽譜でイラディエルの名を示しました(英Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Carmen - https://ja.wikipedia.org/wiki/カルメン_(オペラ) - https://imslp.org/wiki/Carmen_(Bizet,_Georges) - https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib_v2/uploads/multidatabase/10130.pdf - https://www.prestomusic.com/classical/products/7941251--bizet-larlesienne-suites-1-2-and-carmen-suite-no-1 --- # 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲 - 英題: Intermezzo from Cavalleria rusticana - 作曲者: ピエトロ・マスカーニ(後期ロマン派(ヴェリズモ・オペラ)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1890(歌劇の初演年。間奏曲単独の作曲年は未確認) - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/cavalleria-intermezzo.html 復讐の誓いの直後、無人の広場に流れるマスカーニの静かな間奏曲です。弦の長い旋律が嵐の前の静けさを描き、映画『レイジング・ブル』でも知られています。 ## 作曲の経緯 1888年7月、ミラノの出版社ソンゾーニョが、舞台上演の経験がない若手イタリア人作曲家を対象に一幕物オペラのコンクールを告知しました。マスカーニは締切のおよそ2か月前にこれを知り、友人で詩人のタルジョーニ=トッツェッティにヴェルガの短編・戯曲『カヴァレリア・ルスティカーナ』の台本化を頼みます。台本はギデナシと共同で、葉書の裏に数節ずつ送られてきたといいます。出来に自信が持てなかったマスカーニが草稿を引き出しにしまい込むと、妻リーナがそれを取り出し、受付最終日に応募しました。73作のなかから最終の3作に選ばれ、1890年5月17日にローマのコスタンツィ劇場で初演されて大成功を収めます。間奏曲は、アルフィオが復讐を誓った直後、人けのなくなった広場で流れる静かな一曲です。 ## 出版・初演 初演:1890年5月17日、ローマ・コスタンツィ劇場です(指揮レオポルド・ムニョーネ)。初版:1890年ミラノ、ソンゾーニョ社です(IMSLP)。 ## 題名・通称の由来 歌劇の題名 Cavalleria rusticana は『田舎の騎士道(農民の名誉)』の意味です(英Wikipedia)。Intermezzoは幕の間に置かれる間奏曲の意味です。 ## 構成分析 - 位置づけ: 歌劇の唯一の幕間です。アルフィオがトゥリッドゥへの復讐を誓う場面の直後、舞台は無人のまま管弦楽だけが奏されます。 - 素材: 旋律は、歌劇冒頭の復活祭ミサで合唱が歌う『レジーナ・チェリ』の聖歌に基づくとされます(AllClassical解説)。 - 表情: 嵐の前の静けさを作る穏やかな一曲です。主旋律を弦が歌い、オルガンやハープが加わる編成が歌劇の指定にあります。 ## 音楽的特徴 ヴェリズモ(写実主義)の血なまぐさい筋立ての只中に置かれた、きわめて抒情的で静謐な間奏曲です。歌劇の編成にはオルガン、ハープ2台、チューブラーベルなどが含まれます。 ## 演奏のポイント 息の長い弦の旋律をどこまで途切れさせずに歌い継げるかが要です。直前の緊迫と直後の酒盛りの場面との落差を意識し、テンポを急がず静けさを保つと、劇中での役割が際立ちます。 ## この音源について - 演奏: ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(オルガン:ヴォルフガング・マイヤー) - アルバム: Opera Intermezzi(オペラ間奏曲集) - レーベル: Deutsche Grammophon(Karajan Master Recordings として2007年再発) - 録音: 1967 - 録音場所: ベルリン、イエス・キリスト教会(Jesus-Christus-Kirche) この間奏曲は1967年9月25日、ベルリンのイエス・キリスト教会でカラヤンとベルリン・フィルが録音しました。同じ日付で『椿姫』前奏曲、『道化師』『マノン・レスコー』『タイス』の瞑想曲、『友人フリッツ』の間奏曲など、全12曲のオペラ間奏曲集が収められています。カヴァレリアのトラックではヴォルフガング・マイヤーがオルガンを担当しました。『Stereo Record Guide』は、この演奏の落ち着いた息づかいを評価しています。 (音源の投稿元(Wolfgang Meyer - Topic)はoEmbedで確認済みです。同名義のTopic動画が2本あり、1967年盤との対応は検索表示からの推定です。) ## 映画・ドラマ - レイジング・ブル(1980): 冒頭のタイトル場面とエンドクレジットで使用されています(英Wikipedia『Cavalleria rusticana』)。OperaWireはこれを冒頭と終幕を挟む『ブックエンド』として論じています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cavalleria_rusticana - ゴッドファーザー PART III(1990): 終盤の場面で間奏曲が使われ、同作の山場では歌劇そのものの上演も描かれます(英Wikipedia)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cavalleria_rusticana ## トリビア - 歌劇は、妻リーナが引き出しから草稿を取り出してコンクールに応募したことで世に出たと伝えられます(英Wikipedia)。 - 1893年以降、歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』はレオンカヴァッロの『道化師』との二本立て(Cav/Pag)で上演されることが多いです(英Wikipedia)。 - 1920年代のシカゴの黒人劇場では、アースキン・テイト楽団がこの歌劇の音楽を演奏し、ルイ・アームストロングがトランペットのソロを覚えて演奏したといいます(英Wikipedia、Brothers 2014を出典とする記述)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Cavalleria_rusticana - https://operawire.com/opera-meets-film-how-the-cavalleria-rusticana-intermezzo-contextualizes-creates-character-in-raging-bull/ - https://imslp.org/wiki/Cavalleria_rusticana_(Mascagni,_Pietro) - https://research.allclassical.org/composer/mascagni-pietro/intermezzo-from-cavalleria-rusticana/ - https://www.kokomu.jp/sheet-music/intermezzo-cavalleria-rusticana-mascagni-cello-piano-143104 - https://www.prestomusic.com/classical/products/7960520--opera-intermezzi --- # 弦楽のためのアダージョ 作品11 - 英題: Adagio for Strings, Op. 11 - 作曲者: サミュエル・バーバー(20世紀(アメリカ)) - カテゴリ: 管弦楽・室内楽 - 作曲年: 1936年(編曲)/1938年(初演) - 作品番号: Op. 11(弦楽四重奏曲 Op. 11 の第2楽章の編曲) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/barber-adagio.html 弦楽四重奏曲の緩徐楽章を弦楽合奏に編曲した、静かに高まっていく名曲です。1938年にトスカニーニが初演し、追悼の場でも多く演奏されてきました。 ## 作曲の経緯 バーバーは1936年、パートナーのメノッティとヨーロッパで夏を過ごした時期に弦楽四重奏曲 作品11を書き、その第2楽章を同年に弦楽合奏用に編曲しました。ウェルギリウスの『農耕詩』に触発されたとされます。1938年1月に編曲版の総譜をトスカニーニに送ったところ、何のコメントもなく返却されたため、作曲者は気を悪くしました。のちにトスカニーニはメノッティを通じて、すでに暗譜していたので返しただけだと伝えてきたといいます。初演は1938年11月5日、ニューヨークのロックフェラー・センターNBCスタジオ8Hで、トスカニーニ指揮NBC交響楽団がラジオ放送の形で行いました。初演直後の批評は割れたが、オリン・ダウンズは高く評価しました。 ## 出版・初演 1938年11月5日、トスカニーニ指揮NBC交響楽団がNBCスタジオ8Hから放送初演しました(録音も残されています)。トスカニーニは1940年の南米ツアーや欧州でも取り上げました。1942年4月にはオーマンディ指揮フィラデルフィア管がカーネギー・ホールで演奏しました。出版社はG.シルマーです(オルガン編曲版1949年ほか)。 ## 題名・通称の由来 曲名は速度標語の「アダージョ(ゆるやかに)」に由来し、作曲者名をつけて「バーバーのアダージョ」とも呼ばれます。1967年には同じ音楽に典礼文を付した合唱曲『アニュス・デイ』も作られました。 ## 構成分析 - 冒頭: 第1ヴァイオリンが静かな変ロ音で始まり、2拍遅れて低弦が入ります。段をのぼるような旋律が始まります。 - 上昇部: 旋律が重なり合いながら、ルネサンス風のポリフォニーを思わせる響きで高まっていきます。 - クライマックス: 4つの力強い和音と長いフェルマータの沈黙です。 - 回帰と終結: 冒頭の主題が戻り、解決しない属和音で消えるように終わります。 ## 音楽的特徴 アーチ形の構成と、規則的な拍子に5/2・6/2・3/2の小節を挟んで脈拍を微妙に揺らす手法が特徴です。和声は素朴な三和音が基調で、聖歌のような旋律を持ちます。演奏時間は多くの録音で8分前後です。 ## 演奏のポイント 静かな始まりから息の長いクレッシェンドで頂点へ向かうバランスと、頂点後の大きな休止の保ち方が聴きどころです。録音により演奏時間にかなり幅があり(例:ニューヨーク・フィルのバーンスタイン盤は9分54秒)、テンポ選択が表情を大きく左右します。 ## この音源について - 演奏: レナード・バーンスタイン(指揮)。オーケストラは未確認(ニューヨーク・フィルとロサンゼルス・フィルの両方に録音があり、この音源がどちらかは確認できていない) - アルバム: 未確認(候補:ニューヨーク・フィル盤『Barber: Adagio for Strings & Copland』Sony Classical、1971年リリース/ロサンゼルス・フィル盤 DG) - レーベル: 未確認(Sony ClassicalまたはDeutsche Grammophon) - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 この音源の収録経緯(セッション日や会場)は確認できませんでした。確認できた事実は次のとおりです。ニューヨーク・フィルとのバーンスタイン盤はSony Classicalから『Barber: Adagio for Strings & Copland』として1971年にリリースされ、本曲の演奏時間は9分54秒です。『グラモフォン』はバーンスタインのロサンゼルス・フィル盤(DG)について、テンポは非常に遅いが過度な思い入れは避けられ弦が洗練されていると評しています。また1981年のバーバー没後間もなく、バーンスタインはニューヨーク・フィルの4回連続の演奏会でこの曲を追悼として指揮しました。 (音源の投稿元(Leonard Bernstein - Topic)はoEmbedで確認済みです。オーケストラ・録音盤は未確認です。) ## 映画・ドラマ - エレファント・マン(1980): 作品中で使用されています(具体的な場面は未確認です)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Adagio_for_Strings - プラトーン(1986): 作品中で使用されています(具体的な場面は未確認です)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Adagio_for_Strings - ローレンツォのオイル/命の詩(1992): 作品中で使用されています(具体的な場面は未確認です)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Adagio_for_Strings - アメリ(2001): 軽妙・ユーモラスな使われ方として挙げられています(具体的な場面は未確認です)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Adagio_for_Strings ## トリビア - トスカニーニは最初の総譜を返却したが、あとで暗譜していたからだと伝えました。初演前日まで再び譜面を見なかったといいます。 - 1938年の初演録音は2005年に米議会図書館の国家保存録音登録簿へ登録されました。 - 2004年のBBCラジオ4『Today』番組の聴取者投票で「最も悲しいクラシック曲」に選ばれました。ケネディ大統領の葬儀後の放送などで流れ、「アメリカの準公式な追悼音楽」とも称されるが、バーバーは「いつもこの曲ばかり」とぼやいたといいます(1978年のインタビュー)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Adagio_for_Strings - https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽のためのアダージョ - https://www.loc.gov/programs/static/national-recording-preservation-board/documents/ADAGIO%20FOR%20STRINGS.pdf - https://gramophone.co.uk/feature/barber-adagio-for-strings-a-quick-guide-to-the-best-recordings --- # 歌劇「トゥーランドット」より 誰も寝てはならぬ - 英題: Nessun dorma (from Turandot) - 作曲者: ジャコモ・プッチーニ(ロマン派(後期)) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1924年頃(未完のまま作曲者死去)/初演1926年 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/nessun-dorma.html プッチーニ最後の歌劇『トゥーランドット』第3幕で、王子カラフが夜明けの勝利を確信して歌う名アリアです。静から高揚へ進む旋律が魅力です。 ## 作曲の経緯 『トゥーランドット』はプッチーニ最後のオペラで、1924年の作曲者の死により未完のまま残され、終盤はフランコ・アルファーノが補筆しました。台本はアダーミとシモーニです。冷酷な姫トゥーランドットは求婚者に三つの謎を課し、解けなければ処刑します。王子カラフは謎を解くが姫は結婚を拒み、そこで彼は夜明けまでに自分の名を当てられたら命を差し出すと申し出ます。姫は国中に、名が分かるまで誰も眠ってはならぬと命じます。第3幕の冒頭、月明かりの宮殿の庭にひとり立つカラフが、遠くで響く触れ役の声を聞きながら、夜明けの勝利を確信して歌うのがこのアリアです。なおこの旋律は、アルファーノ版の終幕で凱旋的に再登場します。 ## 出版・初演 歌劇『トゥーランドット』は1926年4月25日、ミラノ・スカラ座で初演されました(指揮トスカニーニ、カラフ役ミゲル・フレタ)。楽譜出版はリコルディです(声楽譜の版元として英Wikipedia脚注に記載)。 ## 題名・通称の由来 歌い出しのイタリア語 Nessun dorma(誰も寝てはならぬ)に由来します。日本でもこの和訳が通称です。 ## 構成分析 - 冒頭: 触れ役の声を受け、姫も眠れぬ夜を過ごしているだろうと語りかけます。 - 中間部: 自分の名は胸の内に秘めたまま、夜明けに口づけで告げようと確信を示します。 - 女声合唱: 遠くから名は誰にも分からず、我々は死ぬのだと嘆く声が重なります。 - 結び: 夜よ去れ、星よ沈めと呼びかけ、夜明けの勝利を高らかに宣言します。 ## 音楽的特徴 最後の「勝利」を意味する語で高音が長く保たれる演奏慣習があるが、プッチーニの楽譜に明示された指示ではないと英Wikipediaは記します。 ## 演奏のポイント 静かな歌い出しから、合唱を挟んで最後の高音に向けて一気に高揚する流れを聴きたいです。 ## この音源について - 演奏: ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)/ズービン・メータ指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(推定。YouTube上ではZubin Mehta - Topic) - アルバム: Puccini: Turandot(全曲盤) - レーベル: Decca - 録音: 1972 - 録音場所: ロンドン、キングスウェイ・ホール この全曲盤は1972年にロンドンのキングスウェイ・ホールで録音されました。録音は名エンジニア、ケネス・ウィルキンソンらのチームが手がけたマルチトラックのマスターテープに基づきます。ガイド役のカラフにパヴァロッティ、トゥーランドットにサザーランド、リューにカバリエ、ティムールにギャウロフが配されました。サザーランドの起用は当初意外とされたが、重厚な声が役に合うと評されています。グラモフォン誌の評者は、キングスウェイ・ホール録音の中でも屈指の実在感があると述べました。 (音源の投稿元(Zubin Mehta - Topic)はoEmbedで確認済みです。パヴァロッティ/メータ指揮の1972年デッカ全曲盤由来と推定されるが、トラックとの対応は未確認です。) ## 映画・ドラマ - Yes, Giorgio(1982): 場面未確認です。 https://www.nytimes.com/1982/09/24/movies/pavarotti-in-giorgio.html - ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション(2015): 場面未確認です。 https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/films/reviews/mission-impossible--rogue-nation-movie-review-tom-cruise-50-is-still-like-a-puppy-in-this-relentless-action-soap-opera-10423721.html ## CM - ラバッツァ(コーヒー): 2009年のキャンペーンでアントニー・ヘガティ(アノーニ)が歌っています。 https://www.theguardian.com/music/musicblog/2009/oct/22/antony-hegarty-opera-coffee ## トリビア - 2006年トリノ冬季五輪開会式でパヴァロッティが歌ったが、寒さのため事前録音への口パクだったことが後に明かされました(英・日Wikipedia)。 - 1998年グラミー賞では、体調不良で出演できなくなったパヴァロッティの代役としてアレサ・フランクリンがこのアリアを歌いました。 - 2019年にJR東日本が上野駅の発車メロディにこの曲を1か月間使用しました(英Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Nessun_dorma - https://ja.wikipedia.org/wiki/誰も寝てはならぬ - https://gramophone.co.uk/review/puccini-turandot-11 - https://www.theaterbyte.com/puccini-turandot-london-philharmonic-zubin-mehta-decca-pure-audio-blu-ray-review/ --- # 歌劇「椿姫」より 乾杯の歌 - 英題: Libiamo ne' lieti calici (Brindisi, La traviata) - 作曲者: ジュゼッペ・ヴェルディ(ロマン派) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1853 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/brindisi.html ヴェルディ『椿姫』第1幕の夜会で歌われる、アルフレードとヴィオレッタの華やかな乾杯の二重唱です。3拍子の軽快な旋律で親しまれています。 ## 作曲の経緯 『椿姫』はデュマ・フィスの小説『椿を持つ女』に基づくヴェルディの歌劇で、1853年3月6日にヴェネツィアのフェニーチェ劇場で初演されました。台本はピアーヴェです。この乾杯の歌は第1幕、高級娼婦ヴィオレッタ邸の夜会で歌われます。友人ガストーネや周囲にうながされた青年アルフレードが、歌を披露する形で始まります。彼は杯を掲げて美と愛の喜びを讃え、続いてヴィオレッタが加わり、人生の楽しみは束の間だから今を味わおうと応じます。合唱も加わって華やかに盛り上がり、二人が互いを意識し始める場面でもあります。軽快な3拍子のワルツ風の旋律で、オペラの中でも特に親しまれている曲のひとつです。作曲の具体的な経緯は今回の調査では未確認です。 ## 出版・初演 歌劇全曲の初演:1853年3月6日、ヴェネツィア・フェニーチェ劇場です。出版はリコルディです(1914年版声楽譜が英Wikipedia脚注に記載)。 ## 題名・通称の由来 冒頭の歌詞 Libiamo ne' lieti calici(楽しい杯で飲もう)に由来します。brindisi は乾杯・祝杯の歌を指す語です。 ## 構成分析 - アルフレードの独唱: 乾杯を呼びかけ、愛と快楽を讃えます。 - 合唱: 全員がアルフレードの旋律を受けて繰り返します。 - ヴィオレッタの独唱: 人生の喜びは束の間と応じて、楽しもうと歌います。 - 全員の合唱: 二人の掛け合いを挟み、夜会の高揚で締めくくります。 ## 音楽的特徴 3拍子の軽快なワルツ風リズムで、独唱、掛け合い、合唱へと盛り上がっていく構成です。 ## 演奏のポイント アルフレードの率直な歌い出しと、ヴィオレッタのやや華やかな応答の対比を聴いてみたいです。 ## この音源について - 演奏: イレアナ・コトルバス(ソプラノ)、プラシド・ドミンゴ(テノール)/カルロス・クライバー指揮、バイエルン州立歌劇場管弦楽団・合唱団 - アルバム: Verdi: La traviata(全曲盤) - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1976 - 録音場所: 未確認 この全曲盤は1976年にカルロス・クライバー指揮、バイエルン州立歌劇場の管弦楽団と合唱団により録音されました。ヴィオレッタはイレアナ・コトルバス、アルフレードはプラシド・ドミンゴ、ジェルモンはシェリル・ミルンズです。ドイツ・グラモフォンから発売され、今日でも同曲の代表的な録音として挙げられます。録音会場や制作の逸話は、読んだ出典では確認できませんでした。 (音源の投稿元(Ileana Cotrubas - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 歌詞はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェによります(英Wikipedia)。 - 三大テノールの1994年コンサートでも取り上げられています(YouTube上に公式映像が存在します)。 - 楽譜は英Wikipedia脚注によりリコルディ1914年版の声楽譜で確認できます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Libiamo_ne%27_lieti_calici - https://en.wikipedia.org/wiki/La_traviata_discography --- # 歌劇「カルメン」より ハバネラ(恋は野の鳥) - 英題: Habanera: L'amour est un oiseau rebelle (Carmen) - 作曲者: ジョルジュ・ビゼー(ロマン派) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1875 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/habanera.html ビゼー『カルメン』第1幕、カルメンが登場して歌う挑発的なアリアです。ハバネラのリズムに乗せ、恋は気まぐれな野の鳥だと歌います。言葉とリズムの駆け引きに、つい引き込まれます。 ## 作曲の経緯 『カルメン』はビゼーの4幕のオペラ・コミックで、台本はメイヤックとアレヴィです。ハバネラは第1幕、主人公カルメンが登場して歌う曲です。旋律はスペインの作曲家セバスティアン・イラディエルの歌曲「エル・アレグリート」(1863年出版)に基づきます。ビゼーはこれを民謡と思い込んでいたが、作曲者の存在を指摘され、声楽譜の初版に由来を注記したといいます。歌詞はビゼー自身によるものとされます。リハーサル中に最初の版の登場歌が外され、ビゼーは何度も書き直して、初演者の歌手ガリ=マリエも満足する形に仕上げました。原曲の長い前奏や後半部分を省き、半音階的な動きや和声の工夫を加えて印象的な一曲にしました。 ## 出版・初演 初演:1875年3月3日、パリ・オペラ=コミック座です。ハバネラは初演でセレスティーヌ・ガリ=マリエが歌いました。 ## 題名・通称の由来 ハバネラは『ハバナの(音楽・舞曲)』の意味です。原題は歌い出しの L'amour est un oiseau rebelle(恋は反抗的な鳥)です。 ## 構成分析 - レシタティフ: いつあなたを愛するかと問われ、たぶん永遠にない、明日かも、と軽くかわします。 - ハバネラ主部: 恋は誰にも飼いならせない野の鳥だと歌います。 - リフレイン(合唱を交えて): 恋は掟を知らない、私を愛さないならこちらが愛する、気をつけなさいと迫ります。 - 後半の節: 捕らえたつもりの鳥は逃げ、忘れた頃に戻ってくるとたたみかけます。 ## 音楽的特徴 ニ音の持続低音が全体を通して保たれ、調は途中で転調せず短調から長調に変わります。低音域のフルートとハバネラのリズムが独特の気配を作ります(英Wikipedia)。 ## 演奏のポイント 誘うようで挑発的な語り口と、三連符を交えた旋律の揺らぎに注目したいです。 ## この音源について - 演奏: マリア・カラス(メゾソプラノ/カルメン)、ジョルジュ・プレートル指揮、パリ・オペラ座管弦楽団、ルネ・デュクロ合唱団 - アルバム: Bizet: Carmen(全曲盤) - レーベル: EMI Classics / Warner Classics - 録音: 1964 - 録音場所: パリ、サル・ワグラム この録音は1964年、パリのサル・ワグラムで行われ、1965年の発売時には、カラスこそカルメンだ、という宣伝文句が使われました。レビューによると、パリ・オペラ座の合唱団は当時評判が芳しくなかったため、EMIはルネ・デュクロ合唱団を起用しています。評者はカラスのフランス語の発音を高く評価し、ハバネラの「Et c'est l'autre que je préfère」の一句の陰影づけを特に挙げています。 (音源の投稿元(Maria Callas - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ニーチェは『カルメン』の熱烈な賛美者で、この曲を挑発的と評しました(英Wikipedia)。 - 第1幕の最後の場面で、カルメンがこのリフレインをハミングします。 - ホセだけは、カルメンの歌の間ただ一人彼女に注意を向けません(英Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Habanera_(aria) - https://musicwebinternational.com/2024/02/bizet-carmen-warner-classics/ --- # 喜歌劇「天国と地獄」序曲(カンカンを含む) - 英題: Orpheus in the Underworld: Overture (Orphée aux enfers) - 作曲者: ジャック・オッフェンバック(序曲の編纂:カール・ビンダー)(ロマン派(第二帝政期フランス)) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1858年(喜歌劇初演)/序曲は1860年(ウィーン上演用) - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/orpheus-overture.html オッフェンバックの喜歌劇の旋律をウィーンでビンダーがつないだ序曲です。終盤の「地獄のギャロップ」は、カンカン踊りの定番曲として世界中で知られています。おなじみのカンカンへ着くまでに、ヴァイオリン独奏の語り口も楽しめます。 ## 作曲の経緯 オッフェンバックは1850年代半ば、パリの小劇場ブッフ・パリジャンで一幕物の喜歌劇を次々に上演していたが、上演規則により歌手は4人までに制限され、長い作品は書けませんでした。1858年に規制が緩むと、かねて温めていた二幕物に取りかかります。以前コメディ=フランセーズの音楽監督を務めた時期に、気取った神々や英雄の芝居に退屈し、仕返しをしたいと台本作家クレミューに語っていたといいます。台本はクレミューとアレヴィの構想から出発し、最終的にクレミュー名義となりました。1858年10月21日の初演後、批評家ジャナンが「古代への冒涜」と激しく非難したことが逆に話題を呼び、観客が押し寄せて大入りとなりました。なお、いま広く知られる序曲はオッフェンバック本人の作ではなく、1860年のウィーン上演のためにカール・ビンダーが劇中の旋律を集めて作ったものです。 ## 出版・初演 喜歌劇は1858年10月21日、パリのブッフ・パリジャン座(サル・ショワズール)で初演されました(二幕版)。1874年2月7日にはガイテ座で四幕版が上演されました。広く演奏される序曲は、1860年のウィーン(アン・デア・ウィーン劇場)上演のためにビンダーが編曲しました。 ## 題名・通称の由来 原題Orphée aux enfersは「地獄のオルフェ(オルフェウス)」の意味です。「Galop infernal」は「地獄の(猛烈な)ギャロップ」という意味の曲名です。1890年代にパリのムーラン・ルージュやフォリー・ベルジェールがこの曲をカンカン踊りの伴奏に採用し、以後「カンカン」の名で親しまれました。日本語題「天国と地獄」の由来は未確認です。 ## 構成分析 - 序盤(ゆったりした導入): 劇中の旋律を使った静かな部分から始まります(細部の曲名は未確認です)。 - 中盤(劇中旋律のつなぎ): ウィーン版序曲はオルフェのヴァイオリン独奏を前面に出し、劇中の旋律をメドレー風に並べます。 - 終盤(ギャロップ): 劇の第2幕(1874年版では第4幕)の終幕場面に由来する「地獄のギャロップ」です。神々が大騒ぎで踊る場面の曲で、序曲を締めくくります。 ## 音楽的特徴 オッフェンバックは「ギャロップ・アンフェルナル」のような速い曲で、同じ調を長く保ち楽器編成もほぼ一定にする簡潔な書き方をしている、と研究者が指摘しています。原曲は、のちの上品なカンカンより遥かに自然発生的で乱痴気騒ぎ的だったとされます(ケック氏は現代のレイヴになぞらえています)。 ## 演奏のポイント オルフェを示すヴァイオリン独奏の語り口、そして終盤でテンポが一気に上がるギャロップの高揚感が聴きどころです。ギャロップは速度を上げすぎず、軽さと勢いのバランスをどう取るかで印象が変わります。 ## この音源について - 演奏: ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(※指揮者名は検索結果の記述による。このIDと録音の紐づけは未確認) - アルバム: 未確認(DGのオッフェンバック序曲集の可能性があるが確認できず) - レーベル: Deutsche Grammophon の可能性(未確認) - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 カラヤンはオッフェンバック没後100年にあたる1980年に、「天国と地獄」「青ひげ」「ジェロルスタン女大公殿下」「美しきエレーヌ」「ヴェール=ヴェール」の各序曲を収めたオッフェンバック録音集を作った、とカラヤン研究所の記事に記されています。これに先立ち、カラヤンはフィルハーモニア管との最後の録音セッションでも「天国と地獄」序曲を録音しており、ヒュー・ビーンのヴァイオリン独奏が称賛されました。ただし、このYouTube音源がどの録音か(ベルリン・フィルの1980年頃のものか)は確認できていません。 (音源の投稿元(Berliner Philharmoniker - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 現在よく演奏される序曲はオッフェンバックの作ではなく、1860年にウィーンでカール・ビンダーが編んだものです。 - 初演版は228回上演されました(初演の公演は1859年6月に、出演者が疲れ切ったため打ち切られたとされます)。当時は100回で成功と言われました。 - 1890年代にムーラン・ルージュとフォリー・ベルジェールがこの曲をカンカンに使い、曲と踊りが結びつきました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Orpheus_in_the_Underworld - https://imslp.org/wiki/Overture_to_Offenbach's_opera_'Orph%C3%A9e_aux_Enfers'_(Binder,_Carl) - https://karajan.org/stories/spotlight-offenbach/ - https://www.musicweb-international.com/classrev/2019/Dec/Offenbach_Neptune_5553012.htm --- # 歌劇「ウィリアム・テル」序曲(終曲:スイス兵の行進) - 英題: William Tell Overture (Guillaume Tell) - Finale: March of the Swiss Soldiers - 作曲者: ジョアキーノ・ロッシーニ(ロマン派(初期)) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1829年(歌劇の初演) - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/william-tell-overture.html ロッシーニ最後のオペラの序曲です。夜明けと嵐と牧歌を経て、トランペットの合図で一気に駆け出す終曲は、『ローン・レンジャー』などで世界的に知られています。 ## 作曲の経緯 ロッシーニは1828年に歌劇「ギヨーム・テル」の作曲を始めました。この作品は1829年にパリで初演され、彼が書いた39作目、そして最後のオペラとなりました。以後ロッシーニは半ば引退し、カンタータや宗教曲、世俗声楽曲を書くにとどまります。序曲はスイス・アルプスの情景を描いた約12分の作品で、ベルリオーズが(ロッシーニの作品はたいてい嫌っていたにもかかわらず)「4部からなる交響曲」と評したことで知られています。交響曲と違って各部は切れ目なく続き、静かなチェロの夜明けから嵐、牧歌を経て、終曲の騒がしい行進に至ります。終曲は最終幕でスイス人たちがオーストリアの圧政から祖国を解放する勝利を暗示します。リストは1838年にピアノ編曲(S.552)を作り、自分の演奏会の定番にしました。 ## 出版・初演 歌劇は1829年にパリで初演されました(Wikipedia英語版によります。上演日・劇場は今回は未確認です)。リストのピアノ編曲は1838年です。 ## 題名・通称の由来 英語名の終曲「March of the Swiss Soldiers」は「スイス兵の行進」の意味です。実際は行進曲というより「ギャロップ」で、馬が駆けるイメージから米国ラジオ・テレビ番組『ローン・レンジャー』の主題曲として定着しました。 ## 構成分析 - 第1部 前奏(夜明け): ホ短調で始まる約3分です。独奏チェロ5本をコントラバスが支えます。遠雷を思わせるティンパニが嵐を予告します。 - 第2部 嵐: ホ短調です。全管弦楽が加わる約3分の激しい部分です。ピッコロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの短い応答、続いて金管と大太鼓が嵐を爆発させ、徐々に静まります。 - 第3部 牧歌(ランツ・デ・ヴァッシュ): ト長調です。嵐の後の静けさです。イングリッシュ・ホルンがスイスの牛追い歌を吹き、フルートと掛け合います。 - 第4部 終曲(スイス兵の行進): ホ長調です。トランペットのファンファーレに始まり、全管弦楽で駆け抜けるギャロップです。約3分です。 ## 音楽的特徴 ロッシーニの曲を象徴するクレッシェンドは本稿の調査では未確認のため言及を控えます。確認できた点は、前奏がチェロ5本というユニークな編成であること、終曲はトランペットで告げられる「ギャロップ」で、馬の疾走や救援のイメージとして広く使われることです。 ## 演奏のポイント 約3分の終曲では、トランペットのファンファーレに続いて弦が一気に駆け出す瞬間と、コーダに向かって高まる高揚感が聴きどころです。前の牧歌との対比(イングリッシュ・ホルンとフルートの静かな対話)が、終曲の勢いをいっそう際立たせます。 ## この音源について - 演奏: ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(指揮者は未確認) - アルバム: 未確認 - レーベル: 未確認(公式Topicチャンネル) - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 この音源の収録エピソードは、出典で確認できませんでした。 (音源の投稿元(Berliner Philharmoniker - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - 時計じかけのオレンジ(1971年): ウェンディ・カルロスによる電子編曲の終曲が、早回し映像の場面で流れます。 https://en.wikipedia.org/wiki/William_Tell_Overture - プリティ・プリンセス(2001年): ジョーのリムジンが雨の中のミアを助けに来る場面です。 https://en.wikipedia.org/wiki/William_Tell_Overture - プリティ・プリンセス2(2004年): ニコラスが自転車や馬でミアの結婚式を止めに向かう場面です。 https://en.wikipedia.org/wiki/William_Tell_Overture ## CM - リーボック「Defy Convention」キャンペーン: 2001年、DJシャドウによるヒップホップ版です。 https://en.wikipedia.org/wiki/William_Tell_Overture - ホンダ・シビック: 2008年、電子音楽版のキャンペーンです。 https://en.wikipedia.org/wiki/William_Tell_Overture ## トリビア - ベルリオーズは、普段ロッシーニを嫌っていたにもかかわらず、この序曲を「4部からなる交響曲」と評しました。 - 『ローン・レンジャー』に結びつきすぎたため、「ウィリアム・テル序曲を聴いてローン・レンジャーを思い出さない男が知識人だ」という冗談が生まれました。 - 歌劇には馬も騎兵の突撃も登場しないが、終曲は競馬や馬の疾走を示す音楽として広く使われます。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/William_Tell_Overture - https://imslp.org/wiki/Guillaume_Tell_(Rossini,_Gioacchino) --- # 歌劇「魔笛」より 夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように我が胸に燃え」 - 英題: Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen (Queen of the Night aria), from Die Zauberflöte - 作曲者: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(古典派) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1791年 - 作品番号: K.620(第2幕・第14番) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/queen-of-night.html 復讐に燃える夜の女王が娘にナイフを握らせる、『魔笛』第2幕の怒りのアリアです。高音のスタッカートと変ロ音の叫びが、ソプラノの技巧の頂点として知られています。 ## 作曲の経緯 『魔笛』の台本はエマヌエル・シカネーダーが書き、彼の劇団が1791年9月30日にウィーンのヴィーデン劇場で初演しました(シカネーダー自身がパパゲーノ役)。夜の女王が第2幕で歌うこのアリアでは、女王が娘パミーナにナイフを握らせ、宿敵ザラストロを殺すよう迫ります。従わなければ母娘の縁を切り、呪うと宣言する激しい場面です。初演で歌ったのは、モーツァルトの義妹ヨゼファ・ホーファーです(当時32歳)。非常に高い声域と敏捷な技巧に恵まれた歌手で、モーツァルトは彼女の力量を知ったうえで2つの大アリアを書いたとされます。曲の音域は2オクターブ(F4からF6)で、高い音域が続きます。シカネーダーの詩はこのアリアで例外的に長めの韻律(5脚)を用います。 ## 出版・初演 1791年9月30日、ウィーンのヴィーデン劇場で歌劇『魔笛』が初演されました(モーツァルト自身が指揮したとIMSLP検索結果に記載されています)。出版は1793年・1814年のジムロック社です(IMSLP記載)。 ## 題名・通称の由来 歌い出しの「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen」(地獄の復讐が私の胸に煮えたぎる)にちなむ通称です。夜の女王には前半に別のアリア「おののくな、わが息子よ」があるため、こちらは「夜の女王の第2のアリア」とも呼ばれます。 ## 構成分析 - 怒りの導入: 短調の力強い管弦楽とともに、女王が復讐の怒りを歌い始めます。 - コロラトゥーラの技巧: 高音のスタッカートを含む華やかな上行・下行パッセージ(最高音F6)が続きます。 - 最後の呪い: 「ヒョルト(聞け)」が3回繰り返され、ニ、ヘと来て予想された(イ)ではなく変ロ音に達します。ナポリの和音を伴い、アリアの頂点となります。 ## 音楽的特徴 ある研究者は、頂点の「聞け」でニ・ヘと上がった後に、予想されるイ音(主和音の完成)ではなく変ロ音へ進むモーツァルトの「名人芸」を称賛しています。管弦楽には全ヴァイオリンがG線の高音域をユニゾンで弾く瞬間があります。 ## 演奏のポイント 怒りの感情と技巧を両立できるかがすべてです。高音スタッカートの正確さ、そして「聞け」の変ロ音に宿る恐ろしさに注目したいです。MusicWebのレビューは、モーザーの演奏を、女王の悪役としての迫力と正確な高音を両立した例として評価しています。 ## この音源について - 演奏: エッダ・モーザー(ソプラノ)、ヴォルフガング・ザヴァリッシュ指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団 - アルバム: モーツァルト:歌劇「魔笛」全曲(スタジオ録音) - レーベル: EMI Electrola(現在はWarner Classics系。MusicWebは再発盤Classics for Pleasure 3932662を取り上げている) - 録音: 1972 - 録音場所: ミュンヘン、ビュルガーブロイ(1972年8月8日〜16日) この全曲録音は1972年8月8〜16日にミュンヘンのビュルガーブロイで行われ、ザヴァリッシュ指揮のバイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団、夜の女王にエッダ・モーザー、タミーノにペーター・シュライアー、ザラストロにクルト・モルらが参加しました。会話を含めドイツ語話者のキャストをそろえた点が長所とされ、英国の評者はモーザーの夜の女王を「非常に劇的で傑出している」と評しました。この録音からの「地獄の復讐は」(1972年8月ミュンヘン録音)は、NASAのボイジャー探査機に積まれたゴールデンレコードにも収録されています。 (音源の投稿元(Wolfgang Sawallisch - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - アマデウス(1984年): ジューン・アンダーソンがこのアリアを歌います(Wikipedia英語版・シカゴ交響楽団ページ参照)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Queen_of_the_Night_aria ## トリビア - エッダ・モーザーが歌ったこのアリアの録音は、NASAのボイジャー1号・2号に積まれたゴールデンレコードに収められています。 - 1840年のザイフリートの手紙によれば、死の前夜(1791年12月4日)のモーツァルトは、いま義妹ホーファーが高いFを歌っているところだ、と妻に囁いたといいます。 - 自分の歌唱力を過信した「史上最悪の歌手」フローレンス・フォスター・ジェンキンスの愛唱曲でもありました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Queen_of_the_Night_aria - https://en.wikipedia.org/wiki/Der_H%C3%B6lle_Rache_kocht_in_meinem_Herzen - https://en.wikipedia.org/wiki/Contents_of_the_Voyager_Golden_Record - https://en.wikipedia.org/wiki/Edda_Moser - https://www.musicweb-international.com/classrev/2007/dec07/Mozart_flute_3932662.htm - https://imslp.org/wiki/Die_Zauberfl%C3%B6te,_K.620_(Mozart,_Wolfgang_Amadeus) --- # 歌劇「カルメン」より 闘牛士の歌(諸君の乾杯を受けよう) - 英題: Toreador Song (Votre toast, je peux vous le rendre) from Carmen - 作曲者: ジョルジュ・ビゼー(台本:アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ)(ロマン派(19世紀フランス)) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1873-74年作曲/1875年初演 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/toreador.html オペラ『カルメン』第2幕で闘牛士エスカミーリョが歌う有名なクプレです。闘牛場の熱狂と愛を歌い、合唱が加わるリフレインの高揚で知られています。 ## 作曲の経緯 『カルメン』は、メリメの小説を下敷きに台本作家メイヤックとアレヴィが組み立て、ビゼーが1873〜74年に作曲した全4幕のオペラ・コミックです。闘牛士エスカミーリョは第2幕で登場し、この歌で酒場の一同に自己紹介します。初演でこの役を歌ったのは、ベルギー生まれの若いバリトン、ジャック・ブーイでした。ビゼーはこの曲を「ひどく通俗的」と見ていたと伝えられ、『皆が下品なものを求めたからそうしてやった』という趣旨の発言が残るとされます(伝聞)。ただし研究者は、通俗的なのは音楽ではなく人物像のほうだと評しています。リフレイン「トレアドール、構えよ」の旋律は第1幕への前奏曲の中間部にも現れ、歌の登場前から作品の顔として観客に印象づけられる仕掛けになっています。 ## 出版・初演 オペラ全曲は1875年3月3日、パリのオペラ=コミック座で初演されました。楽譜出版の詳細は未確認です。 ## 題名・通称の由来 フランス語の冒頭句「Votre toast, je peux vous le rendre」(あなたの乾杯にお返ししよう)に由来します。英語圏では『Toreador Song』『Toreador March』の通称で知られ、日本では「闘牛士の歌」と呼ばれます。 ## 構成分析 - 管弦楽の導入: きびきびと華やかな主題です。ハバネラと同じく半音階的に下降する動きで作られています。 - 第1クプレ: 闘牛場の祭りの熱気と、観衆が熱狂する様子を歌います。 - リフレイン(合唱): 「闘牛士よ、構えよ」と呼びかけ、愛が待っていると歌います。カルメンたちと合唱が加わって反復されます。 - 第2クプレ: 牛が飛び出す緊迫の瞬間を描写し、勇気を称えます。 - 終結のリフレイン: 合唱とともに高揚して閉じます。 ## 音楽的特徴 バス・バリトンのための曲で、音域は B♭2〜F4、よく使われる音域(テッシトゥーラ)は C3〜E♭4です。短調のクプレと長調のリフレインが対照をなし、合唱が加わると一気に祝祭的な性格に変わります。 ## 演奏のポイント 低音域で朗々と歌いつつ、リズムを締めた行進調で運ぶ点が聴きどころです。クプレの語り口と、リフレインの合唱が加わる瞬間の高揚の対比に注目したいです。 ## この音源について - 演奏: ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーン・フィル(エスカミーリョ役はロベルト・メリルと思われるが、トラック単位の歌手は未確認) - アルバム: Carmen (Remastered)(1963年録音、2008年SACD復刻とされる) - レーベル: RCA Red Seal(初出)/復刻盤は Sony 系とされる(未確認) - 録音: 1963 - 録音場所: ウィーン、ゾフィエンザール(検索結果の記載。直接読んだ一次資料では未確認) 検索結果で確認できた範囲では、この録音は1963年11月にウィーンのゾフィエンザールで行われました。指揮はカラヤン、オーケストラはウィーン・フィルで、レオンティン・プライス、フランコ・コレッリ、ロベルト・メリル、ミレッラ・フレーニらが参加し、1965年のグラミー賞オペラ録音部門を受けたとされます。収録中の具体的な逸話は、今回の調査では確認できませんでした。 (音源の投稿元(Herbert von Karajan - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - The Bad News Bears(がんばれ!ベアーズ)(1976): テーマ曲として使用されています(Wikipedia記載)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Toreador_Song - テルマエ・ロマエ ノヴァエ(アニメ)(2022): パオロ・アンドレア・ディ・ピエトロが日本語詞で編曲した版を使用しています(Wikipedia記載)。 https://www.animenewsnetwork.com/news/2022-03-15/thermae-romae-novae-anime-posts-title-sequence-with-opening-song/.183601 ## トリビア - リフレイン「トレアドール、構えよ」の旋律は、第1幕前奏曲の中間部にも使われています。 - 初演でエスカミーリョを歌ったのはベルギー出身のバリトン、ジャック・ブーイです。 - オスカー・ハマースタインの英語版『Stand Up and Fight』(『カルメン・ジョーンズ』)は、アイルランドのマンスター・ラグビーの応援歌として親しまれています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Toreador_Song - https://en.wikipedia.org/wiki/Carmen - https://ja.wikipedia.org/wiki/カルメン_(オペラ) - https://imslp.org/wiki/Carmen_(Bizet,_Georges) --- # 歌劇「フィガロの結婚」より 手紙の二重唱(そよ風によせて) - 英題: Letter Duet (Sull'aria... Che soave zeffiretto) from Le nozze di Figaro - 作曲者: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ)(古典派(18世紀)) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1786年(オペラの初演年) - 作品番号: K.492(オペラ全体) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/figaro-letter-duet.html 『フィガロの結婚』第3幕で、伯爵夫人とスザンナが偽の恋文を書く二重唱です。『ショーシャンクの空に』での使用で広く知られています。穏やかな音楽の中で、実は策略が進んでいるという取り合わせにも興味をそそられます。 ## 作曲の経緯 『フィガロの結婚』はボーマルシェの戯曲を原作にダ・ポンテがイタリア語台本を書き、モーツァルトが30歳の1786年に完成させたオペラ・ブッファです。手紙の二重唱は第3幕の一場面で、伯爵夫人が口述し、侍女スザンナが書き取る形で進みます。二人は浮気心のある伯爵を懲らしめるため、夜の逢い引きを約束する偽の手紙をしたためます。喜劇の筋を進める場面でありながら、2人のソプラノが声を絡ませる音楽は、物語を離れても独立した美しさを持ちます。作曲の詳しい経緯や日付はこの調査では確認できなかったが、初演はウィーンのブルク劇場で行われ、一定の好評を得たもののその後ウィーンでは別のオペラに押されました。一方でプラハでは大成功を収めたと伝えられます。 ## 出版・初演 オペラ初演は1786年5月1日、ウィーンのブルク劇場です。楽譜の初版情報は未確認です。 ## 題名・通称の由来 イタリア語の冒頭句「Sull'aria... Che soave zeffiretto」(そよ風に乗せて…なんと優しい西風よ)に由来します。劇中で手紙を書く場面であることから「手紙の二重唱」と呼ばれます。 ## 構成分析 - 導入: 伯爵夫人が口述し、スザンナが書き取る形で始まります。 - 手紙の口述: 伯爵を夜の庭に誘う文面を二人で書き進めます。 - 反復と終結: 二人の声が絡み合い、手紙を仕上げます。 ## 音楽的特徴 2人のソプラノ(伯爵夫人とスザンナ)による短い二重唱です。穏やかな旋律が、策略を進める場面でもあるという二重性を持ちます。 ## 演奏のポイント 声質の異なる2人のソプラノが、旋律を追いかけ合い、最後に溶け合う部分が聴きどころです。ささやくような弱音の美しさに注目したいです。 ## この音源について - 演奏: エディット・マティス(スザンナ)、ギュンドゥラ・ヤノヴィッツ(伯爵夫人)、カール・ベーム指揮 ドイツ・オペラ・ベルリン管弦楽団・合唱団 - アルバム: Mozart: Le nozze di Figaro(ベーム全曲盤) - レーベル: Deutsche Grammophon - 録音: 1968 - 録音場所: ベルリン、イエス・キリスト教会 この全曲録音は1968年3月、ベルリンのイエス・キリスト教会で行われました。ベームは伯爵夫人にヤノヴィッツ、スザンナにマティス、伯爵にフィッシャー=ディースカウ、フィガロにプライを揃えました。DGは2023年にオリジナルのアナログ・テープから24bit/96kHzでリマスターし、3CDとブルーレイ・オーディオ、未公開のセッション写真入りブックレットを付けたデラックス盤を発売しました。ベームは録音当時73歳でした。 (音源の投稿元(Edith Mathis - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ショーシャンクの空に(1994): 主人公アンディが刑務所の拡声器でこのレコードを流し、受刑者たちが立ち止まって聴く場面です。 https://operawire.com/opera-meets-film-what-the-iconic-scene-from-the-shawshank-redemption-says-about-operas-greatest-power/ ## トリビア - 『ショーシャンクの空に』では、レッドが「あの2人のイタリア人女性が何を歌っていたか今も知らない。知りたくもない」と語ります。 - 同作で、アンディはこの放送のため独房に入れられます。 - 同作の出演者はほぼ男性で、女声二重唱の登場が場面の印象を際立たせていると OperaWire は指摘しています。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/フィガロの結婚 - https://wno.org.uk/news/the-marriage-of-figaros-music-in-popular-culture - https://operawire.com/opera-meets-film-what-the-iconic-scene-from-the-shawshank-redemption-says-about-operas-greatest-power/ - https://www.deutschegrammophon.com/de/kuenstler-innen/diverse-kuenstler/pressestimmen/mozart-herangezoomt-karl-boehms-legendaere-einspielung-des-figaro-in-einer-audiophil-remasterten-edition-269264 - https://imslp.org/wiki/Le_nozze_di_Figaro,_K.492_(Mozart,_Wolfgang_Amadeus) --- # 歌劇「ラクメ」より 花の二重唱 - 英題: Flower Duet (Dôme épais le jasmin) from Lakmé - 作曲者: レオ・ドリーブ(台本:エドモン・ゴンディネ、フィリップ・ジル)(ロマン派(19世紀フランス)) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1881-82年作曲/1883年初演 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/flower-duet.html オペラ『ラクメ』第1幕、ラクメと侍女マリカが川辺で花を摘みに向かう場面の二重唱です。英国航空のCMでも知られています。 ## 作曲の経緯 『ラクメ』は、ドリーブが1881年から82年にかけて書いた全3幕のオペラで、台本はゴンディネとジルです。テオドール・パヴィの短編とピエール・ロティの小説に基づき、19世紀半ばの英領インドを舞台にしています。ゴンディネは、アメリカ出身のソプラノ、マリー・ヴァン・ザントのための作品として提案したとされます。花の二重唱は第1幕、ブラフマンの司祭の娘ラクメと侍女マリカが、花を摘みに川辺へ向かう場面で歌われます。二人はジャスミンの茂みや川の流れを描きながら、朝の情景を歌います。途中、ラクメは父の身を案じる不安をのぞかせ、そのあと青い蓮を摘みに行こうと再び明るい主題に戻ります。1883年4月14日にパリのオペラ=コミック座で初演され、異国趣味を好む当時の聴衆に迎えられました。 ## 出版・初演 オペラ全曲は1883年4月14日、パリのオペラ=コミック座(第2サル・ファヴァール)で初演されました。指揮はジュール・ダンベです。 ## 題名・通称の由来 冒頭句「Dôme épais le jasmin」(茂るジャスミンの天蓋)に由来し、英語圏では『Flower Duet』と呼ばれます。なお題名の「ラクメ」は、サンスクリットの女神ラクシュミーのフランス語形とされます。 ## 構成分析 - 導入の対話: ラクメがマリカを誘い、マリカが主人の心を読みたいと応じます。 - 主部「Dôme épais le jasmin」: 二人が三度の歌い交わしで、川辺の花々と舟遊びを描きます。 - 中間部(ト長調): ラクメが父への不安を語り、マリカが神の加護を願って蓮を摘みに行こうと誘います。 - 主部の再現: 冒頭の旋律に戻り、二声が寄り添って終わります。 ## 音楽的特徴 ソプラノとメゾソプラノが三度・六度で重なります。6/8拍子の舟歌風のゆれる動きが、川面の揺れを思わせます。 ## 演奏のポイント 高声と低声が溶け合う並行進行と、冒頭主題の再現の美しさが聴きどころです。中間部の短い転調で見せる影の表情にも注目したいです。 ## この音源について - 演奏: ジョーン・サザーランド(ラクメ)、ジェーン・ベルビエ(マリカ)、リチャード・ボニング指揮 モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団 - アルバム: Delibes: Lakmé(全曲盤またはハイライト盤からのトラック) - レーベル: Decca - 録音: 1967 - 録音場所: モンテカルロ、アルカザール(検索結果の記載。直接読んだ出典では未確認) この録音は1967年にサザーランドとボニングらがモンテカルロで行いました。マリカ役はジェーン・ベルビエ、ジェラール役はアラン・ヴァンゾ、ニラカンタ役はガブリエル・バキエです。ハイライト盤のレビューは、この録音のサザーランドを、母音を滑らかにつなぐ歌い口が目立つ時期のものと評し、花の二重唱でのボニングのテンポは粘りがあると指摘しています。 (音源の投稿元(Joan Sutherland - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - The Hunger(ハンガー)(1983): 使用された作品としてWikipediaに記載されています。場面は未確認です。 https://en.wikipedia.org/wiki/D%C3%B4me_%C3%A9pais_le_jasmin ## CM - 英国航空(British Airways): 1989年の「Face」広告で、この二重唱をもとにしたヤニーとマルコム・マクラーレンの編曲「Aria」が使われたとされます。のちも同社の広告や機内の搭乗音楽に用いられます。 https://en.wikipedia.org/wiki/D%C3%B4me_%C3%A9pais_le_jasmin ## トリビア - 題名のラクメは、ヒンドゥーの女神ラクシュミーのフランス語形です。 - 『ラクメ』はオペラ=コミック座で1909年に500回、1931年に1000回上演に達しました。 - この二重唱は『セックス・アンド・ザ・シティ』『ザ・シンプソンズ』などのテレビ番組でも使われたとされます(Wikipedia記載)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/D%C3%B4me_%C3%A9pais_le_jasmin - https://en.wikipedia.org/wiki/Lakm%C3%A9 - https://www.musicweb-international.com/classrev/2001/jan01/lakme.htm - https://imslp.org/work/28148 --- # 私のお父さん(歌劇「ジャンニ・スキッキ」より) - 英題: O mio babbino caro (from Gianni Schicchi) - 作曲者: ジャコモ・プッチーニ(20世紀初頭(後期ロマン派/ヴェリズモ以後)) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1918(ニューヨーク初演) - 作品番号: SC 88(作品全体の整理番号。Opus番号はなし) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/o-mio-babbino.html プッチーニの喜歌劇でラウレッタが父に結婚の許しを乞うアリアです。わずか32小節の短さながら、甘く切実な旋律で愛され、映画やコンサートでも親しまれています。 ## 作曲の経緯 「私のお父さん」は、プッチーニの一幕物の喜歌劇「ジャンニ・スキッキ」の中でヒロインのラウレッタが歌うアリアです。台本はジョヴァッキーノ・フォルツァーノが担当しました。物語の舞台は中世のフィレンツェで、遺産をめぐる親族たちの欲と策略が渦巻きます。その中で、スキッキの娘ラウレッタは恋人リヌッチョとの仲を引き裂かれそうになり、父に結婚を許してほしいと訴えます。Wikipediaによれば、この曲は偽善や嫉妬、駆け引きに満ちた喜劇の空気から離れ、素朴な抒情と愛を表す一種の幕あいの役割を果たしており、全曲を通して作曲された(通作形式の)この歌劇の中で唯一、独立した聴かせどころの曲だと説明されています。短いながらも旋律の美しさでオペラ全体から切り離して愛され、演奏会やアンコールの定番になりました。 ## 出版・初演 1918年12月14日、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で歌劇「ジャンニ・スキッキ」が初演され、ラウレッタはフロレンス・イーストンが歌いました。(出版情報は未確認です) ## 題名・通称の由来 歌い出しのイタリア語の句「O mio babbino caro」に由来します。意味は「ああ、愛しいお父さん」です(babbinoは「パパ」にあたる親しみのある呼び方)。 ## 構成分析 - 導入と主部: ラウレッタが父に呼びかけ、恋人への思いを訴える柔らかな旋律が中心です。 - 中間部: 結婚を許してほしいという願いが高まり、感情が盛り上がります。 - 結び: 父への最後の懇願として、静かな余韻のなかで締めくくります。 ## 音楽的特徴 全32小節と非常に短く、変イ長調・8分の6拍子の流れるような旋律で歌われます。喜劇の中で唯一といえる抒情的なアリアで、素朴さと切実さの対比が魅力です。 ## 演奏のポイント 息の長い旋律を途切れさせずに歌うレガート、ささやくような弱音から最後の訴えへ向かう感情の増幅、短い曲の中での表情の変化に注目したいです。 ## この音源について - 演奏: マリア・カラス(ソプラノ)/推定:トゥッリオ・セラフィン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 - アルバム: 未確認(1954年9月のEMIセッション=プッチーニ・アリア集の可能性が高いが、YouTube側のアルバム名は確認できず) - レーベル: 未確認(Maria Callas - Topic。EMI/Warner系の推定) - 録音: 1954(推定。同曲の1954年録音は確認、YouTubeの音源との対応は未確認) - 録音場所: ワトフォード・タウン・ホール(ロンドン近郊)※1954年セッションの会場 カラスの「私のお父さん」は、1954年9月15〜16日にワトフォード・タウン・ホールで、フィルハーモニア管弦楽団とトゥッリオ・セラフィンの指揮により録音されたと、検索結果の資料に記されています。プロデューサーはウォルター・ジェリネックとウォルター・レッグ、バランス・エンジニアはロバート・ベケットとされます。同じ1954年9月のセッションは、プッチーニ・アリア集と、後に名盤として知られる「コロラトゥーラ・リリック・アリア集」の二つのアルバムに分けて発表されたと、Naxos Historical盤の解説にあります。ただしYouTube音源がこの録音そのものかは公式のアルバム情報で確認できていません。 (音源の投稿元(Maria Callas - Topic)はoEmbedで確認済みです。1954年セラフィン盤との対応は未確認です。) ## 映画・ドラマ - 眺めのいい部屋(A Room with a View)(1985): 映画のテーマ曲として使用されています(フィレンツェが舞台の一部であることと結びつけて紹介されています)。 https://interlude.hk/the-best-performances-o-mio-babbino-caro-by-giacomo-puccini/ ## トリビア - 全曲が通作形式のこの歌劇で、独立した聴かせどころのアリアはこの一曲だけだとWikipediaは述べています。 - 1918年の初演でラウレッタを歌ったのは、イギリス出身のソプラノ、フロレンス・イーストンでした。 - アリアはわずか32小節で、演奏時間は2分半から3分ほどにすぎません。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/O_mio_babbino_caro - https://www.europadisc.co.uk/classical/55834/Maria_Callas:_Puccini_Heroines_and_Lyric_Arias.htm - https://interlude.hk/the-best-performances-o-mio-babbino-caro-by-giacomo-puccini/ --- # 私を泣かせてください(歌劇「リナルド」より) - 英題: Lascia ch'io pianga (from Rinaldo) - 作曲者: ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(バロック) - カテゴリ: オペラ - 作曲年: 1711(ロンドン) - 作品番号: HWV 7(歌劇「リナルド」。1711年初演版はHWV 7a) - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/lascia-ch-io-pianga.html ヘンデルが1711年の歌劇「リナルド」で、囚われのアルミレーナの嘆きとして歌わせたアリアです。過去の自作を転用した旋律が、悲しみと自由への願いを静かに歌います。旋律をたどると、ヘンデルが自作をどう生かしたのかも見えてきます。 ## 作曲の経緯 この旋律は、実はヘンデルが何度も使い回したものです。最初は1705年の歌劇「アルミーラ」第3幕にサラバンドとして登場し、1707年のオラトリオ「時と悟りの勝利」では、枢機卿ベネデット・パンフィーリの詞による「棘を捨て、バラを摘め」というアリアに転用されました。その4年後の1711年、ロンドンで上演された歌劇「リナルド」第2幕で、現在知られる「私を泣かせてください」の形になります。歌うのはヒロインのアルミレーナで、彼女を捕らえたサラセンの王アルガンテに向けて、自由を奪われた悲しみを訴える場面です。リブレットはジャコモ・ロッシが、アーロン・ヒルの構想をもとに書きました。「リナルド」は大成功を収め、このアリアもこの作品の曲として広く知られるようになりました。 ## 出版・初演 1711年、ロンドンで歌劇「リナルド」の一曲として初演されました。ジョン・ウォルシュによる初版では管弦楽の指定がなく、歌の旋律と通奏低音のみが記されています(Wikipedia)。 ## 題名・通称の由来 歌い出しのイタリア語「Lascia ch'io pianga」に由来し、意味は「私に泣かせてください」です。元の旋律が使われた1707年のアリアは「Lascia la spina, cogli la rosa」(棘を捨て、バラを摘め)という別の詞でした。 ## 構成分析 - 導入(約8小節): 現代の版では、歌の前に器楽による導入が置かれます。 - 前半: ヘ長調のゆったりしたサラバンド風のリズムで、運命を嘆き自由を求める歌です。 - 後半: 同じ旋律を繰り返し、憐れみを願う結びへ向かいます。 ## 音楽的特徴 サラバンドの重く落ち着いた3拍子と、長い音符で紡がれる旋律が特徴です。1つの旋律が器楽曲、オラトリオ、歌劇へと姿を変えて使い回された点もバロック期ならではです。 ## 演奏のポイント 装飾音を加えて繰り返す際の歌い手ごとの工夫、ラルゴの遅いテンポの中での息の長い歌い回し、弱音の美しさに注目したいです。 ## この音源について - 演奏: チェチーリア・バルトリ(メゾ・ソプラノ)/クリストファー・ホグウッド指揮 アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック - アルバム: 未確認(同録音を収めるアルバムとして、Decca「The Art of Cecilia Bartoli」473 380-2DHおよび2020年の「Queen of Baroque」が確認できたが、YouTube音源がどれかは未確認) - レーベル: Decca(検索結果での配信元はUniversal Music Group/Decca) - 録音: 1999 - 録音場所: ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン) バルトリが歌うこのアリアは、1999年11月27日にロンドンのヘンリー・ウッド・ホールで、クリストファー・ホグウッド指揮のアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックと録音されました。同じセッションで、同じ「リナルド」第3幕のアリア「Bel piacere」も録られています。後に2020年11月発売のDecca盤「Queen of Baroque」に収録され、BBC Music Magazineは、ささやくような美しいフレージングと丁寧な装飾を評価しました。Gramophoneも別の編集盤の評で、他の多くの歌手と違い彼女はこの曲を言葉どおりの意味で歌わせていると述べています。 (音源の投稿元(Cecilia Bartoli - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ファリネッリ(Farinelli)(1994): 作中でこのアリアが使用されます(Wikipedia記載)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Lascia_ch%27io_pianga - アンチクライスト/ニンフォマニアック(ラース・フォン・トリアー監督)(2009/2013): どちらの作品でも使用されています(Wikipedia記載)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Lascia_ch%27io_pianga ## トリビア - この旋律は1705年のサラバンド、1707年のオラトリオ、1711年の歌劇と、3回も形を変えて使われています。 - 初版(ウォルシュ版)には管弦楽の指定がなく、現在よく聴く弦楽の伴奏はクリュザンダーの校訂版に基づくところが大きいです。 - オリジナルの自筆譜は失われたとされるが、RISMによれば大英図書館に53小節が欠けた断片が所蔵されています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Lascia_ch%27io_pianga - https://www.prestomusic.com/classical/products/8813980--queen-of-baroque --- # 荒城の月 - 英題: Kōjō no Tsuki (The Moon over the Ruined Castle) - 作曲者: 滝廉太郎(作詞:土井晩翠)(明治(日本の近代歌曲)) - カテゴリ: 宗教曲・声楽 - 作曲年: 1901(明治34)発表 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/rojo-no-tsuki.html 土井晩翠の詩に滝廉太郎が曲を付けた1901年の唱歌です。栄枯盛衰を映す荒城の月を歌い、山田耕筰の編曲版とともに国内外で親しまれています。 ## 作曲の経緯 1898年、東京音楽学校が懸賞用の唱歌のため、東京大学にいた土井晩翠に詩を依頼しました。原題は『荒城月』です。これに同校の滝廉太郎が曲を付け、1901年3月に『中学唱歌』に収録されました。原曲は伴奏のない歌で、西洋音楽の旋律を広く大衆に広めた日本最初期の本格的な歌曲とされます。詩のモデルには、晩翠の故郷仙台の青葉城跡、会津若松の鶴ヶ城跡などが挙げられ、廉太郎の側では少年期に過ごした富山城や、大分県竹田の岡城跡から着想を得たと伝えられます(ただし諸説あります)。廉太郎は1903年に23歳で亡くなり、1917年に山田耕筰が移調してピアノ伴奏を補い、旋律にも改変を加えました。詩は、栄華を誇った城が荒れ果てた今も、変わらず照らす月を歌いました。 ## 出版・初演 1901年3月に『中学唱歌』(東京音楽学校編)に収録されました。山田耕筰編曲の独唱版は1918年にセノオ音楽出版社から出版されました。 ## 題名・通称の由来 土井晩翠の詩の原題『荒城月』を改めて『荒城の月』としました。荒れた城(荒城)と夜の月を詠む題です。 ## 構成分析 - 第1節(春): 高楼での花見の宴と、かつての栄光はどこへ行ったかという問いです。 - 第2節(秋): 陣営の霜と雁、剣を照らした往時の光はいまいずこ、という問いです。 - 第3節: いま荒城の夜半の月は、誰のために変わらぬ光を放つのでしょうか。垣に残るのは蔓草、松に吹くのは風の音のみです。 - 第4節: 天上の月は変わらないが、栄枯は移ろう世の姿をいまも映し続けます。 ## 音楽的特徴 七五調の詩と西洋風の短調旋律を結びつけた作品です。旋律は短音階第4音が上がる部分(原曲)を含み、橋本国彦は欧州に紹介するなら山田版が適すると語ったとされます(原曲の音型がジプシー音階やハンガリー民謡を連想させるため)。山田版は旋律の半音下げとピアノ伴奏の追加で、歌曲としての性格を強めました。 ## 演奏のポイント 静かな冒頭のロ短調(または山田版のニ短調)の旋律線に耳を向けたいです。同じ旋律で4節の情景を歌い分ける表現、山田版のピアノ伴奏の響きも聴きどころです。 ## この音源について - 演奏: 錦織健(テノール) - アルバム: Autumn Moon(検索結果の要約に『2008年発売』とあるのみで、アルバムページは未確認) - レーベル: 未確認 - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 この音源の収録エピソードは、出典で確認できませんでした。 (音源の投稿元(Ken Nishikiori - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - わが愛の譜 滝廉太郎物語(1993): 廉太郎のドイツ留学送別演奏会で『荒城の月』が歌われます。劇中の歌は山田耕筰の編曲版です(日本語版Wikipedia記載)。 https://eiga.com/movie/40187/ ## トリビア - 1989年のNHK全国アンケート『あなたが選ぶ日本のうた・ふるさとのうた』で第7位、2006年に文化庁とPTAが選ぶ『日本の歌百選』に選ばれました(日本語版Wikipedia)。 - ベルギーの修道院で山田耕筰版が聖歌として歌われているとされます(同)。 - 大分県竹田市のJR豊後竹田駅では、列車の接近メロディにこの曲が流れます(同)。 ## 出典 - https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%92%E5%9F%8E%E3%81%AE%E6%9C%88 - https://eiga.com/movie/40187/ --- # 野ばら - 英題: Heidenröslein - 作曲者: フランツ・シューベルト(ロマン派(初期)) - カテゴリ: 宗教曲・声楽 - 作曲年: 1815(8月19日作曲) - 作品番号: 作品3-3 / D.257 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/heidenroslein.html ゲーテの詩に付けた1815年の有節歌曲です。3節が同じ旋律で歌われる素朴な作品で、ウェルナー版と並んで『野ばら』の名で親しまれています。同じ旋律だからこそ、節ごとの声の表情を聴き分ける面白さがあります。 ## 作曲の経緯 ゲーテが1771年頃、シュトラスブルク留学中に書いた詩(ゼーゼンハイムの牧師の娘フリーデリケ・ブリオンとの恋が背景とされる)に、シューベルトが1815年8月19日に付けた歌曲です。詩は、野に咲く赤い薔薇を少年が摘もうとし、薔薇は棘で刺すと警告するが、結局少年は摘んでしまう、という内容で、解釈には多様な見方があります。シューベルトは3つの節すべてに同じ旋律を当て、民謡に近い素朴な旋律に仕上げました。英語版Wikipediaによれば、この旋律はモーツァルト《魔笛》第1幕終わりのパミーナとパパゲーノの二重唱(Könnte jeder brave Mann)を部分的に下敷きにしています。ドイツ語版Wikipediaは、ドイツ語圏で『魔王』と並ぶ、あるいは『菩提樹』と並ぶ最も有名なシューベルト作品の一つとしています。 ## 出版・初演 作品3-3として出版されました(初出版の年・出版社は未確認です)。 ## 題名・通称の由来 ゲーテの詩の題『Heidenröslein』です(荒野=Heideに咲く野ばら)。-nは連結音です。『Heideröslein』とも書かれます(ドイツ語版Wikipedia)。 ## 構成分析 - 第1節: 少年が朝の露のように若い薔薇を見つけ、駆け寄って見とれます。 - 第2節: 少年が摘むと言い、薔薇は棘で刺して自分を忘れさせないと警告します。 - 第3節: 少年は結局摘み、薔薇は刺して抵抗するが、嘆いても無駄でそれに耐えるしかありません。 - 後奏: 短い後奏が付きます(ドイツ語版Wikipedia)。 ## 音楽的特徴 3節が同一の旋律と伴奏で歌われる有節歌曲です。各節の終わり2行は詩の側で繰り返されます。声楽曲として簡潔で、民謡風の親しみやすさが特徴です。ヴェルナー版(1829)の素朴な旋律は19世紀の歌集を通じて広まり、日本でもこの曲が『野ばら』として歌われてきました。 ## 演奏のポイント 節ごとに声の表情をどう変えるか、無邪気さ、警告、諦めという変化を追いたいです。同じ旋律をどう歌い分けるかが聴きどころです。 ## この音源について - 演奏: ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)/ジェラルド・ムーア(ピアノ) - アルバム: 未確認 - レーベル: 未確認 - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 この音源の収録エピソードは、出典で確認できませんでした。 (音源の投稿元(Dietrich Fischer-Dieskau - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - ウェルナー版は1829年1月20日、作曲者が指揮するブラウンシュヴァイクのリーダーターフェルの演奏会で初演されました(ドイツ語版Wikipedia)。 - ヴェルナーの旋律は、検閲を風刺した替え歌『Sah ein Fürst ein Büchlein stehn』にも使われました(同)。 - 詩の最後の節には初版(1789年ゲッシェン版)と1827年決定版で語形の異同があります(英語版Wikipedia)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Heidenr%C3%B6slein - https://de.wikipedia.org/wiki/Heidenr%C3%B6slein - https://www.discogs.com/release/5708490-Schubert-Goethe-Dietrich-Fischer-Dieskau-J%C3%B6rg-Demus-Gerald-Moore-Goethe-Lieder - https://www.musicweb-international.com/classrev/2003/May03/Dieskau.htm --- # アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618 - 英題: Ave verum corpus, K. 618 - 作曲者: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(古典派) - カテゴリ: 宗教曲・声楽 - 作曲年: 1791 - 作品番号: K.618 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/ave-verum-corpus.html 1791年、バーデンの教会音楽家シュトルのために書かれた全46小節の聖体モテットです。合唱と弦、オルガンだけの簡素さの中に、深い祈りが宿ります。 ## 作曲の経緯 1791年6月、モーツァルトは身重の妻コンスタンツェが湯治をしていたウィーン近郊の保養地バーデンを訪れました。彼はそこで、聖シュテファン教会の音楽責任者だった友人アントン・シュトルのために、この小さなモテットを書きます。キリスト聖体の祝日(この年は6月23日)のための曲で、自筆譜の日付は6月17日です。当時のモーツァルトは歌劇「魔笛」の作曲のさなかにありました。中世ラテン語の聖体讃歌の主要部分に曲を付けていて、最後の3行は省かれています。全46小節、編成も合唱と弦、オルガンのみと簡素で、小さな町の教会合唱団が歌えるように書かれています。完成から半年足らずでモーツァルトは亡くなるため、レクイエムに通じる要素を先取りした作品とも評されます。 ## 出版・初演 1791年6月23日(聖体の祝日)、バーデンの聖シュテファン教会(市の司教区教会)で初演されたと検索結果の資料にあります。出版については未確認です。 ## 題名・通称の由来 ラテン語の聖体讃歌の冒頭句「Ave verum corpus」(めでたし、まことの御体よ)からです。13世紀ごろの聖体の賛歌が基になっています。 ## 構成分析 - 前半(導入から中間): 静かな弦の動きに乗って、合唱が聖体への賛美を和声的に歌います。 - 中間部: 半音階的な和声で受難と死への思いが深まります。 - 結び: 穏やかなニ長調に戻り、祈りの余韻で終わります。 ## 音楽的特徴 全46小節という短さ、合唱・弦・オルガンだけの簡素な編成です。自筆譜には曲頭にsotto voce(声を抑えて)の指示があるのみです。半音階的な和声が、死や救い、聖体拝領という宗教的な主題を表現します(Wikipediaの記述)。 ## 演奏のポイント 全体を通した静かな弱音の保ち方、合唱の和声の溶け合い、半音階的な箇所での緊張と解放に注目したいです。 ## この音源について - 演奏: ケンブリッジ・キングス・カレッジ合唱団(指揮者は未確認) - アルバム: 未確認(2019年のStephen Cleobury指揮『The Music of King's』にも本曲が収録されるが、YouTube音源との対応は未確認) - レーベル: 未確認(検索結果ではUniversal Music Group配信と記載) - 録音: 未確認 - 録音場所: 未確認 この音源の収録エピソードは、出典で確認できませんでした。 (音源の投稿元(The Choir of King’s College, Cambridge - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 作曲時のモーツァルトは歌劇「魔笛」を書いている最中で、バーデンで妻に会うために訪れていました。 - 聖体の祝日は三位一体の主日の次の木曜日で、1791年は6月23日でした。 - リストがピアノ・オルガン用に編曲し、チャイコフスキーはそれを自作の「モーツァルティアーナ」に取り入れました。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Ave_verum_corpus_(Mozart) - https://imslp.org/wiki/Ave%20verum%20corpus,%20K.618%20(Mozart,%20Wolfgang%20Amadeus) --- # 魔王 - 英題: Erlkönig - 作曲者: フランツ・シューベルト(ロマン派(初期)) - カテゴリ: 宗教曲・声楽 - 作曲年: 1815(第4稿を1821年出版) - 作品番号: 作品1 / D.328 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/erlkonig.html ゲーテの詩による物語歌曲です。夜道を駆ける父子と魔王を、一人の歌手と疾走するピアノの三連符で描く、18歳シューベルトの出世作です。 ## 作曲の経緯 1815年、18歳のシューベルトがゲーテの同名バラードに付けた歌曲です。友人シュパウンの証言では、ある日の午後の数時間で書き上げられたといいます。作曲者は計4回書き直し、第4稿を1821年に作品1として出版しました。語り手・父・息子・魔王の4役を一人の歌手が歌い分け、ピアノは馬の疾走を思わせる三連符をほぼ最後まで刻み続けます。1820年12月1日にウィーンの私的な集まりで演奏された後、1821年3月7日にケルントナートーア劇場でヴォーグル(バリトン)とヒュッテンブレンナー(ピアノ)により公開初演され、大成功を収めて若い作曲家の名を広めました。ゲーテ本人は通作形式を好まず、送られた楽譜に返事をしなかったが、1830年にシュレーダー=デフリエントの歌を聴いて印象を改めたと伝えられます。 ## 出版・初演 私的初演1820年12月1日(ウィーン)/公開初演1821年3月7日 ケルントナートーア劇場(J.M.ヴォーグル、A.ヒュッテンブレンナー)/1821年ディアベッリ社から作品1として出版されました。 ## 題名・通称の由来 ゲーテのバラード『Erlkönig』(魔王=Erlking、子どもを連れ去る超自然的存在)の題をそのまま用いたものです。語源の詳細は今回の資料では未確認です。 ## 構成分析 - 序奏(1〜15小節): ト短調です。右手の三連符の連打で疾走する馬を描き、左手が不吉な上行音階と下行アルペジョの動機を示します。 - 語り手・父と子(〜57小節): ト短調から変ロ長調へ進みます。語り手は中音域、父は低音域、子は高音域で歌われます。 - 魔王の誘い(58〜72小節ほか): 変ロ長調の甘く媚びる旋律です。伴奏の三連符は残るが音型が変わり、第2・第3の誘いでは調が上がっていきます。 - 子の三度の叫び: 『お父さん』の呼びかけが半音ずつ上がって繰り返され、間隔も次第に詰まります。 - 終結(132小節〜): ト短調に戻り、三連符が止まって無伴奏のレチタティーヴォで子の死が語られます。 ## 音楽的特徴 一人の歌手が4役(語り手・父・息子・魔王)を音域・調性・リズムで描き分けます。魔王の旋律だけが長調で、伴奏の低音三連符から一時的に解放されます。半音上行の音型が悪魔的な力を象徴し、子の叫びは毎回半音ずつ高くなります。歌手にも伴奏者にも高い技巧が求められる難曲として知られています。 ## 演奏のポイント 冒頭の連打の緊迫感、魔王の猫なで声と父の低い声の対比に耳を向けたいです。三度目の子の叫び(フォルティッシモ)、そして三連符が止まって語られる最後の一節の静けさまで聴き届けたいです。 ## この音源について - 演奏: ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)/ジェラルド・ムーア(ピアノ) - アルバム: 未確認 - レーベル: Deutsche Grammophon(想定。このYouTube IDと下記DG録音との同一性は未確認) - 録音: 1966-1968(DGセッション。Erlkönigは1968年2月とIDAGIO記載) - 録音場所: UFA-Tonスタジオ(ベルリン) DGによるフィッシャー=ディースカウとムーアのシューベルト歌曲録音は、ベルリンのUFA-Tonスタジオで1966年12月から行われました。IDAGIOは『魔王』の収録を1968年2月、同スタジオと記しています。Discogsによれば『Goethe-Lieder』所収のムーア参加分(魔王を含む)は1970年にDG 2720 006として発売され、魔王の演奏時間は4分19秒です。プロデューサーはライナー・ブロックです。なお、このYouTube ID(Topic配信)が上記セッションの音源であることは、メタデータ上では確認できていません。 (音源の投稿元(Dietrich Fischer-Dieskau - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## トリビア - 作曲は数時間の出来事だったとシュパウンが伝えています(Wikipedia引用の伝聞)。 - ゲーテは当初、楽譜を受け取っても無言で送り返したとされます。 - リストはこの編曲を1840〜45年のドイツ演奏旅行で65回演奏しました(Wikipedia記載)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Erlk%C3%B6nig_(Schubert) - https://archive.org/details/erlkonig-dfd-gm-66-68 - https://app.idagio.com/recordings/20597320 - https://www.discogs.com/release/5708490-Schubert-Goethe-Dietrich-Fischer-Dieskau-J%C3%B6rg-Demus-Gerald-Moore-Goethe-Lieder - https://www.musicweb-international.com/classrev/2003/May03/Dieskau.htm --- # カッチーニのアヴェ・マリア - 英題: Ave Maria (Vavilov, long misattributed to Caccini) - 作曲者: ウラディーミル・ヴァヴィロフ(長くジュリオ・カッチーニ作と伝えられた)(20世紀(ソ連・1970年頃。バロック風に書かれた偽作)) - カテゴリ: 宗教曲・声楽 - 作曲年: 1970年頃(同年メロディア盤に『作者不詳』で収録) - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/caccini-ave-maria.html ソ連のリュート奏者ヴァヴィロフが1970年頃に書いたアリアで、のちにカッチーニ作として世界に広まった偽作です。ヴォカリーズ的な長い旋律で、今も多くの歌手が歌います。編曲を替えると、この長い歌のまた違った表情に出会えます。 ## 作曲の経緯 この曲は、ソ連のギタリスト兼リュート奏者で作曲も学んだウラディーミル・ヴァヴィロフが1970年ごろに書いたアリアです。ヴァヴィロフはレニングラードの音楽学校で学び、国立楽譜出版社の校訂者も務めた人物で、自作をルネサンスやバロックの作曲家の名義で世に出すことが多くありました。この「アヴェ・マリア」も1970年にメロディア・レーベルのリュート音楽LPへ「作者不詳」として収められました。彼は1973年に亡くなり、その後に曲がジュリオ・カッチーニ作として流通し始めます。名義が替わった経緯は確定しておらず、共演したオルガン奏者マルク・シャヒンが付け替えたとする説も、シャヒンの没年が1970年とされるため時期が合わないと指摘されています。1987〜88年にオレグ・ヤンチェンコ編曲、イリーナ・アルヒーポワ歌唱の録音が出て注目され、ソ連崩壊後の1990年代にイネッサ・ガランテらの録音を通じて世界へ広まりました。現在はヴァヴィロフ作とみなされるが、慣用的にカッチーニの名で呼ばれ続けています。 ## 出版・初演 1970年、メロディア盤『リュート音楽 16-17世紀』にヴァヴィロフ自身らの演奏で『作者不詳』名義で録音・発売されました。カッチーニ名義での流通は1970年代半ば以降です(1975年のボガチェワ盤で既にカッチーニ作と表記されています)。楽譜出版の初版は未確認です。 ## 題名・通称の由来 「カッチーニの」という通称は、ヴァヴィロフ没後に付いた誤った帰属に由来します。歌詞は典礼で広く用いられる聖母への祈り「アヴェ・マリア」の冒頭部分です。 ## 構成分析 - 概要: 独唱とそれを支える伴奏からなる短いアリアです。版や編曲ごとに調・伴奏が異なり、楽曲内部の詳細な構成は一次資料で確認できていません。 - 編曲の系譜: オルガン版(ガランテ)、管弦楽編曲(ニック・イングマン、スティーヴン・マーキュリオ等)、器楽独奏版など多数の版があります。 ## 音楽的特徴 和声が古い時代には存在しないもので、専門家が聴けば20世紀以降の音楽と判断できる、と日本の解説記事は述べます。また同種の曲なら3拍子が自然なのに4拍子で書かれている点も偽作とされる根拠として紹介されています。 ## 演奏のポイント 同じ旋律でも、オルガン伴奏の簡素な版、オーケストラを伴う大編成版、チェロなどの器楽版で表情が大きく変わります。複数の編曲を聴き比べると、息の長い旋律の魅力がよく分かります。 ## この音源について - 演奏: アンドレア・ボチェッリ(テノール)、チョン・ミョンフン指揮 サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団 - アルバム: Sacred Arias(Arie Sacre) - レーベル: Philips(Wikipediaの表記。Universal系のDecca/Philips) - 録音: 1999 - 録音場所: 未確認 1999年11月発売のアルバム『サクレッド・アリア』に収録されました。伴奏はチョン・ミョンフン指揮のサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団です。アルバムは500万枚超を売り、ソロ歌手のクラシック盤として史上最大のセールスとされます。2000年にはクラシカルBRIT賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーなどを受けました。1999年にはローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会で撮影した映像作品も出ているが、音盤の録音会場や日付は確認できていません。 (音源の投稿元(Andrea Bocelli - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ドニー・ダーコ(2001): 使用場面は未確認です(Wikipediaの使用作品一覧による)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Ave_Maria_(Vavilov) - 天国の階段(韓国ドラマ)(2003): 使用場面は未確認です(同上)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Ave_Maria_(Vavilov) ## トリビア - ヴァヴィロフは自作を古い作曲家の名義で出す常習者で、「黄金の都市」の旋律も彼の作とされます。 - アルヒーポワ盤は1987年とも1988年とも記され、資料により年が分かれます。 - 日本語版Wikipediaはガランテの国際デビュー盤の収録で曲が注目されたと記し、ボチェッリやチャーチも歌ったとしています。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Ave_Maria_(Vavilov) - https://en.wikipedia.org/wiki/Vladimir_Vavilov_(composer) - https://ja.wikipedia.org/wiki/ウラディーミル・ヴァヴィロフ - https://www.j-cast.com/trend/2019/07/19362946.html?p=all - https://en.wikipedia.org/wiki/Sacred_Arias_(Andrea_Bocelli_album) --- # ピエ・イェズ(フォーレ《レクイエム》作品48 第4曲) - 英題: Pie Jesu, from Requiem in D minor, Op. 48 - 作曲者: ガブリエル・フォーレ(ロマン派後期(フランス)) - カテゴリ: 宗教曲・声楽 - 作曲年: 1887〜88年(初稿)。現行の管弦楽版は1899〜1900年 - 作品番号: 作品48 - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/faure-pie-jesu.html フォーレ《レクイエム》の中心に置かれたソプラノ独唱の短い祈りです。変ロ長調の簡素な旋律が三度繰り返され、安息への願いを静かに深めていきます。 ## 作曲の経緯 フォーレのレクイエムは1887年から作曲が始まりました。両親の死と結びつけて語られがちだが、母の死の時点で既に着手していたとされ、本人は「特別な目的のためでなく、いわば楽しみのために書いた」旨を手紙に記しています。1888年1月16日、パリのマドレーヌ教会で建築家ジョゼフ・ルスファシェの葬儀の際に、5曲構成の初稿が作曲者の指揮で演奏されました。ピエ・イェズはこの初稿に既に含まれ、独唱は少年ソプラノのルイ・オーベールが務めました。日本語版Wikipediaは、残されたスケッチの最も早い段階からこの曲が現れ、全曲の核と見られると記します。マドレーヌ寺院は女声を認めず、曲は少年の声域を意識して書かれたが、演奏会ではフォーレ自身が女声ソプラノを好みました。その後バリトン独唱の「奉献唱」と「リベラ・メ」が加わって7曲となり、出版社アメルの提案で1900年に大編成の管弦楽版が作られました。 ## 出版・初演 初演は1888年1月16日、マドレーヌ教会です(初稿・5曲)。第2稿の初演は1893年1月21日、同教会です。現行の管弦楽版は1900年7月12日、パリ万博のトロカデロで演奏されました(指揮ポール・タファネル)。出版は1901年、アメル社です。なお日本語版Wikipediaは1900年5月のリール初演としています。 ## 題名・通称の由来 ラテン語の呼格「Pie Iesu」(慈悲深きイエスよ)に由来します。『怒りの日』続唱の最後の二行にあたる祈りの詩句で、レクイエムの多くの作曲家が独立楽章として扱ってきました。 ## 構成分析 - 第1の呼びかけ: 変ロ長調、6小節のモード的な旋律です。 - 第2の呼びかけ: 似た旋律がより高い音域に届きます。 - 第3の呼びかけ: 最初の形で始まり、より低い音域で二音を行き来しつつ、最後の「requiem」は穏やかに上行して終わります。 - 伴奏: オルガンと弦、ハープです。最終版ではフルートとクラリネットがこの楽章でのみ加わります。 ## 音楽的特徴 フォーレは伝統的な「怒りの日」続唱を全曲では置かず、この一節だけを残しました。恐怖より安らぎを前面に出す全曲の性格を、中央のこの楽章が象徴します。サン=サーンスは「モーツァルトの『アヴェ・ヴェルム・コルプス』が唯一であるように、これが唯一のピエ・イェズだ」と評したと伝わります。 ## 演奏のポイント 長い息と弱音の安定が求められ、少年には難しい面もあるため女声が歌う例が多いです。装飾を排した旋律が、二音の往復で収まっていく終結部(requiem sempiternam)の静けさを聴きたいです。 ## この音源について - 演奏: アラン・クレマン(ボーイ・ソプラノ)、ミシェル・コルボ指揮 ベルン交響楽団、フィリップ・コルボ(オルガン) - アルバム: Fauré: Requiem - レーベル: Erato/Warner Classics(配信の℗表記:1972 Warner Music UK Limited) - 録音: 1972年5月13日(同演奏の公式盤資料による) - 録音場所: ベルン、カジノ(Casino, Berne/同演奏の公式盤資料による) - YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=ia5Aic7aN2Q ミシェル・コルボ指揮、ベルン交響楽団によるフォーレの《レクイエム》から、第4曲「ピエ・イェズ」です。独唱はアラン・クレマン、オルガンはフィリップ・コルボです。同じ演奏者による録音について、ワーナー公式の再発資料は1972年5月13日にベルンのカジノで録音したと記載しています。これは配信の℗年から推測した日付ではありません。配信クレジットではクレマンを「Counter-Tenor Vocals」と表記していますが、ここではボーイ・ソプラノとするレーベル公式資料と、子供の声とする原盤の書誌情報に従っています。 (指定動画の配信クレジットを、同じ演奏者を記載したレーベル公式資料・原盤の書誌情報と照合しました。配信音声そのものや再発時のマスターとの同一性は未確認です。) 音源・配信情報の出典: - https://www.youtube.com/watch?v=ia5Aic7aN2Q - https://wmg.jp/corboz/discography/25509 - https://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/cb378753006 ## トリビア - 1888年の初演後、司祭から「こんな新機軸は要らない、マドレーヌの典礼曲は十分豊かだ」と言われたと伝わります。 - 全曲は1924年のフォーレ自身の葬儀で演奏されました。 - 最初の全曲録音は1931年です(フランスのグスタフ・ブレ指揮)。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Requiem_(Fauré) - https://en.wikipedia.org/wiki/Pie_Jesu - https://ja.wikipedia.org/wiki/レクイエム_(フォーレ) - https://www.deutschegrammophon.com/en/catalogue/products/faure-requiem-ravel-giulini-3020 - https://www.csmonitor.com/1988/1219/lcarlo.html - https://imslp.org/wiki/Requiem,_Op.48_(Fauré,_Gabriel) --- # 怒りの日(ディエス・イレ)(ヴェルディ《レクイエム》第2曲の冒頭) - 英題: Dies irae, from Messa da Requiem - 作曲者: ジュゼッペ・ヴェルディ(ロマン派(イタリア)) - カテゴリ: 宗教曲・声楽 - 作曲年: 1873〜74年 - 作品番号: なし - ページ: https://djnaoyaman.github.io/suburbia-classica/songs/verdi-dies-irae.html ヴェルディのレクイエムで最後の審判を描く合唱の爆発です。大太鼓と金管が炸裂する冒頭は終曲でも再現され、映画やテレビでも多用されます。 ## 作曲の経緯 ロッシーニが1868年に亡くなると、ヴェルディは複数のイタリア人作曲家による追悼ミサを提案し、自らは終曲「リベラ・メ」を書きました。この企画は1869年に頓挫し、楽譜は長く演奏されませんでした。1873年5月22日に敬愛した作家アレッサンドロ・マンゾーニが亡くなると、ヴェルディは今度は自分ひとりで追悼のレクイエムを書く決意を固めます。同年夏にパリで大半を作曲し、先のリベラ・メも改作して取り込みました。1874年5月22日、ミラノのサン・マルコ教会でマンゾーニの一周忌に初演され、作曲者が指揮しました。その3日後にはスカラ座でも同じ顔ぶれで演奏されています。「怒りの日」は第2曲の冒頭で、最後の審判を描く最も有名な部分です。オペラ的すぎて教会向きでないとの批判を初演当時から受けたが、現在は演奏会の定番となっています。 ## 出版・初演 初演:1874年5月22日、ミラノのサン・マルコ教会です(ヴェルディ指揮)。同年5月25日にスカラ座で再演されました。楽譜初版はリコルディ社です(1874年)。1875年のロンドン公演を前に「リーベル・スクリプトゥス」が改訂されました。 ## 題名・通称の由来 「Dies irae」はラテン語で「怒りの日」です。中世の続唱の冒頭句で、最後の審判の日を指します。曲名は典礼文の冒頭に由来し、ヴェルディはこの続唱を全体の中心に据えました。 ## 構成分析 - 冒頭: 衝撃的な和音の連打、跳躍する上行句、大太鼓の裏拍の強打、木管の駆け上がり、弦のトレモロ、トランペットの細かな動きなどが重なります(D.ケアンズの解説)。 - 再現: 「Quid sum miser」の前、「Lacrymosa」の前、そして終曲リベラ・メの後でも再現されます(日本語版Wikipedia)。 - 続く曲: 「Tuba mirum」では舞台上のトランペットに舞台裏の4本が加わり、審判のラッパを表します。 ## 音楽的特徴 オペラで培った劇的な対比と力強いリズムを宗教曲に持ち込みました。大太鼓は通常のほか、極弱音の不気味なロール用に大型の「ヴェルディ・バスドラム」を使う指揮者もいます。教会より劇場向きという批判と、ブラームスが楽譜を見て「天才の作品」と評したという逸話が対照的です。 ## 演奏のポイント 冒頭の和音と大太鼓の鋭い打撃が生む一瞬の緊張、シンコペーションを際立たせるタイミング、弱音で響く再現部との落差を聴きたいです。続く「Tuba mirum」の舞台裏トランペットの空間効果も見どころです。 ## この音源について - 演奏: ゲオルク・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団(独唱:サザーランド、ホーン、パヴァロッティ、タルヴェラ)と推定 - アルバム: Verdi: Requiem(Decca、1968年LP発売のショルティ盤と推定) - レーベル: Decca - 録音: 1967 - 録音場所: ウィーン、ゾフィエンザール 1967年10月、ウィーンのゾフィエンザールでデッカが収録しました。ショルティがウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場合唱団を指揮し、ソプラノはジョーン・サザーランド、メゾはマリリン・ホーン、テノールはルチアーノ・パヴァロッティ、バスはマルッティ・タルヴェラです。制作はジョン・カルショーとクリストファー・レイバーン、録音技師はゴードン・パリーです(Discogsのクレジット)。1968年にLP(SET 374-5)で発売されました。2008年の再発評は、シンコペーションを際立たせるタイミングの妙で〈怒りの日〉が威圧的な情景になったと評しています。 (音源の投稿元(Wiener Staatsopernchor - Topic)はoEmbedで確認済みです。) ## 映画・ドラマ - ジャンゴ 繋がれざる者(2012): 白人至上主義者の一団がシュルツ博士の馬車に迫る場面で使用されています(OperaWireの記述)。 https://operawire.com/?p=14827 - マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015): 夜の追跡で、盲目となった「弾薬畑」が乱射する場面で使用されています(Roger Ebert.comの記述)。 https://www.rogerebert.com/far-flung-correspondents/mad-max-day-of-wrath ## トリビア - ヴェルディは当時の教会が女性歌手を認めないことを承知で、女声の参加を望む旨をロッシーニ追悼計画の頃から書簡で述べています。 - 1943〜44年、テレージエンシュタット収容所でラファエル・シェヒターの指揮によりこの曲が約16回演奏されたとされます。 - 「ラクリモーサ」は『ドン・カルロ』パリ初演でカットされた部分の転用です。 ## 出典 - https://en.wikipedia.org/wiki/Requiem_(Verdi) - https://ja.wikipedia.org/wiki/レクイエム_(ヴェルディ) - https://www.discogs.com/release/11263870 - https://operatoday.com/2008/10/verdi_requiem_quattro_pezzi_sacri/ - https://www.classicfm.com/composers/verdi/dies-irae-requiem-lyrics-translation-which-films/ - https://imslp.org/wiki/Requiem_(Verdi,_Giuseppe)